夜、屋敷を抜け出すことは珍しい事ではありませんでした。好奇心に溢れたお嬢様の「お願い」で私がお伴をする。ご両親に知られれば私おとがめをくうでしょうが、それでもこんな村です。お嬢様が逢い引きをなさるわけでもないし……おとがめだってたいしたことはないと、そう、思っていたのです。
あの日は月のまあるい晩でした。
いつもと変わらぬお嬢様のお伴、いつもとかわらず楽しげなお嬢様に手を引かれて……ああ、私はいつも、何が楽しいのか解らずについていくのです。曖昧に笑い、遅れぬようについていくのです。
あの夜も、いつも通り。
いつもとなにも、変わらなかったのです。
変わりがあったのは、今朝。
自警団の団長であるアーヴァインさんが屋敷を訪れたのです。そして、集会場に集まるようにと、私が、名指しで呼び出されたのです。
何故かと問う私に返ったのは、
あの満月の夜、大きな獣の姿を見たという報告があったこと。それが人狼という生き物の疑いがあるということ。
そして、私の姿を見かけた者がいるということ。
そんな、言葉でした。
私はそのまま、集会場に向かうことになりました。ご主人様や奥様の視線を思えば、屋敷に留まることなど出来ませんでした。
けれど集会場に向かう気にはどうしてもなれず、雪の中をずいぶんと歩きました。出会う人は皆、私が呼び出されたことなど知らぬ風でしたが……いずれ知れる事でしょう。
そうなれば私に向けられる視線は変わってしまうのでしょう。
人狼。
声に出しても何の感情も湧きません。
何かを想像しようとしても、出てくるのはせいぜい山に住む狼くらいのもので、自分にその嫌疑がかけられているなどといわれても、怒って良いのか笑い飛ばして良いのかわかりません。
人狼。
人と狼の姿を行き来する生き物。
雪道を歩く間に考えて、考えて、ふと気づいたのはその生き物についてのことではありませんでした。
そうであれば、どれだけ良かったことか。
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うーむ、グレンの人や、コーネの人は、もしかすると自動放出なし設定と勘違いしてはったのではないかしら。
いや、違う事情かも知らんけど。
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