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[大丈夫だと言ったのに、
具合の悪そうな男性は椅子に沈む。
病院に病人が居るのは不思議じゃない。
でも少し気にかかったのは、
その人が、大丈夫なふりをしたから。
少し、見つめていると。
冗長な溜息と呟きが。私の耳に届いた。]
…なら、手紙を書いて。私に。
[暇を潰す提案を。]
[手紙。
最後に貰った手紙は、
兄がくれた謝罪の手紙。
痛々しい程、真剣に書かれた文字は、
所々、落ちた水滴に滲んでいた。
あの文面を思い出して。
乾いたふうに感じる笑いを浮かべる男性の
私を見る目を、見つめ返した。]
…それなら、たくさん暇が潰れる。
私の暇もね。手紙を待つから潰れる。
禁句の指定はひとつだけ。
「ごめんなさい」…これは使わないで。
だめ?
[一方的な提案は、彼の困惑をよそに進む。]
[車輪を回して、近付く。少し。
彼のまだ顔色が悪いとしても、
大丈夫なふりをしているにしても、
言葉を交わせるならちょっと安心。]
…896号室の、草下クルミに宛てて?
返事を書くために、
便箋と封筒と切手の形のシールを
用意しておくよ。
[宛先が必要だろうから、
私の名前と今の住処をお知らせする。]
…最初の手紙に、
私に送るために欲しい便箋が何色で
どんな風合いなのかを書いてよ。
すると私からの
レターセットのプレゼントが届くの。
次の手紙には「贈り物をありがとう」かな。
[領収書なんて貰ったことが無いから、と。
苦笑いを滲ませる顔を見て。
私は唇を曲げて、少し笑って。]
…天満さん。210号室。天満さん。
忘れないから、約束ね。
[改めて約束を結んで、廊下の先を見る。
そして、私の部屋へ帰る事にする。
手紙を待つために。**]
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