98 収穫祭の村
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声を失った男 クレスト
[ぼんやりとした意識に、色が、匂いが、音が戻ってくる]
………っ。
[そして唐突に目に入る、ヴァルテリにナイフを向けるウルスラの姿]
声を失った男 クレスト
[死ぬ事は、怖くない]
[本来なら、数年前に死んでいたのだから]
………！
[ウルスラを止めようと、気づいた時には、彼女に飛び掛っていた]
声を失った男 クレスト
[ナイフがウルスラの手から落ちるのを見て（>>104）、ふっと緊張が抜ける]
[――同時に、激痛が自身の身体に走る。揉みあった際に（>>96）刺していたらしく、わき腹にじわりと、生暖かい感触]
[……怪我の程度は分からないが、大したものではないだろう。マティアスの血にまみれているから、おそらく、他の人も気づくまい]
[何より、ウルスラを動揺させたくはなかった]
声を失った男 クレスト
[レイヨの口調で、思い出す。マティアスの部屋で、打ちひしがれていた自分に語りかけた声――]
[その主が、誰であったかを]
声を失った男 クレスト
[考えるまでも無い。どちらが本物なのか、など]
[だけど、声の無い自分に、伝える術は？]
………。
[……ああ、そうか。だから、自分を]
[そして告げられる隠し事（>>113）に、ウルスラを拘束する手が緩む]
声を失った男 クレスト
[ウルスラに問われ（>>117）]
………。
[小さく首を振り、大丈夫、と目で答える。しかし、無意識に患部に伸びた手が、レイヨの言葉が事実である事を告げていた]
声を失った男 クレスト
[押さえた傷口に、ウルスラの手が重なる]
[大丈夫。大丈夫。死ぬような傷じゃない]
[痛みこそあるものの、それは事実であったし、安心させるように、空いている手でウルスラの背を優しくあやす様に叩いた]
声を失った男 クレスト
[ニルスと視線が重なる（>>127）。何故、自分を見たのか……？]
[意味の無い目配せをするような人ではない]
………。
[――レイヨ自分の間に、何かしらのやり取りがあったと、察したのだろうか]
声を失った男 クレスト
[誰も疑えないと頑なだった自分が、あからさまにレイヨと敵対しているのだから、何かあったと気づいても不思議ではない]
[彼はウルスラから離れ、テーブルに向かった。そして、メモとペンを手に取る]
声を失った男 クレスト
『マティの へやで』
[そう、前置きをして、ペンを走らせる]
『マティを ころしたのは おれだと』
『うそをついたら どうかと』
『レイヨに そそのかされた』
[そのメモを、ニルスに向けて]
――――。
[やせ我慢のせいで強くなった怪我の痛みに、うずくまる]**
声を失った男 クレスト
[マティアスの死を汚したレイヨの事は、たとえ人であっても、たとえ正しい力の主であったとしても]
[許す事はできなかった]
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