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One little, two little, three little,
four little, five little Injun boys,
Six little, seven little, eight little,
nine little, ten little Injun boys.
――、
[そこまで歌ったところで、口を閉じる。ざわり、と。胸が騒いだような気がして]
カナメ……
[頼りない呟きに返されるのは、言葉でなく、笑い声。くすくすという、初めて聞いたカナメの笑い]
何か、あったのかね。
何か……また、誰かが消えたのかね?
「事実は、見ればわかります。
……そう不安がる事はありませんよ」
[その声に導かれるよう、足は墓碑群の方へと向かう]
[墓碑群に辿り着くと、まず微笑んで立つペケレが見えた。息を吐きかけて、ぎくりと肩を揺らす。供えられている花が、増えていた。
白に、赤に、薄紅。何本も]
……嗚呼、
[溜息にも似た呟き。
ルリを一瞥してから、再びペケレを見]
どうしたのだね、これは。
また皆唐突に消えてしまったのかね……?
ごきげんよう。
[ライデンに続いて、あらわれたルリにも笑みを向ける]
[獏の墓碑の前に立つ]
返し損ねちゃったわね。ありがとう。獏。
[神妙な面もちで白い上着を手向ける]
[白い上着には、いくつかの赤い染み]
テンマは夢の中にいた。
レンはミナツの絵に捕まった。
ミナツの夢にバクが捕まった。
ユウキは手向けられた。
[静かに一本調子に続ける]
プレーチェは、ここに。
[右手をそっと心臓の上に置く]
アンはここに。
[左手をお腹の上に置く]
[白い上着に付いていたのは、赤い染み。――まるで、血のような]
夢……絵、……手向けられて……
ペケレの中に?
……待って、くれたまえ。
わからない。何も……
[語るペケレに、右手で顔の半分を覆うように押さえ。何かを説明しようとするカナメの声を聞くまいとするよう、一度、強く目を瞑り]
……ペケレ。
君は……何、なのだね?
[一言だけ発した問いかけは掠れた]
ペケレ…と、ライデン…
[低く呟いて感覚を研ぎ澄ませれる。
やや遠くかほど近くか、彷徨う影たちの気配も感知して]
[みつめる先は、獏の上着の、赤を]
カナメに聞きました。
手向けられるのは…ひとり、のはずです。
[ユウキの墓標を一瞥してから、
ペケレの動作を見、ことばを黙して聞く]
ペケレ…わかりま、せん…わかりません…
[俯いて抑揚のない声がくりかえす]
ライデンは覚えてないのね。写真を撮ったときに、会ったのに。寂しいわ。
[笑みはだんだん引いていく]
カナメは教えてくれなかったのかしら?
ここには、ひとをくらうものが眠っているって。
私は──博士たちの言葉を借りるなら『恐ろしい失敗作』 。ひとをくらって生きるもの。
私は……
[ペケレの言葉に下ろした手を握り締め]
ひとを、くらうもの。
[抑揚の薄い復唱は、暗に聞いていなかったという事を伝えるようで。
カナメはただ、生き延びるために手向けろというルールを。そして役目とを伝えた]
「人を喰らう失敗作」……
そんな……君がそれだと、言うのかね?
バクもそうだったのかね……?
赤ずきんちゃん。
そんなにわからないと言わないで。
人の脳は──忘れない。
思い出すきっかけを失っているだけ。
カナメの部分は決して消えない。
カナメ。
私の役目は、何だった?
本当の私の役目は……何だ?
君は誰で、私は誰なんだ?
[口からは問いばかりが零れる。空気はひんやりとしているというのに、肌が汗ばみ]
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