[気付けば、耳をうつ水音]
[無意識に握り締めていた手を開く。
ロボット柄の冥銭がそこにあった。鈍く光を放ち、少し温かいコイン]
……あぁ。
[ロボット。
心音の聞こえなかったあの人が瞼裏に過る]
[きゅっと冥銭を握り直す]
ここは、ナイル川……?
ゴロ兄、バク兄、アン姉、
ここ、に……?
[首を巡らせれば、遥か遠くに
淡い人の影が見えた気がした]
[わかっていた。
きっと、ここはナイル川じゃない。
そのまま力が抜け、その場に座りこむ。
抱えた膝の上に顎をのせた]
ダディ、マミィ、ギン兄……。
[目の前には、向こう岸が煙る川。
柔く広がる、せせらぎ]
どちらかというと、nullでしょうか。
[八の字眉をして、どこぞの国の言葉でそう言う]
家族になったのは、一生食べるものには困らせないと誓ったあの日から。
[ケーキを一口大にすくって、フォークをマミィの口元に持っていく。
そう言えば、妻はいつからどこぞの国の言葉をマスターしたのだろう?]
ギンスイさん、ケーキを持ちますです。
キクコさんは、ミシシッピ川にいますと、父の貫禄が言っていますです!
[キッとした顔つきになり立ち上がろうとしたが、足が痺れていてバンビのように*震える*]
[パイナップルののったケーキを一口。
まじめな顔は続かず、ぷっと噴き出す]
ねぇ、ピーちゃん。
わたし、パイナップル嫌いじゃないのよ。
[バンビのようなピエトロに手を伸ばし]
ピーちゃんとギンちゃんは、きくちゃんにケーキを届けにいくの?
マミィを、甘えっこのキクコさんに連れていくべきです。
[指輪をはめた記憶のない、マミィの小さな手を取る]
家族皆一緒、それが一番大事です。
[もう片方の手は、ギンスイへと伸ばす]
ふふふ。
ピーちゃんはワガママだなぁ。
[笑いながら彼の手を取る]
きくちゃんの所に行くのは、一方通行だよ。
もう、ここには、帰ってこられないよ。
お安いですね。
[通行料は日本のものではないワンコイン。
どこかで見たことは……あるような気がした]
マミィ、一緒に行ってパイナップルを食べましょう?
戻ってこないなら、アムール川の向こうに家を建てますです。
そうだね。
一緒に行こう。
[嘘をついて、それから首を横に振って否定した]
わたしが見送るのはここまで。
だから、わたしの分まで、ダーリンがきくちゃんを甘やかしてあげてね。
あ、うん、わかった。
[ダディの言葉>>6にこっくり頷いてケーキを持った]
そだね、一緒が一番良い。
……ひとりは、寂しーし。
[伸ばされる手>>8、掴んだ。
だって、置いてくのも置いてかれるのもなんか嫌だったから]
[嘘にホッとした表情をしたのも束の間]
いいえ、ダディではダメです。
マミィでなければ、女の子は許してくれないものです。
[少女みたいなマミィを前にして、駄々っ子のように頑としてyesと言わない大人]
ギンスイも説得してくださいです。
……一緒にいけないの、なんで?
ひとりで残るの、寂しーじゃない。
[渡される硬貨。
片手はダディ掴んでるし、もう片方はケーキ持ってるから、ちゃんと見えないけど]
……置いてくのも置いてかれるのも、なんかやだ、なぁ。
……いや、キクコたちもほっとけないけど、さぁ。
[ケーキ、食べさせる約束したから。
行かないのもどうなんだ、って、やっぱり思う、わけで]
……うん。
とーさんの言う通り。
一緒にいこーよ。
[説得になってるのかなこれ、って思いつつ。
思う所、そのまま口にした。
いや、それ以外にどうしろっていうの、っていうかなんていうか]
いつからか、とか、関係なくさ。
家族なんだから、さぁ。
みんな一緒。
それが、一番いいよ、かーさん。
[理屈なんていらない、一緒が一番いい。
そう思うから、思うとおりに、そう言った]
生きてるから、向こうに行けるんだよ。
わたしは、生きてないから。
[手をつないだまま、笑う]
でも、寂しくない。
わたしは、忘れないから。
あの子のことを忘れても、みんなのことを忘れない。
……。
ずっと手をつないでいてあげるから。
一緒に行けるところまで、行こう。
[言葉は彼らのためのようだけれど、でも本当は少しでも長く一緒に居たいから]