[ふと、覚えのない景色が眼前に浮かぶ。
其処にはネギヤが居るのだが、浮かぶと、消えて、はっきりとは思い出せない。
最近よく起こる事なのだが、あれは、一体何なのだろうか。
あの景色の元へ行けば、ネギヤはまた静かに佇んでいるのだろうか。
何処かもわからない、あの景色の元へ。]
あ、ああすまない、胡瓜じゃなくトマトだね。
[考え事をしながらは、よくなかったか。]
ほお、こりゃあまた。
[トマトにキュウリが水を張った桶の中で涼んでいる。]
キュウリを一本もらおうかな。
[白衣のポケットから小銭をつかみ出す。
どちらかというと好きなのはトマトなのだが、白衣に汁を垂らしてしまうと、物騒な見てくれになってしまいそうでやめておく。]
今年は元気そうだな、ゼンジ。
──いや、去年も大丈夫だったんだが。
[昨年の祭りの折り、何故かこの若者が熱でもあるように見えてしまって、豚汁を食べ終えてからわざわざ体温計を脇に挟ませた事を思い出した。]
こんにちは、ドウゼンさん。
こうも暑いとこの中に飛び込みたくなりますよ。
[溶けかかった氷と野菜の浮かぶ桶に目を向けてからりと笑う。
小銭を受け取れば胡瓜に刺さる割り箸を桶の端に立て掛けて、どうぞと示した。
と、ふと思い出して]
でも、確か先生はトマトの方がお好きでは?
こっちの…ミニトマトの串なら汁が飛んだりもしませんし、如何ですか?おまけしますよ。
>>18
化け物だって強い弱いがあるってばよ!
そんでもってバトルさせるんだ!
[そんなごっこ遊びが、あったらいいなあ、的な。
お面の屋台が賑わった後にでも早速遊んでみよう。
去年の祭りでも持ってたあのヒーローごっこの狐のお面もきっと活躍してくれるだろう
もしかしたら近未来あたりに日本全国でそんなコンセプトの遊具が大ブームを引き起こすかも知れぬことは、今この時代では知る由も無いだろう、きっとそれが訪れる年代にはこの悪戯っ子も大人に成長している頃]
へへっ、オイラだってもう低学年じゃなくて中学年になったんだってばよ、暗いときにそんな場所いかねーもん!
そりゃいいな
呼ばれたくても行けない奴の代わりに行くのも悪くはない
ああ、でもポチを置いてはいけないな
[犬が「ワン」と吠える
青年はトントンと階段をあがる]
――――さまのいうとおりっと
[ニイともう一つ]
なんか腹減っちまったよ、焼きそばはやたら高いから豚汁で我慢してもいっかな。
なー、なー、豚汁オイラにもおくれよー
[豚汁を配るまわりでちょろちょろ動き回る]
いやいや、あんまりここでたくさん食べると──
おやエビコさん。訪問販売ってやつかね。
後でいただきにいくよ。
─まあ、そういう事だ。ありがとうよ。
[ゼンジに苦笑いを向けた。]
先生、毎度ありがとうございます。
どうぞ患者様連れて一緒に来てください。
って、かかる、かかる!
[デンゴの動きに、豚汁掲げて硬直]
あげるけど、その分宣伝してきてよ。
[神社にたどり着くも、人混みに紛れてうまく歩けない。
気がつけば祭りの賑わいから外れた場所にいた。
が、そこには犬を連れた青年と浴衣の女性の姿]
呼ばれる?とうげんきょう?
[意味深な言葉と聞きなれない言葉に首をかしげる]
わははは、商売熱心だなあ。
だがなあ、患者を連れてもなにも。
[だいたいここの村人で、診療所に来た事のない者はいなかったりするのだ。]
そこのデンゴが丁稚どんになってくれるようだし、大丈夫、祭が終わるまでには鍋が空っぽになってるさ。
相変わらず気が利きますね。
[医師とのトマトをめぐる会話に感心しながら、塩をかけたトマトを頬張った。
ワンと鳴く声が聞こえて、見るとはなしに視線を泳がせる。
青年や浴衣の少女、転校生とは距離があるので、何を話しているのかわかりはしない]
女の子が浴衣を着ると、どうして大人っぽく見えるのかしら。
[ヨーヨーも、提灯も、浴衣も、まばゆいばかりのあでやかな色が神社中に広がる。
空を見上げてから、デンゴへ手を伸べた*]
豚汁よそってあげるから、おいで?
[まだ小さかった頃に見た映画。主人公が『赤城の山も今宵限りか』と見得を切っていた記憶がある。]
あのヒナさんという弁士さん、時代劇を語るのはお好きだろうかなあ。
[ふと、そんな事を思う**。]