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[向ける細い目は執行人の向こうに故郷を見て
その 一瞬さ に堕ちめく意識を奥歯で留めた]
そうです、か。
ずっと、いつかな、と
…―――ていたん、です。
[じゃり…]
[大きな上着の中で音をさせつ火種の行方を見
そうとまた薄い腹を擦る 背筋は伸ばすまま]
…是非にそこを踏み越えてどうぞと
勧める茶も 湯、すら ありません。
[けれど薪を有難いと 赤い髪の頭を下げた]
んぁ…?
[微睡みの中、小屋の外で何かが置かれる音が聞こえた。 けれど、すぐに動くことはせず、足音が遠ざかってから
ゆらり、と立ち上がり、小屋の外を覗いた。]
ああ、またか。
[置かれた薪束を認めて、独りごちる。]
どうせなら何か食べ物…。
[そう口にしただけで、飢えを思い出し舌打ち一つ。]
――……ッ、
やあ、ご相伴に預かっているよ。
……いささか、乱暴な挨拶じゃないかね。
[痛みに歪む表情に薄い笑み、しかし抗わぬのは気狂い男の求める対価は――今は命ではなかろうと知っている、からだ*]
[そのまま外で薪を組んで、火を起こす。
日毎に要領はよくなっている。
そうして爆ぜる炎を眺めながら、火に当たる。
どうせ体の内から温まることはない。]
[それでも、手のひらからじわじわと温まれば、先ほどよりも穏やかなため息。]
…しかし、寒ぃなぁ…。
そろそろまた雪が降るのか。
[ぶるっと身震いをしてから、嫌そうに呟く。
どんよりとした空、黒い海。
荒涼とした風景をぼんやりと眺めている。]
[海鳴が響きまた腸がうねる
腹を見下ろし上げた顔
意識は執行人のままに
視線だけが枠の外れた窓から外]
穏やかに向かい合う場でも時でも
ないですが
疼く、ので。
[視界の遠く 大きな帽子を被る男の姿
きゅううう、と 裡で暴れる脾を抑えて
ほんの少し、口の端で わらった*]
[ こぽり ]
[ こぽり ]
[気が付けば、暗い水底から乏しい光が揺れる空を見上げて居た。
手を伸ばしても、地上には届かない。
叫び声を上げたくとも、生臭い海の水が肺腑を満たすだけ。]
…………ぐぁ、あッ
(俺は、このま、ま……
此処で、故郷に帰る事も出来ず、
あ、呆気なく
……兄弟の仇を)
[手足が上手く動かない。誰かがヘイノの脚をガシリと掴んでいるかのよう。]
(………死んで、しまう)
[ラウリの帽子は無くして居て、ただ休んで居たエリッキの小屋からくすねた網が絡まりヘイノの身体を縛って居る。道化とはヘイノの事を言うのだろう。]
(弟の、父の、一族の、
仇がこの村に居るはずなのに…………俺は、)
[それでもどうにか海底へ首を捻ると、淀んだ闇の奥から浮かび上がるモノと──目が合う。]
[ こぽり ]
[ こぽり ]
[眼差しが発する害意に当てられた様に苦しい息を詰め。誰だ、と問うたのちの短い沈黙。
ヘイノの頭に浮かんだのは、ドラウグと言う海から来る化け物の名前。]
…………俺の魂を、
お前にくれてやれば、せめてかの敵にまみえたい、
と言う願いは叶う、か?
親兄弟一族を無くし、コソ泥で命を繋ぐ惨めな男ひとり。
俺で足りぬなら、
陸の者の魂を幾つ捧げれば、 …………叶うの、だ。
[陸へはどう戻ったのか。
魚の死骸が絡まった襤褸ぼろの網がエリッキの小屋に投げ込まれる。
村の道には、潮で濡れた大きな塊を引きずった様な跡が其処彼処に**。]
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