情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
[1] [2] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
[独り言だか誰かに投げかけているのかすらも定かでない言葉たちは、床を転げたり跳ねたりしながらも酒気に消え。
はたりと止まったところで、何処かから声がした。]
――うむ。
そうだなァ。誰もいないってことは、誰も殺せないってことだもの、なァ。
それはよくないね。うん、何よりよくないなァ。
せっかくさ、何したっていいっていうんだから、ねェ。
[どこから聞こえる声だとか、そんなことは瑣末。
この声が自分に危害を加える気がない(だってそうだろ、欠片でもその気があるなら、こんなふうに煽っている間にもボクをそこの女と同じようにしてしまえばいい)なら、ここにいたって何かが出来る保証もないのは、その通りなのだから。]
よっ、と。
[弛緩しきっていた身体を、ぽんと跳ね上げ。
まだふわつくままに、立ち上がる。]
そうそう、できることじゃないものねェ。
[白い服の懐、巻いた青いストールの下。
忍ばせたものの感触を確かめて、口角を上げる。
鼻歌まじり、息絶えた女のもとへ寄った。]
ごめんね。
みィんな、行っちゃったからさァ。
[首を裂かれ、床に倒れた女の襟元を正す。
椅子に座らせるのはやめた。壁に凭れかからせるように、上半身だけを起こさせた。]
じゃァね。
さよなら。
[無情にも死を齎された彼女の、まだやわらかな唇にそっと触れ。
そのまま、自分の唇を重ねた。]
[たっぷりと何秒も、そのままでいた。
抵抗はされない。当たり前だ。
唇を舌でなぞっても、そのまま無理矢理に割り開いて口内を求めても、彼女が動くことはない。
首の傷が喉を貫いて回ってきたのか、それとも自分の舌を噛み切った血がまだ止まっていないのか、生臭い血臭が口吻に混ざる。]
……不味。
[ようやく彼女を解放して、はじめに言ったのはその一言。]
やっぱァ、キスは生きてる女のがいいかも。
これ、借りてくね。
[カウンターの隅の隅。
まだ血に濡れてぬらぬらと光るナイフを、拾い上げた。]
じゃ、今度こそ、さよなら。
運が悪ければ、またね。
[くすくす、とまだ酔い残るままの笑みをこぼしながら、ゆらぁり、と、ひとりと彼女きりだったバーを、ようやく後にする。]
あ。
洗ってくれば、よかったなァ……
[投げられて、血濡れた身体。
赤いナイフ。それを拾った手。
バーというものは水分には事欠かないものだから、洗うには困らないはずだ。]
ま、いいか。
[そうして、上機嫌のまま、歩き出す。
時々、なんとなく走った。]
[知らない場所だ。それには気づいていて、走っていた。
バーを出たその先が知らない場所であること、それ自体はさすがのこの男でも気にしたのだが、帰せと騒いでどうなるとも思えなかったし(マスターもいないしね)、何より知らない場所は大の好物なのだ。
あちらこちらの路地や曲がり角やそこいらの建物の窓やらを覗きこんでは、とにかく何かの手がかりを探そうとしていた。]
〜♪
[それはもう、極上の白砂糖と出会ったみたいに気分のいいことだ。]
人と会ってそういう声はよくないと思うんだけどなァ。
[笑みをほんの僅か濁らせて、ウルフを見やる。
たまには機嫌を損ねることもある。]
何って、何もしてないよ。
待ってても誰も戻ってこなさそうだから出てきただけ。
[お前が殺した、と言われれば、眼鏡の奥の瞳をきょとんと。]
んん、半分あってる、半分外れ。
もしくは未来予知?
[顎に手を当て、思案顔。
まだ殺してはいないので、間違ってはいない。]
だってあのお兄さんさァ、わざわざ血溜まりの中に投げるんだもんさ。
白い服の人間をだよ? 信じられる?
[それだけでなくて、血濡れた彼女の姿勢を直したりだとか、膝ついてくちづけしたりだとかの赤もあるのだけれど、まあ彼女の命の色には違いない。]
でさ、そんなことより。
ちょっと付き合ってほしいんだけど、いい?
[誰でも、よかったのか。
いや、ウルフがよかったのか。
その裏側に刃を隠しながら、またにっこりと笑みを作った。]
探検っていうか、実験。
[酔いは回りやすく醒めやすい。
酩酊感や呂律の危うさはもう無いが、かわりに興奮に酔いそうだ。
つとめて、素を保つ。]
煙草は吸わないから、いらない。
けど……他のものが欲しいかな。
[こっち、と細い裏路地に入っていく。]
そうだよ。
[煙草をやるのやらないのを彼が覚えていないことを、不思議には思わない。
自分だって、彼の名前すら覚えちゃいないんだから。]
ねえウルフ。
ウルフはさ、誕生日を覚えてないって言ったよね。
だからさ、だから、今日を忘れられない日にしようよ。
[路地を、ゆっくり行きながら。
ぽつぽつ言葉を落としていたら、袋小路の、どんづまりまで来てしまった。
行き止まりだとは思っていなかったけど、好都合。]
ボクにとっても、キミにとってもだ。
輪廻は信じる?
[後ろに放られたマッチ。小さく燻って消える。]
それから、警察は好き?
ボクは、あまり好きじゃないけど。
ほら、誰も咎めないって言うからさ。
今日をキミの、誕生日にしよう。
[叶うなら、足でも引っ掛けてこの路地に彼を押し倒す。
上に乗れば、細腕にしてはそれなりの力が、ウルフを抑えつけるはずだ。]
殺しはしたことないって言ったね。
ボクもだ。だけど、ここには、警察が嫌いな二人しかいなくて、なんだかわからない路地の隅。
そして、やったことないことは、何だってやってみたいのがボクなんだ。
[女の元から連れてきた、銀のナイフを右手に握る。
光のささない薄暗さ。刃は光を弾かない。]
ボクは、キミを殺してみたい。
[右手を振り上げる。このまま降ろしてしまえば、女とは反対側から、首を貫くことになりそうだ。]
[やめろ、を聞けるなら、こんなことはじめからしない。]
よかったね。
ボクが殺したみたいで、間違いなくなるよ。
[さあ、そのひくつく喉元に。]
おそろい。
[皮と肉を裂く手応え。赤いものが溢れる。心地よくて、自然と笑っていた。
首後ろにナイフを刺されたあの女。知らない女のような気がしたけれど、勝手に死ぬなんてそれこそ勝手な真似をしてくれたと思っていた。
これで、おそろいだ。]
ねえ、痛い? 喋れないかな、駄目かな、どう?
[嬉々とした声が、語りかける。]
[首に刺さったナイフから手を離して、満足気に唇を舐めた。
これは、いい。誰かが自分の手で壊れていく。興奮しすぎて、思わず欲情しそうだ。]
こっちも、使っちゃおう、かな。
人のナイフって、なんだかやっぱり、自分が殺した感じ、しないし。
[ストールの下、いつもずっと持っている、大切な。
刃渡りの長い、大鋏。]
ナイフ持ってるとさ、怒られるけど。
ハサミ持ってる分には怒られないの、変だよね。刃物には違いないのにさ。
だからボクはいつか誰かを殺すときにはこれにしようって決めてたんだ。
ハサミだって人は殺せるって、ちゃんと証明できるでしょ。
[大きく開いて、胸元へ振り下ろす。
抵抗されれば、位置はずれるだろう、けど。]
[1] [2] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了