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借ります。
[入口にあったレインコートを羽織り、囲炉裏の向こうの窓に向かう。
開いて乗り越えようとした所で、ホズミの声が聞こえて]
混浴。話に聞いたことがある文化です。
話していた人は、とても楽しそうでした。
でも私はこれから大自然と闘ってきます。またの機会に。
[スチャッと手を掲げ、窓から飛び立った]
[奥の間を覗くが管理人が戻った形跡はなかった。居間に戻ると誰も居らず]
おや、皆さんお戻りになられたのでしょうか。
[雪が音を吸うのだろう、しん、と静まり返った居間の様子にふと違和感を覚えてぐるり眺める。と、本棚の中に慌てて戻されたのだろう、一冊の本が変に飛び出ているのを見つけた。手に取ると]
『 ○○村の記録 伝統と伝承』
[ぱらぱらと項を捲るうちに『人狼伝説』の項に差し掛かり指を止めた]
人狼? ……ジンロウ…人狼?
[思わず表紙に筆者の名を探す。...も聞き覚えのある名前がそこにあった]
どういうことだ?
[本に戻って読み進めるうちに困惑はますます深くなる。最後に交わした言葉、見送る背中、血の匂い、片方だけ見つかった靴、記憶の断片が浮かんでは消えた]
戸が開けば獲って囲おうか、窓が開けば切って吸おうか。
絡め取る十重二十重の根の檻は、棺桶かそれとも揺り篭か…
[祖母から寝物語に伝えられた話は…]
『根牢』(ジンロウ)ではないのか…?
人狼? ……ジンロウ…人狼?
[呟く声に困惑の色が混じる。背表紙を見返し、また本に戻ると、穴が空くのではないかと思われるほど凝視しながら読み進めた]
[背後から足音、次いでホズミの声が聞こえると本を閉じて振り返ると]
おや、お風呂でしたか。
他のみなさんもご一緒ですか?
ああ、この村の郷土史ですよ。
フユキさんあたりが読んだのでしょうね。
[後ろ手に隠していた本を出すと表紙をホズミに示して]
興味がおありですか?
[目が醒める。
ちりりん ちりりん 鈴の音が
ちりりん ちりりん わたしを呼ぶ。]
人と向かい合うときのわたしって…嫌い。
だって母さまみたいな醜い口調になるんだもの。
[程無くしてわたしは目を覚ます。乗っ取ったのは少女の身体。制服と呼ばれる着物は風を通し、少し寒い。]
あ。そう言えば男の子が"わたし"を待っていてくれているんだっけ。急がないと心配されちゃって…近付かれたらわたし…きっと渇きを癒さずにはいられない。
[そう呟いて。わたしはすぐさま否定するように首を振る。]
だめ…。彼は今は【まだ】だめ…。
もう少し見定めてからじゃないと…だめ――
[わたしは自分に言い聞かせるように呟いて。近くにあった防寒着を来て外に向かう。
立ち去り際、視線が合った"彼"を一瞬だけ見つめて――]
… … … …――
[口許から零れたのは笑み?それとも新たな*狩の合図*?]
ああ、それでしたら
[ほらここですよ、と言いながら人狼伝説の項を開いて見せた。犬とも狼ともつかぬモノがぐにゃりと渦巻く稚拙な挿絵が描かれている]
この村の伝承のひとつのようですね。
ここは風が強いせいか良く伝えられている鎌鼬に「風の音」という要素が付け加えられて狼と結びついたのでしょう。
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