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[ともあれ、少年の亡骸は戸板に乗せられ、白布を掛けられて運び出されていく。
残るのは、色を黒へと違えた床の染み。
人が死んだ、という、あと]
……掃除くらいは、するか。
[小さな声で呟くと、戻ってきていた宿の主人に掃除用具の場所を問い。
水を張った桶とモップを用意して、緩慢な動きで床の染みを落とし始めた]
……違う。僕は人狼じゃない。
[少年の言葉は誰にも届かない。]
人狼は、誰だ。
お前か。それともお前か。
[誰もが自分を無視していることに、苛立ちながら。少年はぎりぎりと歯を食いしばる。]
ンなら、いーけどよ。
そーさなァ、やるなァお前ェ。
[かすり傷――自身の目でも確かめて、
ペッカはばつが悪そうに口を尖らせる。
あやまることじゃない、などと言われてしまうと
扉をノックしたときのようにゴンゴンと床を蹴る。]
…
やたら後ろめてェんだよ、いいから聴いとけ。
[視線を伏せ気味にすると、幼馴染が水を飲む
手元が目に入る。ペッカは少し沈黙して見入る。]
… ビー。
ドロテアの仇――討てたと思うか?
[ベルンハードの手元と、コップの水面を
見つめながら――やがて零す、素朴な問い*]
火事場のばか力って奴じゃないかなー
死にたくないし。
[死にたくない、と繰り返し。
床をける幼馴染>>19に苦笑して肯定いた。]
うん、そうだね、ありがと。
[ペッカに小さく笑みを向けて、コップをテーブルへと戻す。
手についた血は落とされたけれど、浅い傷は残っている。
それを気にすることなく、ペッカへと視線を向けた。]
どうしてお前が生きている。
お前が邪魔しなければ殺せたのに。
[帽子の女性に殺意を向けたのは、一番御しやすそうだったから。一番罪を着せやすそうな青年は、力で勝つ自信がなかったからターゲットにしなかったのに。]
お前が人狼なんだ。その服の血は何だ。
……っ! みんな見てるだろう! なんで捕まえないんだ! 殺さないんだ!!
[自分が死んだことに気づかないまま。
……自分の服も血まみれであることに気づかないまま。少年は叫び続ける。]
[幼馴染の問い>>20に僅かに息を呑む。
それから、小さく、息をついて――]
どう、だろう……
仇が討てた、といいたいけど……ラウリが人狼だったとして、どうやってそれを証明したらいいのか、わからないよ。
[ラウリが人狼だと断定してしまえば、すくなくとも町の人の感情は収まるかもしれない。
それでももし、また別の誰かが襲われたら――そのときはラウリが人狼ではなかったという結論になるかもしれない。
どちらにせよ――確証などないのだった。]
[ふ、と気を取り直すように息をつき。
昨日聞いたときから気になっていたことを、聞く。]
ペッカ……人狼が誰か、見極められるのかい?
[それで、と。
今はしまわれている、昨日見せてもらった古びた望遠鏡へと視線を向けて問いかけた。]
[ずっと、ウルスラの動きに合わせて揺れる耳飾りを見つめていた。]
占いって、信じますか?
[ようやく口を開いたのは、桶の水が手品師の血に淀んだ頃。
どこか、遠くを見るような顔になった。]
ペッカは何言ってるんだろう。
[ぱしゃり。
音を立てて、モップの先を水に漬け。
声をかけてきたアイノの方をゆっくりと振り返る]
んー……占い?
半々、かしらねぇ……運命とか、そういうのって、あんまり信じるガラじゃないし。
それが、どうかした?
[逆に問いを返しつつ。
遠くを見るような様子と、紡がれた名に、ひとつ、ふたつと瞬いた]
……ペッカ?
ああ……そういや、昨日、なんか言ってたっけね。
/*
おっと、こう来るか。
んん……どうしようかねぇ。
どう流れても、面白いんだけど、この展開って。
このシチュだと、狼勝ちも面白そうではあるし。
ま、アレよ。
アタシは、自分に都合のいい占いは信じる方だから。
[軽口のようにさらりと言って。
焦点のあった目を見返しつつ、ゆるく首を傾ぐ]
……あの手品師さんは、人狼じゃない……?
[告げられた言葉。眉が寄せられる]
なんで、アンタがそんなことを……それに、知ってたんなら、どうして言わなかったのさ?
[人と知った上で、止めなかったのはなぜか。
問いかける口調は、それを咎めるというよりは、純粋な疑問を帯びたもの]
[瓶の割れる音は、がらんとした宿の一階に、やけに大きく響く気がした]
……そりゃあ、確かに、ねぇ……。
昨日は、話して聞いてもらえるような状態じゃなかったし。
言ったら言ったで、今度はアンタに矛先向いたかも知れないしね。
[ガラスの破片が散らばる音を聞きながら、ひとつ、息を吐いて]
……で、今んなってそれを話したのは、どういう心境で、なんだい?
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