23 追憶の村
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歌姫 ザクロ
-自室・昼-
ふぁーあ。よく寝た。
[ベッドの上でしばらくぼんやりとしていたが、大きく伸びをして、ざっとカーテンを開けて日差しに目を細めた]
いい天気……歌いたくなるなぁー。
歌っちゃおうかな。
歌姫 ザクロ
[楽しそうに歌うのは、表情と対照的に悲しい恋の歌。
張りのある声が、時に切なく悲しげに歌い上げる]
──。
[歌い終えると、まるで窓の外に観客が居るかのように、優雅に一礼をした。
ちょうどいいタイミングでおなかが鳴る。
おなかを押さえて苦笑すると、身支度を整えて食堂に向かった]
今日のご飯は何かなー♪
[楽しそうに*鼻歌を歌いながら*]
歌姫 ザクロ
─食堂─
まいにっちまいにっちぼくっらはてっぱんの〜♪
[およげたい○き君を歌いながら食堂にやってきた]
いい匂いー。ご飯美味しそうだね。
え？ アンちゃんとルリちゃんで作ったの？ 凄いね。
歌姫 ザクロ
あれ？ マチコ居ないの？
へー。ジロウさんと一緒に買い出しに行ったんだ。仲良しでいいね。
……え？ あの変……じゃなくて個性的なオブジェ壊れたの？ 危ないわね。片付けておいた方がいいかもー。
歌姫 ザクロ
確かにジロウさん……。
[言い掛けてしばし悩む。何か思いついたかのように手を打った]
あ。でも、目はつぶらで可愛らしいんじゃないかしら？
若旦那さんは若旦那さんなだけあって、まめなのね。
歌姫 ザクロ
[ゼンジの差し出した瓶を不思議そうな顔で見つめる]
不思議な瓶ね。ガラスじゃないの？
この近くで取れる鉱物……じゃあ、ジロウさんが作ったのかしらね。
……この中に手紙を入れれば、届くのかな。
[ぼんやりと呟いた後、一瞬顔を暗くしたルリに気が付き、明るい声で続けた]
届くわね。きっと。
歌姫 ザクロ
[ゼンジに釣られて笑う]
ジロウさんが、あの大きな手で作ったのかと思うとおかしいわね……あ。マチコに聞かれたら殴られちゃうわ。
内緒ね。
[神妙な顔で唇に人差し指を当てた]
月の光──かぁ。
【独】 歌姫 ザクロ
──ああ。
あの人に手紙が届くと嬉しいわ。
でも、手紙じゃ歌は届かないの。
せめて、私の歌声を知っている人が、あの人にあって伝えてくれないかしら。
私は歌うわ、と。
【独】 歌姫 ザクロ
この歌を聴いた人はあの人に伝えて欲しいの。
それだけ。
──この歌にかかわる人が死ぬなんて、ただのうわさよ。
[にっこりと人形めいた感情のない笑みを浮かべた]
歌姫 ザクロ
２人とも帰ってくるの遅いわよね。
まさか、お客をほうっておいてデートしているとか？
新婚さんだからってそんなことないわよね。
でも、そろそろ帰ってこないと、夕ご飯の支度に間に合わないんじゃないかしら？
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