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[天へと昇っていたはずの雪が]
…あ
[ゆっくりと再び、地へ降り積もり始める]
――。
[幾度目かの11月1日。]
ジュンタ……
[彼はどうなったのだろう、と。
"送信完了"の文字をぼんやり見つめ、思案する。]
[自分の指で彼の名を入力しておきながら。]
――。
[もしも、ジュンタが死者で。
彼が"還されて"いたとしたら。]
……。
[考えれば考える程に、落ち着かなくて。
そわそわと体を動かしては、]
[彼に電話をかけてみようか、と電話帳を開いたり。
彼の名を選び、かけようとして…閉じたり。
やがて、自責にも似た感情を感じながら、
ぐるりぐるりと同じ挙動を繰り返す]
[かちかちとせわしなく滑る指。
目的を達せずに、幾度も滑っては彷徨うだけ。
電話帳に在る彼の名を見る度に]
――。
[自分が送信した内容がリフレインし]
―、じゅ
[無意識に呟いていた名の切れ端に重ね]
っ
[きゅ、と唇を噛んだ]
[すぅ、と息を吸い、瞳を閉じる。
ぷるぷると小さく、体が震えていた。]
――。
[ゆっくりと瞳を開き]
…かける、から
[自分に言い聞かせる様に呟いて、コール]
――。
[通話、を押下すればやがて呼び出し音が鳴る。
あちらでも少し遅れて着信音が鳴るだろうか。]
[どれ位の長さの呼び出し音だったか。
それはとてつもなく長く感じられた。
出て欲しいけれど、出て欲しくない。
どちらであっても…彼に正直な自分を見せる事が。
いつも通り、会話する事が出来る自信は無かった。]
…あ!
[けれど。繋がった、とわかる、とつい声が漏れる。]
じゅ、
[ジュンタ。そう、名を呼ぼうとした所で]
……ミナツ、ちゃん?
[聴こえてきたのは、違う声で。]
[電話越し、何かを堪えるような小さな声が帰る。
相手は問い掛けた名で間違いない様で]
…あの、其処にジュンタ、居る?
………連絡、貰ってたんだけど…
[自分の記憶から逃げる様に。
とぼけた様な質問を。恐らくはミナツにとって。
酷くなるかもしれない可能性のあるものを、
投げる。]
[相手の嗚咽に乗り、伝わる事実。
其れが頭をぐらぐらと揺らし、携帯を落としそうになる。]
……あ、…あの…ぇ…ぅ……
[口から漏れるのは、子供の言い訳の様な。
しどろもどろの、言葉とは呼べない、音。]
……。
[ミナツの声。叫びの様な其れを黙って聞き、]
……ごめん、あたし…
ごめん、なさい……
[反射的に、ぽろりと言葉が口をつく]
[問われ、何も返せず、固まった]
ごめん、、本当に、ごめ
[応えるべき言葉が、うまく、出ない]
私、その…メールに…
[声は聞き取れないほどに、小さく]
[此方の言い訳の様な其れに、返る後輩の声。
それは、強く責める声ではなかったけれど。
…どんな言葉よりも、強く心を締め付けて]
――、あ、
[待って、とも云えず。
やがて声も何もしない、無機質な音が]
<ぷーっ、ぷーっ、ぷーっ……>
[鳴り響き、ミナツの声の代わり、となり]
――。
[それをただ、受け入れるように、
携帯を耳につけて、微動だにしない。]
[やがて、その音も止んでしまう。
自動的に携帯が状態をOFFにしたようだった。
完全に、あちらとは途切れてしまった。]
――。
[それでも携帯を握り締め。
まるで、向こうからの声を聞いている様に。
一つだけ、ゆるゆると首を縦に振ると]
――、
[静かに、頬を一筋の涙が流れた]
[頭を撫でられても、暫くは気付けない様に。
ただ、すぅ、と零れる涙に、
瞳は遠くを見つめて、いた。]
――、あ
[だが、不意に、お団子に触れる手に気付けば、
素っ頓狂な声と共にそちらへ視線を上げ]
…ズイハラ、さ
[涙声と共に。ぐしゃ、と顔を、歪めた]
[何も、見えていなかった。
見て居たのは、居なくなった人の気持ち、だけ。
何処か、居なくなった母に罪悪感があったのか。
…一番大切な残されたものの気持ちを…。
今になり、身に染みて痛感する。]
――、ズイ、は
[彼に包まれれば、強く、縋りついた。
側に誰も居なければ。こうする相手が居なければ。
ひょっとすると、一人、
発狂じみた状態になったかもしれない。]
ずい、っ…
[しかし、其の身に触れ。止まる。
呼んだ名が、途中で凍り。喉の奥へと、還る。]
――、…?
[恐る恐ると言う具合に顔をゆっくりあげ。
すがりついている、彼の顔を。]
…ズイハラさん、なん、で
[涙目のまま、見上げる。]
[まだ、此処に居る。
そう、云われれば何と返していいかわからない。]
―、っ、…っ、
[右左に、ゆっくりと首を振った]
なんで、
[そして、俯いたまま]
…なんで?…どうして?
[答えの出ぬ問い掛けを]
-回想・コンビニ-
[何故、どうして。]
――っ、
[繰り返し、溢れる思いは温もりを
感じられない彼の体に触れ、凍る。]
――、
[何故、彼で在ったのか。
何故、温もりを、感じ無いのか。
何故、彼はそんな言葉を紡ぐのか。]
[思いを堪えきればせず、涙となって流れ。
其れを隠すように俯き、黙り込む。]
[ズイハラは何か言葉を紡いだろうか。
其れに対し、答える余裕を持ちはしなかった。
塞ぎ込むように、両膝の間に顔を埋め。]
――。
[黙り込む。]
――。
[彼は自分に危害を加えたりするだろうか。
……それなりであれば、彼を恐れもするのだろうか。
…しかし、危害を加え、果てに殺されるとしても。
一度に抱えすぎ、麻痺気味の心は黙り込むだけ。]
……。
[その体勢のまま。時折、鼻を啜る音が響くか。
数時間の時を、コンビニの其の場所で過ごした。]
-回想・了-
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