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[尋常ならざる剣速に幾度も断ち割られそうになった。
踏込む折は剣の遠心力が乗切らない柄元、その直下へ
軸足を置くよう薄氷上の立回りをしていた軽業師は、
場が預けられるらしきへ、ひそり黒い呼気を漏らす。]
[声に気を逸らすと、先ごろまで塵に突っ伏した儘
絶えゆく様相だった旧友がもう身を起こしていて。
…カリ、と軽業師は苦く馬銜を噛む。
あてどなき復讐の執行人と、定まらず彷徨う旧友と。
どちらの視線をも此方へ向けさせることは躊躇われ、
双方に警告を示さないまま――屋根上へ身を翻した*。]
[軽業師の道化た衣装はところどころ裂けていた。
常はふたつ揺れる帽子の尾も、左は先端がなく。
垣間見える傷口の黒い滲みは、流れ出すほどもない――
が、馬銜の片側はグルメットが壊れ鎖が垂れている。
剣の柄尻で横面を強かに殴られたのが最大の痛手。]
…うー
[盛大に切れた、口の中。
いってえ、と言わんばかり漏らす声は面白がる態。
コールタールと血反吐の混ざった唾を*吐き捨てる*]
― 挿話・秘された研究所の… ―
[――其処は、床も壁も緑一色に彩られた部屋。
安心させようとする意図の見え透いた、配色。]
…痛い?
『いたくない』
…痛い?
『いたくない』
…痛い?
『…いたくないよ』
[部屋の中央には、
二つの人影が向き合って椅子に腰かけている。]
[短い問を向け続けるのは、道化たなりの青年。
回らぬ舌で返答するのは、白い貫頭衣の青年。]
…ん、なに
[ふと、道化の青年が扉の方へ視線を向ける。
――扉は細く開いている。
其処から室内を覗く陰、艶やかな銀の毛並み。]
ベルンハード
ひとり?
… そんな はずないか
[コツリ、床を踏む足音。遅れ来た態の人影。
癖と思しき手つきで、先に居た銀毛を撫ぜる。]
もう終わるよ
[視線を戻しながらの声に
頷いたのは…誰だったか。]
[白い貫頭衣の青年が、狭い卓に載せている腕は]
[…捲った生皮を大小の鈎針で捲った切創、
尺骨に沿って切り開かれた筋繊維の狭間に、
剥き出しの神経を、毒虫にかじらせるさまを晒す]
[過日の記憶。]
― 挿話・秘された研究所の… 終了 ―
―祭壇近い双子ビル・中階層の梁上―
[マティウスの感知から逃れ得ぬだろう熱源は、
今は祭壇見下ろせる双子ビルの中階層に在る。
かつては看板が設えられていただろう
梁上へと、傷癒えぬ軽業師が屈み居た。
ひとり口を開けば、鎖の片方千切れた銜は垂れ]
…さすが、
商売人は どちらさまも物見高いらしいか
[騒ぎ起こる地上でなく、周辺のビルを見上げ
屋上の縁へ見え隠れする見物人等を眺める態。]
[立膝へ片頬杖をついて見渡すと、
見知る姿も幾つか見受けられる。
先刻の立ち回りで気怠い身の休養も兼ね、
そちらへは向かわずに肩を竦め静観する*]
/*
…表ログ最多弁がいる赤が
こんなに静かだとは誰も思わないような。
相方さん、サプライズ狙いで黙ってるのだといいな。
先落ち狙いで派手に動いてるから、
相方さんがご多忙なかただと
丸投げ的にLWお任せするのが申し訳ないのです
何を待ってるんだと思う?
このひとときはさ。
[救いに期待するのは、祭壇に群がる者ばかり。
高みを選って物見する視線の持ち主たちは…]
… 儀式と言えば まあ
儀式とも言うんだろうね
[廃れ乾いた街で期待されるものに想い馳せ、
膝へ片頬杖つく軽業師は*独り言めかした*]
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