これでも昔、安楽椅子探偵に憧れたものよ。
[名探偵を募る雰囲気に、はにかむような笑みを浮かべた]
でも残念ね。
おやすみの時間だわ。
婆の夜は長く、朝は早いもの。
[食堂に戻り入り口近くの柱によりかかる]
宇野さんを探すと言われてもどういう方なのか知らないので
ここの屋敷にいる、僕たち以外の人を見つければいいということか
[当惑しつつ窓の外を見るが、島は夜の闇と雨に覆われている]
そうそう。
お手紙を書かないとね。
[鞄の中から取り出した携帯筆を、一筆箋に走らせる]
前略、宇野様、中略、後略、かしこ
[辺りに漂う柑橘系の香り。
紙飛行機を折り、窓から土砂降りの夜空へ……べしゃ。
暴風のせいで窓は中々しまらなかった]
本当……10人のインディアンの歌なんですね。
子ども達が英語を勉強しながら歌う数え歌に
こういうのがあったような。
でもあの……それよりなんだかもっと、
物騒な歌詞……なんですね。
1人がのどをつまらせて、9人になった……って……
[今の状況を思えば、身震いをする]
大丈夫よグリタさん。
あなたが指名手配の殺人犯だとしても、婆はいつでもあなたのマドンナです。
[入り口に佇むグリタへ、聖母のような笑みで、小首を傾げる]
おやすみなさいませ。
枕が替わると眠れるか不安だわ。
[そう言って慣れた様子で1階の奥の部屋へ向かう。
インディアンの歌を*諳んじながら*]
10人のインディアンの少年が食事に出かけた
1人がのどをつまらせて、9人になった
……なんまいだぶ、なんまいだぶ。
[ぼーっと運ばれていくネギヤを眺めていた。
遺体が部屋から運び出されて、はっとしたようにカメラを手に取る]
現場写真、くらい、撮っといたほうがよかった……かな…?
[プロ失格だな、などとどこか冷静に考えていた]