情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了
[1] [2] [3] [4] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
[葬儀は、家族葬でひっそりと行われた。
娘達は到着すると、蔵作の兄――伯父の先導を受けて
経を唱え始めた。
列の中には、蔵作の目を逃れ
養女とずっと生活を共にしていた蔵作の元妻の姿もあった。
幼き頃、父である蔵作から習った経は、
今日、こうして父を見送る為に覚えさせられたのかと。
嗚咽を堪えながら、大切そうに言を紡いだ。]
『お父さん!!あたしだよ!ねえ…、寝てるみたいだね…』
「そうかァ…? まァ、寝てただけなんだ…」
『十数年ぶり……、老けたね、お父さん…』
「お前も随分、老けたなァ。すっかり母親の顔になって」
『子ども達も、旦那も連れてきたんだよ』
「ああ、可愛い兄妹だなァ。お前によく似てるよ」
『お父さん――…、ごめんね』
「来てくれただけで、いいんだ。ありがとうな」
『――…、……っ、』
「生きてたか。良かった。身体、大事になァ」
[生きている間に逢えたなら
きっと、もっと嬉しかっただろう。
けれど――…]
また、きっと逢えるさね
今度はもっと、お前たちを大切に、そして
お前達から愛される父親として――
さようなら さようなら
母ちゃん、病院で出逢ったひとびとと
娘達をどうか、護ってやってください
[男の魂は天へと向かい、その残滓が
一羽の鳥へと、乗り移る。
鳥は、群の仲間を呼ぶように
一際 美しい声で鳴いた*]
―回想・屋上―
ゾウサク
ゾウサク、おじさま
[わたしはおじさまの名前、ゾウサクと言うのだそうです、それを繰り返し呟きました
これで、この人のこともかかえていけます]
「いい病院だねェ、此処は」
[わたしはその言葉に頷きました
ここには、優しい人がたくさんいます
ここで、かかえていきたいと思う人がたくさん増えました
いいところだと、思います]
[空を見上げます
青くて綺麗な空、悠々と飛ぶ鳥、輪郭の淡い雲
夜ではないけど、丸い月が浮かんでいます]
わたし、そろそろ戻ります。
おじさまのお母さま、良くなると、いいですね。
[わたしには、母さまはいません
父さまだってそうです
いたけど、いないのです
だから、よくわからないけれど、
でも、おじさまのお母さまが良くなればいいと、そう思います
わたしは、おじさまに向かってにこりと笑い、そう言いました
そうして、部屋へ戻りました
支度をしなくっちゃ。*]
― ロビー ―
[走り出して、着いたのはロビーだった。
きっと一日しかこのままでいられないとわかっていた。
家族に会いに行く?
おじいさんは死んでしまった。
自分が入所するときに少し後悔するように泣いた息子はもう今は半年に一度来るか来ないかだ。
嫁も、孫もそれぞれ生きているだろう。
もう、それでいい。それがいいと思う]
くるみちゃん、いない
[息が荒いままきょろきょろ見回す。
病室も何も聞いていない。
はぁぁ…とため息を吐いて下を見たとき気づいた。
服が、何故か昔持っていた白いワンピースだった。
そして姿は昔の姿。これでは自分だとわかってもらえない]
やれやれだよ…
あっ
[見覚えのある医師が歩いてくる姿が見える。
いつも月一で見てくれる外科のユウキ先生だ。
彼なら、病室を知っているだろうか。
いや、これが自分の夢だったらそもそも知るわけがない]
ええい!ままよー
[首を振ると彼の元に駆けていった]
[彼の目の前に躍り出ると、彼の都合などかまわず話し出した]
あ、あの、先生
いつもお世話になっております
えーと、くるみちゃんが…
[お医者先生に嘘をつくというのでやや挙動不審だ]
あの、わたしはくるみちゃんの友達のぼたんといいます
くるみちゃんにお見舞いに来たんですが、先生、病室はわかりますか?
[上目遣いで聞いた]
[ロビーを歩いていた若者に、駆けて来る姿があった。
年の頃は16・7。
この季節に、白いワンピースを着ている。]
ちょっと君
[自分に寄ってきているのだと思ってはいないけれど、とりあえず声をかけた。]
そんな格好では風邪を引いてしまうよ
女性が体を冷やしてはいけない
[お節介である。]
風に揺蕩う花弁
[肉体を失った私は
アネモネの花を抱えて風と遊ぶ。
現の瞳から見えるのは、
花弁が風に乗って踊る様だけだけど。
私は、此処に居る。
病院の中庭に降り立って。
生きている人たちを眺める。
ロビーの少女の姿も視界に在るけれど
彼女の正体には、気付けない。
ただ、白いワンピースが可愛くて
私は彼女を見つめて微笑んだ。
駆けていく彼女のスカートの裾が
ふわりと揺れて、とても素敵。]
[その少女は、ボタンと名乗った。
クルミさんの友人だという。
変に挙動不審なのは、なんだろう。
上目遣いで、病室を聞いてきた。
受付で聞けば良いのに、とも思ったが。]
ああ、クルミさんのご友人。
病室は、わかるよ
番号を教えればいいかな?
この病院に初めてくるのなら、連れていこうか
ええっと、ボタンさん?
[ボタン、と言うと。
月に一度検診に来る老女を思い浮かべてしまう。
少女と老女を重ねてしまうと言うのは、やはり失礼なのだろうけれど。]
[先生の申し出に、とっさに、いえいえ忙しいお医者様に悪いよう、と言いたくなったがこらえる]
あ、お、お願いします!
初めてなんです、この病院
ロビーで迷っちゃって…
[と言いながらもいつもの特等席の陽だまりをふと見やる。
さっきまで、雪が降っていたのではなかったか?
陽だまりの中、ほかの常連が思い思いに過ごしていた。
そして、ふっとその窓の外に、うすく飛ぶように歩くような少女の姿を見た気がした]
あっ すいません、ぼうっとしちゃって
[案内してくれようとする先生に遅れまいと、くるりと向き直り、もう一度小さくお辞儀をした**]
では、いこうか
大変だったね、迷うなんて
[陽だまりの方を眺める少女。
つられて、若者も窓辺を見る。
花びらが散るように見えたのは、目の錯覚か。
瞬きをすれば、そこにはいつものロビーがあった。]
いや、気にしないで
こっちだ、行こう
[お辞儀をされて、若者は笑う。]
[896号室。
クルミさんの部屋は、たしかそこだ。
だが困った。
まだ、宿題をクリアしていない。
顔を出しづらいが、今は仕方ない。]
ここだよ、ボタンさん
[クルミさんの病室。
一つ、二つノックして。
少女を連れて、病室に入る。]
クルミさん、入るよ
[ところで、少女は年齢が随分離れているけれど。
どう言う友人なのだろうか。]
…ユウキ先生?
[扉を叩く音に、顔を上げる。
ベッドに腰掛けたまま視線をそちらへ。
声はすっかり覚えているから
招き入れる事に躊躇いは無く。
便箋を手にしたまま、
こんにちは…と挨拶を。]
ああ、こんにちわ
こんなに早く来る予定ではなかったけれど
[招き入れられれば、苦笑いが浮かぶ。]
宿題は、まだなんだ
今回は、君に会いたいという人を連れてきた
[少女後ろに少女を連れているはずだから。
彼女の目にも、入るはずだけれど。]
体調はどうだい?
[職業病だろうか。
まず、患者の体調を聞いてしまうのは。]
― 病室 ―
[ユウキ先生と一緒に病室に向かっていく。
どんどん困ったことに気がつく。
まず、行ってもくるみちゃんは自分に気づかない。
ただ不審がられるだけだ。
さらに一緒に行ったら、先生にも知り合いじゃないことがばれてしまう。
その上お手玉も完成していない。
本来なら、この時間私はお手玉を作っているはずなのだ。
会いたい気持ちがどんどんしぼんで、顔が自然とうつむいていく。
しかし、目の前の先生はくるみちゃんの病室のドアを開いた]
狭間
[大空へと羽を拡げ、男は自分の煙が昇る
葬場の上を緩やかに旋回していた。
白鳥には、なれなかった。
白鳥になるには、業を背負いすぎていた。
名も無き鳥となった男の意識は天高く羽ばたき
強く、大きな声を響かせる。
其処に如何なる意味を持っていたのかを
現世に残る者達に、知る術はなく。
白く、ちいさな鳥は白い空を求めて旅立ち
やがて、誰の目にも見えなくなっていった。]
くるみちゃん…
[そこにはベッドに腰掛けたくるみちゃんがいた]
えーと…
ぼたんおばあちゃんからの伝言だよ
あのね、ごめんね
できなかったの お手玉
頑張ったんだけど、渡せなかった…
[何がなんだか自分でわからなくなってくる。
少し目の前が滲んだ**]
other world
[男は、病院の休憩室で微睡の中に居た。
周囲には子どもの声と、娘達の姦しい声]
『お父さんて、寝てるとお婆ちゃんにそっくりじゃない?』
『私もそう思う!』
『それより、さっきの外科の先生イケメンじゃなかったー?』
『私は入院患者さんでイケメンみつけたよ』
[聞こえている。
けれど、男がツッコミを入れる前に、孫(7歳男児)が
空気を読んだ]
『オマエラ、もっとママらしくしてろよ』
[1] [2] [3] [4] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了