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……トゥーリッキか。
[ぼかされたその名を、はっきりと紡ぐ。呟きではない声は、使者然として、よく響いた]
……
それが真実たらんと言うのならば、求めん。
新たな死が齎される前に、その身を。
既に齎されたなら、その結果をも。
[告げられた人物について、感情めいたものを口にする事はなく。するべき事を確認するように言っては、果てない白き野に遠く目を向けた]
………そうかも知れません…
[憶測の域は出ずもアルマウェルの言葉を否定はせずに、カウコの所在を想う。投げつけた言葉の効力など無に等しく、彼の安否もラウリの消息も今はわかりはしない。
確認のためなのか紡がれるトゥーリッキの名に、一度は蹴り落とされた車椅子に座す求道者は沈黙で肯定を示す。使者として言葉を紡ぐアルマウェルへ向き直り、今はもう浴びた血に塗れぬ姿を見上げる]
あの人は言ってました。
今回の件と関係するのかはわかりませんが…
人がトナカイに病を伝染しているのだと。
…貴方もあの人も僕にはさっぱりわかりません。
……トゥーリッキは。
ウルスラを殺した事を憎むと言っていた。
[トナカイ。病。レイヨから伝えられるトゥーリッキの話に、マティアスの小屋にてかけられた言葉を告げた。続いた声には、レイヨに顔を向け直し]
そうか。……それで良いのだろう。
トゥーリッキが狼遣いだというならば。
私だって。己からしてさえ模糊たる存在だ。
理解など、せずとも良い。
すべきではないか。どちらでも同じ事だ。
………そうですか…
[トゥーリッキがアルマウェルへ向けた言葉を聞けばまた考え込み、いつもの癖で眼鏡をはずしつるに歯を立てる。続けられた言葉に注意は紅い彼へ戻り、滲み霞む姿を捉えてから眼鏡をかけ直した]
そうかも知れません。
それでもお話を聞きたいとは思います。
…ひとつお訊ねしたいのですが。
[キィ…―――アルマウェルを促すともなく車椅子は軋み、長老のテントへ向かう素振りを見せる。報せを届けてもらうだけなら彼に任せども、カウコやラウリの消息が届いているなら、彼にまた報せに走ってもらう手間のないように]
―――忘れたい事はありますか?
[尋ねたいと言うレイヨに、その車椅子が軋み動くのを見やりながら、続けられるのを黙って待った。問い掛けられた内容に、少しく目を伏せて]
……死を。
[返した言葉は、ごく短く。ウルスラを殺した後に語った話をなぞるように]
忘れずとも。薄らいだならば。
そう、いつも考える。
[一度、手袋をした掌を見つめてから。レイヨに先んずるようにして、長老のテントに向かい、歩き出した。テントに辿り着くまでは、無言のままでいたかもしれない**]
…―――、………
[死の淵へと深く眠り感じる求道者が抱くものと、記憶を留め続け忘却の術を持たぬアルマウェルが、そこに見出すものは違う。紅く痛ましい暴虐も、不在がもたらす―――あるいは肉体の持つ熱そのものの喪失も、「死」そのものではない。
彼の視線を追いウルスラを刺したナイフを握っていた掌を見て、誰にでも必ず訪れる静かな死と言う隣人は残酷なのだと…―――死を―――アルマウェルの言葉を受け、彼に向く眼差しは複雑な色を浮かべ細めた。
キィキィキィ…―――促されるままに車椅子は軋む音を立てて、吹雪の中を動き出す。冷たいを通り越して痛みすら感じそうな吹雪の中で互いに口を開かず、どれくらいの距離を進んだか、テントはもう近い。
霞む視界の向こうにマティアスとイェンニの姿があり、吹雪く暴風に紛れ子犬の唸り声も聞こえるか。惨劇の気配は近くそこには未だ死はなくも、残酷な隣人は確かに彼らの傍にあった]
………死は僕や貴方の傍にも…
それでも貴方は確かに生きてます。
貴方が死と付き合う術を見つけられるといい。
…………
[訥々と語る間も惨劇の場へ近づいていき、イェンニの行動に前髪に隠れる眉を顰める。アルマウェルは彼女を止めただろうか、辺りは赤黒く中心には二人の姿。
倒れるマティアスの傍で唸る子犬の口元は新たな人の気配に顔をあげ、血に濡れた口を開き吼える折に紅い飛沫が舞う。無事を確かめるために声をかけ、惨状を更に思い知る事すら躊躇われた]
………マティアス…
貴方の犬ですか。
人の味を覚えてしまったんですね。
[答えぬマティアスへなのだか訥々と零し、胸元から容器に入った丸薬を取り出すのは、先に車椅子の車輪に巻き込まれ開いた傷口から血の滲む指。身を乗り出し子犬の鼻先に差し出して血の臭いに寄り来る紅い鼻先、牙を立てられるのも構わず狭い顎を押し開き、喉奥へ丸薬を押し込んだ。
人であれ目覚める事の難しい薬は、子犬を二度と目覚められぬ深い眠りへ誘う。子犬ながらも獰猛だった唸り声は弱り、自らが喰らった飼い主たる男の傍でぱたりと動かなくなる前に、くうんとひとつないた]
傷の手当を…
[傷を負うイェンニは動ける様子だが、アルマウェルや自分の存在をどう認識しているのか。彼女の浮かべる感情は複雑で、極度の興奮状態ようでも酷く落ち着いているようにも、恍惚としているようにも見えた。
マティアスが息を引き取ったのは、子犬が眠るのとどちらが先だったか、車椅子に座す求道者は彼の死を覗かない。彼女を探すと言っていたトゥーリッキの姿はなく、いつしか彼女の姿もふらりと*消えているだろう*]
―― 回想/女たちの、秋の仕事 ――
[冬を越したトナカイは、殖える仔の数を見極めて
春に狩り集め、屠殺する。夏の間、湿った涼風に晒し
生干しにした毛皮を秋になめす作業は大切な仕事。]
…口と手が、同時に且つ至極滑らかに動くのは
お前の特技だがそれでは力が入らない、イェンニ。
[水分の程よく抜けた毛皮の裏を、ナイフ状の道具で
削いでいく。ジジッ、ジジッと皮から固い血糊や
脂肪片が剥がれる音。イェンニは、こびりつく赤が
瑞々しいそれでないことへと頻りに毒づいていた。]
女屠殺人になりたければ、今鍛えておくことだよ。
[――この仕事は、手首の力と握力がものを言う。
腕の力に頼っては、せっかくの皮は容易く裂けて
台無しになってしまう。蛇遣いは、自身もいまだ
熟練には至らぬなりに、イェンニへと手本を示す。]
尤も、その場で喰えぬ屠殺など、
さぞや腹が減ることだとは思うがな…
[蛇遣いは、新参たる妹分が口にする物騒な夢想を
概ねは程良く聞入れ、また或いは程良く聞き流す。
妹分も同様に、蛇遣いがにこりともせずに毎度呈する
指摘というか単なる感想というかを似た姿勢で扱う。
互いに理解を求めていないからこそ、通じ合う間柄。
秋の作業小屋の窓には、
厚い氷と薄い氷が疎らにこびりつく。
ユール祭を共に祝う約をしたのは*その時期だった*]
―― 回想/女たちの、秋の仕事 終了 ――
―― 長老のテント前 ――
[死する直前に届けられたラウリのなきがらは、
蛇を連れた遣い手が通りがかったときにはまだ
長老のテント前へ触れる者無く横たえられていた。
件の小洒落た帽子は、添えられていただろうか。
蛇遣いは、己を運ぶ狼に骸の傍で歩を緩めさせ…
少しの間、顔を向けずともそこへと立ち止まる。]
……
[虎の如き眼差しは俯かず、行手を見据えたまま。]
[見遣らずとも、頬に癒えきらぬ火傷がひとつ、
それ以外>>0:39>>0:40傷のないことは知れていた。]
ひとならば、悼もう。だが…
けものの骸へ構いだてするは、
喰らうときばかり――だな。
[けものとひとの境を、支配のまじないの均衡を
失ってしまったラウリへか、憐れまず確かめる。]
ひとに、別れを告げに来たのだよ。
[さくり、おおかみの前足が血に濡れぬ雪を踏む。
…村内を闊歩する狼の群れ。外へ出ていた村人は、
恐れおののき手近な小屋へと駆け込み閉じこもる。
蛇遣いを運ぶのは、灰褐色をした一際大柄の狼。]
…ああ。
どうか寛いで――常の如く在るといい、村の衆。
隠れて息を潜めたとて、
我らが群れにはわかるのだから。
[やがて見えてきたのはマティアスとイェンニの姿。レイヨの声を聞き、一度其方に目を向けてから、二人の方に歩み近付いていった。白に広がる赤。凄惨な光景]
マティアス。
[名を呼んだ彼は手遅れだろう事が知れた。彼の、人を喰らってしまった犬がレイヨによって永久の眠りにつかされる。目を閉じ、開いた時には、既にマティアスも息絶えているのが認められたか。怪我をしたイェンニには静かな一瞥をくれて――暫くの間、死したマティアスの体をじっと見下ろしていた*だろう*]
―― レイヨの小屋 ――
[崩れそうな小屋には、淡い灯りがともっている。
屋根の煙出しから昇るのは、薄くしろい煙と蒸気。
主不在の住まいで火を起こすのは二度目のこと…
蛇遣いは、レイヨの小屋で火の前へと座っている。]
…
[火にかけた小鍋の縁を、ほのおの舌が舐める。
くたり、と沸きかけの揺らぎが湯面を乱しゆき]
茶には合わぬのだろうな…
[浅く醒めて身じろぐ白蛇に触れ、ひとり呟く*]
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