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―電車の中―
[駅は目前のはずだが、突然鳴り響く警笛と閃光に顔をしかめる。
近藤が駆け寄ってきたような気がしたが、次に目を開けると、そこは先ほどとは違う場所になっていた。]
二宮さん……?
何だよ、これ…。
[夢と言うにはリアルな情景だった。三日前、塾で会ったばかりの二宮が、得体の知れない何かに取り囲まれていた。
やがて彼女は地面に膝をつき―――。
映画の撮影シーンを目の前で見せられているような感覚に、手にしていた弓が床に滑り落ち、カランという音を立てる。
その音で我に返り、改めて周囲を見れば、見覚えのある顔ばかりが揃っていた。]
[そんな中、なぜ電車の中?え?と状況把握に追いつかずただ、次々と起きる状況に目で追うのが一杯だった。
青白い光の塊が鬼火が二宮の周囲を取り囲まれて、倒れる音ではっとする。]
…嘘でしょ…。
[二宮が倒れて、鬼火が喋ったかと思えば、さらに椎名が訳の分からない事をいう。]
…あなた、自分で何言っているのか分かって言ってるの?
[椎名に向けてそう言葉をかけただろう。
こんな状態で楽しいとか、冗談でも…気分が悪い。]
[駅に着いてしばらくすると、突如警笛の音が聞こえ、同時に閃光が視界を奪った]
うわっ…
[しばらくして目を開けると、そこは…列車の中であった]
うそだろ……まじかよ……
[辺りを見渡すと知った顔や知らない顔。みな一様にあっけにとられた様子]
[バクの弁舌が一通り終わった後、鷹揚に拍手をして近藤は立ち上がる。教師らしき人物が二宮に駆け寄っていたが、近藤の興味はもはや二宮にも寺崎にもなかった]
素晴らしい。どうやら君はこのことについて理解しているようだね?
恐らく――ここに居る他の面子よりは、遥かに。
そうだ、これは遊びなんかじゃない。手の混んだ悪戯でもない。
[混乱する車内をよそに、語気を強める]
これは、青玲学園で起きたあの事件と同種のものになるだろう。
つまり、
[そこで言葉を切ると、おもむろに全員の顔を順々に見回す。
小春の姿を認めた時だけ、一瞬躊躇う様な表情を見せたが、続けて]
この声に従う以外、俺たちが生きて帰る道はない。鬼とやらに憑かれた人物を――、処刑する。
わけがわからないわ…。
鬼がどうとかっていうのは、なんとなく聞いていたけれど。
[見知らぬ男の言葉も、バクの言葉も常軌を逸しているとしか思えない。]
それらしき疑惑のある人は隣の車両に向かってもらうとかでいいじゃない…。
多分、この車両だけじゃないでしょ?
ね、須藤先生?
[と、見知った中で一番話が通じそうな須藤へ話を振る。
ついでに、もう一杯いかがと言いたげに水筒も差し出して。**]
あんた、何言ってんだ…?
[現実ともつかない状況に、突如拍手を伴い雄弁に語りだす見知らぬ大人。
狂気に取り憑かれているとしか思えない]
この状況について、わかってんのか?
そもそも、あんたの仕組んだ状況なのか、これ
[近藤に食ってかかるように詰め寄る。鬼がどうたらはともかく、それを…どうするだって?
あまりにも非現実的で、それを受け入れる事は出来そうになかった]
―電車内―
[目の前の状況が何処か他人事のように視界を流れていく。
思考が追い付かず二宮が倒れてゆく様子がスローに見え]
意味が、わからない…
[ぐらりと身体が揺れるのを何とか耐え、ぐるぐると回る頭を抑える。
青く光る火の玉のようなものから聞こえる声に視線を其方に向けて。]
鬼、殺す…
はは、随分と手の込んだアトラクションだね。
[乾いた笑いと共に呟いた言葉はもはや現実逃避であるとしか思えず。]
[その時、鬼火が二宮を取り囲む]
……!
[声にならない声をあげ、咄嗟にリウとクルミを背に回し庇う]
なんだ…なんなんだこれ…
[二宮の体がぐらっと揺らぎ、須藤が駆け寄るのを見ていた。
辺りからは何の声だかわからない声が聞こえる]
鬼…?殺…?
[この状況に置かれた憤りを、近藤にぶつけている最中に、小鳥遊の声が間に入る。
…ああ、そうだ。
隣の車両に移る…それもよくわからないが、そうせねばならない、という事だけは何故かわかる]
え、…ええ、そうですね。
小鳥遊先生の仰るとおりだと思います。
[彼女に同意を示し、ついでに差し出された水筒をもう一度受け取った。
ひとまず、落ち着ける状況でもないが、落ち着こうか。**]
[椎名のほかに、近藤も何やら言ってる。
が、言っている事はなんとなく分かる。
理解したくないだけであって。
彼らから目を逸らすことで、パニックで叫びそうになるのを抑える。]
弓槻君…?
[大丈夫?とおそるおそるといった感じに弓槻へと声をかけただろう。]
―回想・駅前―
[例の時間を待っている間、途中途中で自分の知ってるオカルト話もしてみたが、彼の話と比べたら何と浅い事か。
次から次へと湧き出てくる話の数々に聞いていたら、例の時間までの待ち時間を苦に思う事無くやり過ごす事が出来た。
椎名はまるでオカルト知識の泉のようであった]
おっとぉ?そろそろ時間じゃーん?
現在の時刻は23時59分でーっす。
警笛の音本当に聞こえるのかなぁ。くぅ〜…!ドキドキするっ!!
[隣に座っていた成瀬に、同意を求めつつもそわそわと時計を見やる。
0時まであと5、4、3、2、1……]
っ………!?
[警笛の音が、夜の静寂を切り裂く。
走って逃げなくては。そう本能的に感じ取ったものの、予想もしてなかった眩しい光にうろたえてしまい、強く目を閉じて、腕で目の辺りを覆うのが精一杯で結局一歩も動く事は叶わなかった]
[食って掛かる須藤を醒めた目で見据え、しかし慇懃に自己紹介を始める]
あぁ、これは失礼。私は松前塾の講師をしている近藤と申します。ここにも知った顔が数名、居ますね。
[そう言って小春に微笑む。彼女は今の自分を見て怯えているだろうか、それとも。]
私が仕組んだわけではありません。ただ……椎名君、と言いましたか。彼と同様、この事態が起こることを、どこかで望んでは居ましたけどね。
見たところ、貴方は煌星学園の教師ですか?
それならば落ち着いてください。彼らを無事に帰すことが貴方の役目でしょう? それを果たすために最善のことを提案したまでですよ、私は。
[さも当然と言わんばかりに須藤をあしらう。理解してくれるのは今のところ椎名だけでも良かった。そのうち、みんなわかるはずだ。どこかでそう思っている]
―回想・汽車内―
………?
[暫く経ってからおそるおそる目を開けてみると…そこは電車の中だった。
一瞬自分の置かれた状況が把握出来ずにポカンと口を開けて硬直する]
え?え…?なん、で?
あたし電車になんか乗ってな……。
何なのこれ意味わかんない…!
ま…まさかとは思うけど、ここ偽汽車の中、とか…そんなワケ、ない…よね?
[ぎゅっと成瀬と長澤の袖口を掴みながら震えた声で聞いてみる。
彼女達がどんな表情をしているのか確認する心の余裕はなかった]
[頭の中で状況を整理しようとしていると誰かの愉快そうな声が聞こえる。
其方に意識をやればそれは見知った顔の者で]
椎名、君?
キミは何かを知っているのか?
それに、投票って…?
[楽しそうな彼の様子に苦虫を噛み潰したような表情で近づく。
しかし彼に辿り着く前に見知らぬスーツの男が拍手と共に立ち上がる。
皆の顔を見渡した後に男が発した言葉に茫然とし]
しょ…貴方、何を…
[スーツの男に詰め寄ろうとした時、胸の辺りが焼けるような感覚に見まわれ胸元を押さえて立ち止まる。
その間に須藤が男に詰め寄るのをただただ見つめ]
[村瀬も弓槻も、そして駅に行くかどうかと尋ねてきた櫻木も。他の同級生や先生までもが電車の中に居て、その誰もが、この状況を把握できていないように見えた。
二宮の身体を離れた何かが、信じられないような事を言い出した。]
……鬼、って…なんだ、それ。
帰れないって、嘘だろ…!
[咄嗟に矢筒を取り出して、近くの窓を思いっきり叩いてみる。が、割れる事は無く。
外を見ようにも、明かりすら感じない真っ暗な闇が見えただけだった。
自分の中には混乱しか無いのだが、椎名は何かを知っている様な素振りをしている。
床に落としてしまった弓を再び拾い上げると、彼の方を向いて問いかけてみた。]
椎名…、見つけたってどういう事だ?
何か知ってるのか…?
[ふと顔を逸らすと、近藤先生までも顔つきが変わっていた。
彼らの話す言葉に理解が追いつかない事に、苛々している自分に気付いた。
どうやら、とんでもない事に巻き込まれてしまったらしい**]
[続いてバクと近藤の言葉を聞く。
納得はしてないし、半分も理解していなかったが、普通じゃないことになっていることは理解した]
……ちょっとわけわかんねーし、信じらんねーけど……
普通じゃねー状況だってことはわかるよ
…で、近藤さんったっけ?
青玲学園の事件と同種って、俺よく知んねーんだけどさ
神隠しがどうのとかってやつだよな?
なんか知ってることは教えてくれや。
[内心の動揺を抑え、近藤に問いかけた]
[服に皺が寄るほどに胸元を強く握っていると、すぐ近くから櫻木の声がかかる。]
櫻木さん…ああ、大丈夫だよ。
ちょっと、ふらついただけだから…
[彼女の声に応対する頃には胸の痛みも収まり、気を落ち着かせるように服の乱れを正す。]
キミこそ大丈夫?
怪我とかは、してない?
[状況から目を逸らすように彼女に微笑んでみせるも、苦笑いのようにしかならず。
近藤と名乗った男と同じように周りの顔を見渡し少しだけ顔を歪ませた。**]
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