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ランダム希望でエスパー。
……誰、占えばいいんだろう。
即コミットだよね。
ランダムの方がいいのかな。
ちなみに、初期設定はクルミ。
まあ、折角だから、セイジにしようっと。
[その日、結城 奈央(ゆうき なお)は木陰に腰を下ろして、編み棒を繰っていました。指に糸をかけ、掬って、通して、外して、引いて、締めて、一目ずつ、一段ずつ、ゆっくりと、着実に、空色は長くなってゆきます。
部活に励む生徒達の声や、バットが球を打つ硬い音、遠くからは、プールサイドに響く笛も聞こえてきます。木々の合間から注ぐ陽射しは夏真っ盛りだと言うのに、それは、まるで相応しくない光景でした。
そんな喧騒にも構わず、様々な音色を耳にしては、ナオはひとりで、楽しそうに笑うのでした。]
ん。
今日もいい天気。
[走り込みをしている陸上部の男子が通り掛かる一瞬、呆れたような眼差しをこちらに向けるのに、ひらひらと手を振ります。
ナオという少女は、変わり者として有名でした。]
[足下に転がるボールに、ナオは視線を向けます。編み物の手を止めて傍らの袋へと仕舞うと、手に取って、近づいて来る少女に向けて軽く放り投げました。]
気にしない。
こんなところで、こんな事してる僕も悪い。
[何処となく覇気のない彼女へと、笑みを返します。]
[立ち上がってスカートを払うと、緑がぱらぱらと舞い落ちました。緩く首を傾け、それより淡い色の髪を揺らします。]
そうだね、そうかな。
気が早いって、皆からは言われるけれど。
それに、編み物なんてしている場合じゃないだろうって。
[拾い上げた紙袋を一度見てから視線を戻して、まるで言う様子は、まるで他人事。
本来ならばナオは、勉学に励まなければならない時期なのに、当人は至ってお気楽に過ごしているのでした。]
君は部活? いいね、青春。
そう、青春。
青い春って言うね。夏なのに。
[ナオの指先は、セーラー服のリボンを弄っていました。]
ん。
確かに君は勉強より、運動が似合っていそう。
ああ、人は見かけによらないかもしれないね。
失礼な事、言っちゃった。
[言いながらも、顔に反省の色はなくて、むしろ、楽しそうでした。
それから、少女の零しかけた言葉に、ナオは緩やかに瞬きました。まじまじと見つめてから、薄く弧を描く口元へと指を移します。]
……野球部のマネージャーかと思ってた。
ソフト部の子なんだ?
部活には入れないけれど、面白そうだね、そういうのも。
……何も言ってないよ?
でも、やり込めるものがあるのは好い事じゃないかな。
[浮かべる笑みは少しだけ意地悪なものでした。
明るい色の髪の上、爽やかな色の空の下、宙を舞う球を、ナオは目で追います。ボールやクラブに染みついた運動場の土の匂いが、すぐ傍に感じられる気がして、眼鏡の奥の目を細めました。]
ふぅん。
そっか。
大変だね。
[左手に袋を抱え、右手を振り返して少女の後ろ姿を見送ります。]
いってらっしゃい。
また、いつかね。
[そう言えば名前を聞くのも忘れていたと思い出しましたけれど、ナオにとってそれは、あまり重要な事ではありませんでした。
天へ向けて片手を伸ばして、思い切り伸びをします。運動した訳でもないのに、汗が肌を伝い落ちてゆきました。服が張りつく感覚に、眉を顰めます。]
……んー。
図書館にでも、行こうかな。
[独り言ちて、くるりと踵を返すと校舎へと足を向けます。
古びた建物は、元は白かった壁は薄汚れてしまって、よくよく目を凝らすと所々に皹まで走っていていました。夏休み中に業者の人が着て補修をするのだと教師が言っていた事を思い出します。今のままでは、夜には何が出て来ても可笑しくなさそうでしたから――学校には付き物の“七不思議”はここでもやはりありましたし――丁度いい機会なのでしょう。]
出たら出たで、面白そうなんだけれどな。
残念。
[昇降口から中へ、明るい外から薄暗い室内へと、*入ってゆきます。*]
おや。
今、帰り?
バイトかな。
[昇降口に向かおうとしていた男子生徒に、ナオは擦れ違い様に片手を上げて挨拶を投げます。顔にはいつもの笑みが浮かんでいました。]
僕は図書館。
少しは涼しいといいんだけど。
まあ、気をつけて。暑いから、ね。
[トン、と爪先を床で蹴り、脱げかけの上履きを直して*一歩踏み出しました。*]