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屋上
[潰れたパッケージを取り出す。
最後の煙草だった。
食料はなんとか持つけれど
煙草を買える金はない。
いよいよ、何かを売って捻出しなければ――
ぼんやりとそう馳せながら
最期の煙草に、火を点けた]
[近くにいた男の子、顔に目立つ火傷の痕がありました、がいくんと言うそうです、その子にお願いして手伝ってもらって、わたしは煙草を買いました
ハイライト、かみさまの分です
わたしの分のハイライトは、まだあるから大丈夫です
わたしは屋上へ向かいました
かつみさんたちが来るまで、まだ時間があるだろうから]
[人には相応しき生と死がある。
そんな事を、誰かが言っていた。
人一倍死に触れてきた若者は、そうだといいねと笑った。
患者の手術が上手くいかずに、死に至ったと連絡を受けた今日。
若者は、その患者が誰か聞かずに帰宅した。
聞けばきっと、とても悲しい気がしたから。
自分は未熟者であると、知っているから。
今日も今日とて、若者はコンビニ弁当を買った。
微糖を飲みながら、家路を急ぐ。
手袋越しに、珈琲の暖かさが伝わってきて。
吐く息は、とても白かった。]
星空、綺麗だなぁ
[高い空に、一筋の星が降った。
昔の人は、空をみて人の運命を占ったと言う。
あの流れ星は、どんな運命を暗示するのだろう。]
―屋上―
[屋上の隅っこ、わたしはポケットからハイライトを取り出します
口に咥えて、かみさまの銀色をしたジッポで火をつけます
それからジッポをポケットにしまって、代わりに取り出したものがあります
小さな石でした
かみさまの、お墓の石です]
[‥‥―――さん。
石を見ながら、心の中でかみさまの名前を呼びました
わたし、今日、いきますね。
あなたのところに。
両手で包んだ石を、そっと額に触れさせます
やっぱり石は石なのです
それはひんやりしていました]
[占いなんて、医者のする事ではないな。
そう思って、小さく笑った。
運命だ、宿命だ。
そういう物のせいにしてはいけない。
全ては自分の、誰かの、選択の結果だ。
自分の力だけでは変えられない事を、人は運命だと言ってしまうけれど。
医者は、患者の未来を託される存在。
その医者が、運命なのだと逃げてはいけない。
だから、流れる星に願うなら。
皆が、最後の瞬間に笑っていられますように。]
ふふ
私にもこういう部分があったのだな
[そう思うと、少し可笑しくて。
肩をすくめると、前を歩く人影が見えた。
小さな子供と、若者と変わらぬくらいの年齢の母親が手をつないでいる。]
[何処かで違う選択をしていたら。
若者も、人の親になっていたのだろうか。
何処かで違う道を行けば、自分もああやって手をつないで歩いていたろうか。
そう思うと、少し寂しくて。
そして、その親子がとても微笑ましく見えた。
子供は、手に人形を握っている。
サンタには、そのお人形の友達を願うのかな?
それとも、別の何かが欲しいのかな?
少しだけ、歩く速度を速めて。
親子に追いついてみよう、なんて思う。]
ストーカーみたいで、やだけど
[勘違いされない程度には、距離をとっておこう。]
[今日の空は昨日と異なり、いつもの白い空だった。
紫煙はゆらりと揺れながら
空に焦がれるように昇りゆく。
ふと、屋上の扉の開く音が聞こえ
周囲を見回すと――
隅の方に佇む女性の姿があった]
お嬢ちゃん、久し振りだなァ
元気かい?
[蟀谷を揉みつつ、ゆっくりと煙を味わい
何時もの調子で、声を掛けた]
[この選択は、間違いだったのか。
ある意味では、正解だったのか。
子供は、人形を取り落とす。
母親の手を振り払い、それを拾いに車道に出て。
そこに、乗用車が走ってきた。
親子に近づいたのは、正解だった。
若者は反射で駆け出し、車にひかれる前の子供を捕まえることに成功した。
距離をとっていたのは、間違いだった。
子供を抱いて走り抜ける時間はなくて。
結果、子供を突き飛ばす形になった。
ほら、運命なんかじゃない。
ただ、選択を一つ、間違えただけだ。
いつだって、そこに死は転がっている。]
[わたしは石をポケットにそっと仕舞って、それから口に咥えた煙草を離して息を吐きます
白い煙が空へ向かって行きます
わたしも、こんな風に行けるのでしょうか
空の高い、たかい、ずっと上の、きっとかみさまがいる所まで。]
「お嬢ちゃん、久し振りだなァ
元気かい?」
[その時、声が聞こえました
聞いた事のある声でした
わたしは振り返ります
そこにいたのは、いつかのおじさまでした]
こんにちは。
[わたしはにこりと微笑んで、挨拶をしました]
[運動、しておけばよかった。
学生時代なら、もう少し走るのが早かったろうに。
世界がくるくると回る中、浮かんだ苦笑い。
これで生きてたら、ジムに通おう。
そう考えられる程度には、若者は冷静だった。
不思議と、痛くはない。
ぐきりと嫌な音がしたけれど。
痛くもないし、苦しくもない。
背中が何かにぶつかって、回転がとまった。
空は、いつもより高い。
人が、あつまってきている。]
子供は無事ですか
[若者は、そう聞いたはずなのに。
自分の声は、聞こえなかった。
その代わりに、泣いている子供の声がする。
そうか、肺か首がやられて声が出ないのか。
5分以内に、救急車来るかなぁ。]
こんにちは
昨日、アンタさんの絵を描いたよ
そうやって煙草吸ってる姿を、
かみさまが見守ってる絵をなァ
[屈託なく笑いながら、昨日の絵を思い出す。
写生したわけではないので、少し乙女チックな
漫画染みた絵になってしまったけれど]
「昨日、アンタさんの絵を描いたよ
そうやって煙草吸ってる姿を、
かみさまが見守ってる絵をなァ」
[おじさまの言葉に、わたしは何度かまばたきしました
この人は、かみさまを知っているのでしょうか
ううん、違います
かみさまのおともだちではないと思います
たぶん、ですが
だから、きっと、想像で描いてくれたのでしょう
それでも、嬉しいと思いました]
それは、ありがとうございます。素敵ですね。
見てみたいなぁ。
[自然と、顔が緩んでしまいます
わたしはへにゃりと笑いました]
[無理だろうなぁ。
この場合、窒息になるのかな。
たぶん、そうだろうなぁ。
まぁ、いいさ。
選択を間違えた自分の責任だ。
若者は、小さく笑って。
眠くはなかったけれど、目を閉じた。
苦しそうに、見えるのかな。
血とか、出てるのかな。
子供が怖がらなければいいけれど。]
ただひたすらに生き、ただ死ぬだけ
それだけの事さ
[心残り、あるかな?
ああ、あの男の人にお礼を忘れていた。
ロッカさんにも、煙草のお礼してないや。
患者さんは、引き継いでくれるだろうし大丈夫。
父さんと母さんは、泣くだろうな。
孫、抱かせてやれなくてごめん。]
でも、まぁ
[心残りは、あるけれど。]
悪くない人生だった
[そう思って死ねるなら。]
幸せだろう
[自分は、まだ。]
[若者の意識が、いつ途切れたのか。
それは、誰にもわからないけれど。
最後に浮かべていた顔は、苦笑い。
星がもう一つ、流れた。
若者の部屋では、しまい忘れたアルバムが一つ。
桜並木、砂浜、紅葉、雪景色。
そんな写真がいくつか、テーブルに散蒔かれて。
半分ほど残った煙草がひと箱。
閉め忘れた窓から吹く風で、縫いぐるみとかかれたレシートが何処かへ飛んだ。]
[少しばかり驚いたお嬢さんの様子に
勝手にモデルにしただなんて、気持ち悪いと、
そう思われてしまっただろうかと首を捻る。
けれど、そういうわけではなかったらしい。
続く言葉に、此方もお嬢さんのように
頬を緩ませて、笑った]
ああ、今度持って来るなァ
そんなに上手いもんではないんだが…、
[人に見せる程の腕前でもないけれど
なんとなく、彼女に見せたいと感じたのは何故だろう。
何時でも「かみさま」は見守っているんだよ、
そう伝えたかったのかもしれない。
幾許かの言葉をお嬢さんと交わし
最期の煙草を終えて、屋上を後にした。]
優しさに包まれて
[寒かった屋上と異なり、
休憩室は暖かさに満ちている。
ここでの午睡は既に日課になりつつあった。
特に今日は、人の気配を一切感じず
心地良く微睡に沈めそうだった。
うつら、うつら。
夢の中には、皆が居る。
幸福な、夢の中。
眠ったまま、男は起き上がることはなかった。
脳内出血を起こしたまま、数日を送っていたのだった。
苦しむ事無く逝った男の表情は
微笑んでいるかのように、優しいものだった**]
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