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[トゥーリッキの姿を視界に認めた。目前で見上げられると、男は見下ろす形になり、視線を合わせ]
……どうか、したのか。
[相手がそのまま黙していたなら、促すようにそう言って。
何かを言われれば、じっと聞くだろう*]
―村の外れ―
[極光舞う明けることのない夜空。
止んだ遠吠え――本来はそう在るべき静寂に、戸惑いを感じていたことに驚いた。
俯き、少女の魂の平安を――せめて、祈り。
そのまま、立ち並ぶ家の外れに佇む自宅へと帰還した]
[やがて、ドロテアがその役割を果たした事が知れれば――男は容疑者達に、あるいは村の者達に、それを伝えに行くのかもしれない。多分に察せられただろう不幸を、再確認していくかのように。声色や素振りに感情は乗せず。ただ普段と変わらない憂いを孕んだ瞳をもって、使者の男は在る*だろう*]
――きっと、憂鬱、ね。
[相手の言葉を繰り返すにとどめ、"だが"で途切れた先があるのなら聞かずに立ち去ることはなく、先なくも幾ばくかの沈黙が流れようか。]
憂鬱だろうと、愉しかろうと、当事者がやることは一緒。
お前は"傍観者"になるつもりか?
感情なんてその実感がなきゃ理解も出来ないだろ。
無理にわかろうとする必要はない。
どのみち"憂鬱"なんて、消極的な感情だ。
[吐き捨てるように告げる言葉は自分へ宛てたようでもあり、供儀の娘を想えば苦笑しか浮かばない。
静寂を映す赤い空を見上げ、白い息を*吐いた*]
[己に連なる狼たちは、ただ黙してその儀式を見つめていた。少女の身体に集る狼を。吹きあがる鮮血を。
滅びが始まる。ただ、それだけを感じながら。
――その鮮血の香りが鼻をついた時、静謐であったはずの視線がかすかに揺らいだ]
[己に連なる狼たちは、ただ黙してその儀式を見つめている。
蛇使いの女が、少女の耳を噛み切り、少女の躯を食い荒らす様を、黙して。爛々と輝きだす瞳、ひくひくと鳴り出す鼻。しかしまだ、狼たちは黙している。口の端から見紛うことのあり得ない涎を垂らしながら、何も動かない]
…随分と、味わいながら、喰う……
見せつけずとも、……分かっていると、言うに……
[絞り出す声は、呻きのそれか、それとも――
群れを率いるモノのひとつは、自覚する。餌に乏しい冬の狼は、目の前で流される血の香に決して抗えはしないのだと]
[遠吠えが止んでからも、
しばしその場に佇んでいた]
――これからが『本番』ってことなんだろうね。
[決意する。
捧げられた命の結末を、この目で見つめようと。
それは、これから自分たちが行う事の、
犠牲となるものの行方の確認作業であった]
―自宅前―
[狼の遠吠えが、途絶えた。
それが意味することを察して、瞳を閉じる。]
――しかたないのぅ……
[ぽつり、呟き。
しばしの間外に立ち尽くす。
冬の女王の手が伸びる前に、一度は小屋に戻るものの。
朝を迎える時間にはまた小屋の外へと出てくるだろう。]
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