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…、ええ。
これは、私の家に伝わる伝承だから。
[イェンニの問い>>2に、沈んだ瞳を向ける。
女は少し躊躇うようにしてから、小さく頷いた]
人狼が現れなければ……、意味のない、御伽噺よ。
意味…、そうね。
あるのかも知れないわ。
[慰めるようなユノラフの言葉>>2:69に、イェンニの声が重なる。
自らに言い聞かせるように繰り返し、続く言葉には首を横に振った。
僅かに伏せた目に、彼女の常の癖が映る]
いいえ、そこまでは分からないのよ。
…ごめんなさい。
ごめんなさい、イェンニ。
私に出来ることは、夢を見るだけ。
言葉を聞くことも知ることも、出来はしないの。
もっと分かれば、あの子だって助けられたかも知れないのに…。
[イェンニへと謝罪の言葉を紡ぐ。
指が口元から下ろされるのに、気遣わしげに彼女見遣った。
また俯きがちに話していたから、
ユノラフの動きには、またびっくりして顔を上げる。
大きな足音があがっていくのに、その背を目で追い、]
……。
[意を決して席を立つ。
ひとつの名を記した紙を、箱へ確かに*投じた*]
─ 夜 ─
[その夜も夢を見た。死したひとの魂の夢。
それでは…彼女は死んだのだ。と、ぼんやり思う。
振り返る娘の顔。
それを見ていたら、涙がぽろぽろと零れてきた。
胸が締めつかられる理由は分かっている。
このひとは自分が殺したひとだから。
あの紙に名を記すというのは、そういうことだから──…]
…っ、……
[自分の泣き声で、目が覚めた。
暫し呆然として、やがてゆるゆると手で顔を覆っていく]
[どれくらいそうしていただろう。
女はゆっくりと寝台から身体を起こした。
のろのろと身支度を整えて、
泣きはらした顔のまま部屋を出て行く。
探そうと思うものがある。
死の気配はひとつではなく、だからきっとあるのだろう。
辿りついたのは、マティアスの部屋]
あ………
[覚悟していたとはいえ、その事実に声を失う]
ごめ…、……なさ…
[かたん。と、音が鳴った。
自分が壊れた扉に寄りかかった音だと気付く余裕はなく]
ごめ……、な…さい…
[口元を覆う指の間から繰り返すのは謝罪の言葉。
縫い付けられたようにマティアスと、
嘆くクレストを見つめる目からは涙が溢れ出す]
怪我…、して……のに
[そのままずるずると床に座り込む。
クレストらの方へ歩み寄る力はなく、
部屋の入り口で、ただぽろぽろと涙を零した。
昨夜のマティアスの声>>2:150
疑われたのに、なお謝ってくれた心優しい声。
結局、そんな思いだけをさせて死なせてしまった。
声にならずに、やがて顔を覆って泣きじゃくる]
[どれほどの時が過ぎたあとだろう。
頭を撫でる誰かの手の感触>>65に、ぼんやりと顔を上げる。
靄がかかったような頭には、切れ切れに周囲の言葉が残っていた]
かわいそう……、 …?
[誰が。マティアスが?
聞こえた言葉>>55を鸚鵡返しに繰り返して、立ち上がる。
涙に崩れた顔をそのままに、
夢遊病者の如くにゆらりと調理場へと歩き始めた]
[調理場に居たのは、ニルスとイェンニか。
女はそれに構う素振りを見せず、杖をつき黙って歩く。
目指すものは、見渡すまでもなくすぐに見つかった。
流し台にある果物ナイフ>>65
少女の命奪った凶器へと真っ直ぐに歩み、それを手にする]
[ナイフを手にする女に、表情はない。
ただ泣き腫らした顔のまま、沈んだ顔でナイフを手に、
杖をついて居間へと向かう。
ゆっくりとした足取りで、歩む速さは常のまま]
[二人の怪訝な様子にも構うことなく、女は調理場をあとにする。
そのまま抜き身のナイフを手に、居間に姿を現した。
杖をつき、揺り椅子の老人をゆっくり目指す。
ヴァルテリの前に至れば、女は漸く口を開いた]
……ねえ。
何故ころしたの?
ひとだからころしたの?
アイノはひとだわ。ひとだったわ。
ひとを殺したあなたは……どちらなの……?
[女の手はそれと分かるほどに震えていて、
けれど銀の切っ先は真っ直ぐに老人へと向けられた]
[震える女は、背後の人の気配に気付くことはない。
ただ揺り椅子の老人を見つめて、唇から漏れる呼吸も乱れている。
それでもナイフを離すことはせず、老人の言葉を耳にした]
……そうしてひとを、みんなころすの?
ドロテアやマティアスみたいに、みんなころすの?
確かめるなんて──… …っ
[言葉と同時に、また涙が零れる。
ゆっくりとナイフを持つ腕を振り上げた。
そうして銀の刃を老人へ向け振り下ろす。
力ないそれは、老人の手にも容易く止められるかと思われるほど]
……っ!
[背後から、誰かに──レイヨに腕を捕われた>>91
躓くような形になって、右の手から杖が床に倒れた。
バランスを崩したまま振り下ろされたナイフは、目標から逸れる。
がたん!と、音を立て、老人に向けて崩れかかる形になった。
丁度飛び掛ってきたクレスト>>93が、それに拍車を掛ける]
[ヴァルテリの言葉>>92には反論出来ない。
そう、自分は確かに死者をしか見分けることは出来ない。
だから正しいと分かっているのに、]
─────!
[咄嗟に、背後から聞こえた声>>95に振り返る]
うそ……嘘よ。
アイノは人だわ。人狼なんかじゃない。
──── おかしなことを言わないで!!!
[長い髪を額に乱したまま、声を張り上げる]
あなたは誰?だれなの?
人狼なの?どうしてそんな嘘をいうの?
…っ、クレストはなして。
このこはちがうわ。うそをついているんだわ。
[瞳はレイヨへと向けたまま、
クレストにナイフ持つ手ごと捕われたまま訴える]
……!
[ニルスの大声に、びくりと身体が震えた。
手からナイフが床へと転がり落ちる]
どうして……どうして…?
あのこの光は綺麗だったわ。
絶対に人狼なんかじゃなかったわ。
心臓…なん、て……
そんなの、
[冷静なレイヨとは対照的に、女はまたぼろぼろと涙を零す。
視線は、彼から逸れることはなかったけれど]
─────…!
[ただ、続く彼の言葉>>107には鋭く息を吸い込んで、]
違うわ!!!!!
[大きく叫んだ。
己を拘束しているはずのクレストの温もりが、こんな時なのに温かい。
なのに動揺をしすぎていて、彼の痛みに気付かなかった。
───気付けなかった。
ただ、支えを求めた手指が無意識のうちに彼の腕を握る]
やめて……!
そんな、ひどい、
[ドロテアとマティアスの名に、頭を振った>>110
駄々をこねるように左右に首を振る。
周囲にどう映るかなど、頭にはなかった。
ニルスの問い>>108に応じる余裕も今はなく]
あなたがころしたの……?
[人が変わったようなレイヨへと問いかける]
[ほぼ同時に、掴む手の力が緩められる>>116
少し距離が開けば、彼の脇腹に血の滲むのは見て取れた]
……!
[鋭く息を飲み込んだ。
誰がつけた傷なのかなど、考えるまでもない。
咄嗟に手を伸ばして、その傷を強く押さえた]
ごめ……、なさ…、
[涙混じりに落ちるのは、微かな謝罪]
……っ、…
[レイヨの言葉にも、ニルスの忠告にも、最早返る言葉はない。
女は顔を伏せ、クレストの傷を手で押さえて首を振った。
長い髪が落ち掛かり、女の表情を覆い隠す。
ただ、啜り泣きのような音だけが微かに零れた]
ちが……、ちがう、わ。
わたしは、人狼なんかじゃ、ないもの。
死んだ、ひとの、たましいを、視ることを、
…どれだけ、知っていると、いうの。
アイノは…、ひと、よ。
これいじょう、彼女を、汚さないで。
[女はレイヨの言葉>>129に、伏せていた顔を上げた。
泣きながら語る声は、くぐもって聞き取りにくい。
一度鼻を啜って、女はもう一度繰り返した]
するべき、こと……。
[涙に濡れたぐしゃぐしゃの顔が、ニルスを見上げた>>138
惑うような視線はその顔から、彼の手のナイフへと移ろう。
再び彼の顔へと視線を戻し、その瞳の動きを追って振り返る。
女の眼差しはイェンニへは至らず、意を取り損ねて瞬いた。
困惑したように惑う視線は、クレスト>>135の上に留まる]
[咄嗟に女は、蹲ったクレストの方へと動きかけた。
レイヨの言葉>>136は耳に届いている。
けれど、すぐに言い返すことはしないで]
……!
[ただ、ニルスの急激な動きには息を飲んだ。
唇をきゅ。と、噛み締める。
足の悪い女は、すぐに動くことは出来ない。
だから、すぐ傍らにあった小さな置物をレイヨの進路へと──投げた]
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