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[古いカメラを首から下げて、フラフラしている]
あ。
[神社の木々がざわめいていることに気付いて、立ちすくんだ。
左手は無意識に耳たぶへ触れた]
……あ゛?
[誰かに、呼ばれたような気がした。
ぱらぱらと、雨のように、硬さを持つ何かが降るような、軽い音を聞いた。
一瞬、視界が暗転して]
……あれ。
[再び見えた景色は、何故だか真夜中のように暗く見えた。輝く太陽が白い月のように感じられた]
夜? まさか。
今まで明るかったはずだ。
……と。
[床に落ちている白衣に気付き、どうしてかと思いながら、それに手を伸ばす。
しかし指が布を掴む事はなく、何かに触ったという感覚すら、起きなかった]
忘れた?落とした?
[眉間に皺を寄せていたが記憶は曖昧なので、歩き出した]
萩原さん?
[どこからか聞こえた寂しげな声は、少女のもののようだった。
どこへともなく名を呼ぶ]
あれ……。
どうした? 何だ?
何か……
[戸惑ったように呟く様は、白衣がないのも相俟って、外見そのままの弱齢であるかのようだった。周囲を見て]
……何だ。
……「神隠し」?
[ぽつりと、単語を零す]
そんな。
[手にしていた鞄を開けると、中には金平糖が詰まっていて、すぐに溶けるように消えてしまった。空になった鞄も、後を追うように消え]
……、ああ。
[...には夜空のように見える空を、仰ぐ。そこにゾウサクの姿があったなら、困ったように笑みかけて]
……
[診療所の方へ、進んでいった]
[腕をいきなり掴まれて、恐怖に足が竦む。
驚きに目を見開いて振り返ると、そこには見慣れた村人の姿。]
写真屋、さん……?
写真屋さんも、来ちゃったの……?
[掴まれた腕から伝わってくる温もりを、喜べばよいのか悲しめば良いのか分からずに目を瞬く。]
[診療所に着くと、どうやって中に入ろうかと悩んだ。扉に手を伸ばしてみる。す、と、指が入り込んでいき]
……幽霊のようだな。
[独りごち、すり抜けて中へと入った。診療所の中を、少しうろつく。看護婦の姿を見つけると]
やはり、君にも、見えないかね?
[届かない呼びかけをして、複雑そうな笑いを作り]
本当に神隠しなら、危ういかとは思ったが。
ああ。
困ったものだ。
[診療所を後にして、どこかへと。
たゆたうように、*歩き始めた*]
たぶん、まだ死んでないと思う。
[見知った大人が笑うのに、少し固かった頬が緩む。]
神隠しから、帰ってきた人はいるから。
ここを出ることが出来れば、きっと。
[ぽんと頭を撫でられると、嬉しそうに笑い返した。]
写真屋さんは、ここで誰か……ネギヤさんとか、他の人に会いました?
みんな心配してるから、おばあちゃんになるまでは嫌だな。
[笑う写真屋に同じように笑って返す。
その声には、相手ほどの力はなかったかもしれない。]
永嶋さん……引き戻したかったんだけど、駄目だったか。
[自分が捕まえた筈の手首を思い出し、手のひらを見た。
続く見知らぬ名前と、その詳細を聞いているうちに、何かを思い出すように、目が細くなる。]
黒髪の……。
[言いかけた言葉は、また増えたかもと言う光野の言葉に押し止められた。]
写真屋……って呼び方失礼ですね。
えっと、光野さん?
誰か他にもここにいるのか、探しに行きません?
あと、バクさんにも会ってみたいし。
誰か見つかったり、何かあったりして…あたしを呼びたくなったら……えっと、これで。
[言いながら、近くの雑貨屋を覗きこみロケット花火を取り出した。]
何もなくても日が落ちる頃になったら集会場に集合で。
[言って、光野が同意してもしなくても、辺りを探しに駆け出していく。
こちら側に来た村人を見つけたなら自分が知っている限りのことを話そうと。]
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