すぐるん……御神牛はこっちになんだな……
[苺大福に未練たらたらながらもやっと神社の跡取りの役目をはじめる
スグルを神輿の準備場――資材テント近くに誘導しようとするが細い瞳は傍目に分り辛くとも、涙目*]
[ヘイケには軽く会釈だけをして、ネギヤの後を着いてゆく]
何で遊んでんだアイツ。
[眉根寄せて一瞥するのは、アンの姿。
都会から里帰りして来た一家の子どもに混じり虫採りに興じる様は、同い年とは*思えなかった*]
−境内・鳥居前−
[鼻歌を歌いながら、制服のスカートの裾を翻しつつ歩く。
その手に持ったビニールの袋は、一歩進めるたびにかさかさと音を立てた。
袋には「大福屋 夜苺」の文字
それは1日13個限定の幻と言われる苺大福を販売している店である。]
うふふ、{6}つも残っとるなんて運ええわ〜
[ぶんぶんと振り回す勢いで、袋を揺らしていた。]
[いくら"残っていた"とはいえ、限定品を6つも買うのはいかがなものか。
が、双季(ふたき、通称ニキ)は身体に見合わず大食いの為、仕方ないと思う者もいたりする。
列に並んだ時、前にニキがいれば諦めろと言われるレベルである。
そのまま上機嫌に歩くと、出店の準備がされているエリア。
目前にかつて世話になった先生>>4の姿が見えた。]
ヘイケ先生〜こんにちはぁ
[そのお野菜、美味しそうやんなぁ。と、目を輝かせながら挨拶。
同時にヘイケには、ニキのお腹の音が聞こえたかもしれない。
ネギヤとスグルは既に去った後だっただろうか。
まだ声が届くのなら、2人にも軽く挨拶をしただろう**]
[笊の中には、人参、ピーマン、南瓜にとうもろこし。
焼きそばと書かれた看板の下で団扇を使う初老の男性に笑顔で手渡した。]
子供たちには、お野菜もいっぱい入れてあげてくださいな。
あら、双季ちゃんこんにちわ。焼きそばにはまだ少し早いわよ。
[挨拶してくれた少女が幼稚園にいた頃を思い出す。
この子がこんな目をした時には、彼女のお腹の虫が存在アピールしていたものだったっけ。]
スグル君がさっき御神牛を連れてきてたみたい。
後からお祭にも来てくれるといいわよね。
[スグルを案内した後に結局のところしぶしぶと祭事設営を手伝う事になった神社の長男―――
―――『根木弥餅肌(ネギヤ モチキ)』はえっほ、えっほと設営を進めて――少し離れていようがきゅぴーんと煌く第六感]
あのビニールの音は―――夜苺のビニールの音なんだなっ!?
ニキニキ、まさかその品はっ、あの限定のなんだな……!?
[祭事設営をしながらたぷん腹から出した響く声でニキに問いかけ、同時に細い目からでも滲み出る物欲しそうな視線を向けるだろう]
―境内・鳥居前―
……置いて行かなくったっていいのに。
[鳥居前で途方に暮れた青年が一人。
スマートフォンを片手に眉尻を下げる。
先程まで電話をしていた相手は恋人ではなく、妹だった。
今年で大学2年生になった青年は酒蔵の跡取り息子である。
秋祭りの手伝いをする為に下宿先から此方へ戻って来ていた。――将来、祭りの運営の一部を担う為の勉強である。
けれど今、青年の頭の中は別の事が占めていた。]
――苺大福、買い損ねた…。
[はぁ、と溜め息を付いて青年は肩を落とした。
青年は甘党であり、苺大福は青年の好物だった。
此方に戻ったら必ず食べると決めているのだが――母が買っておいてくれたものは妹に食べられていて、今年はまだありつけていないのである。
‘後(04)分早く来たら良かったのに。’
そう店主に言われて、青年は膝から崩れ落ちたくなったがぐっと我慢した。]
…6個も残っていたなら、1個くらい残しておいてもいいじゃないか。
[祭りの準備で賑わっているから、愚痴を一つ零すくらいは許されるだろう。
別に本人の前で言う心算はない。
けれどまぁ。
午前中の手伝いを終え、暫しの休憩を、と呑気に部屋で寝こけていた青年が悪いのだ。]
…後で、何か買おう。
[青年はそう心に決めると、父の姿を探しに境内の中へと入っていった。
懐かしい顔を見つけたなら、如才のない笑顔を浮かべて手を振ろうか。]