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[自然に足は森の方へ向かっていた。こどもたちに教える地蔵のさらに先、一層植物が生い茂り昼間でも暗闇のようなそこに実はもう一つ地蔵がある。その先は許されたものしか行くことはできない]
……ばーちゃん…。
[歩く足取りは重い。本気で走り回れば半日で一人の行方を調べることなどできるほどの小さな村である]
[ともに長く過ごしてきた家族故の虫の知らせのようなものがあった。最初は小さなものだったが、時間が経てば経つほど強い確信に支配されていく]
ねえ、お地蔵さま。
うちのばーちゃん、見てない…?
[村の端、二つ目の地蔵まで辿り着き誰の前でも見せたことのないような弱々しい呟きをこぼす。
ふと、地蔵の裏側の草が倒れているのに気付く]
……?
お地蔵さま、ちょっと失礼します。
[地蔵に手をかけ、奥を覗き込む。ごく最近、ヒトが踏み荒らした跡があった]
ばーちゃん?
……いや、一人の足跡じゃない。複数…。
[少しの逡巡を見せ]
ちょっとだけ。ちょっと。
[誰にともなく許しを請うと、さらに奥 ―禁忌の場所― へ進む]
―――足だ。
[そう思ったのまでは覚えている]
……ここは…診療所…?
[独特の薬品の匂いがした。
しばらくして、ワカバから自分が森の奥でアンの死体を発見したことを告げられるだろう]
[死体を発見した自分がアンの流れ出る血を見て啜り、体中に血を浴びて民家の辺りまでふらふらと歩いていたところを保護されたこと、
アンの死因から、自分が容疑者として疑われていることを知るのは、もう少し後になる]
[血塗れの服から借りた服に着替え、村長から話があるというので集会所へ]
……。
[飛び交う言葉に俯き一人唇を噛みしめる]
[事実と推測が入り交じり時にあからさまに疑いの目が向けられながらも、見知った顔を見つけると駆け寄って]
私が発見したみたいなんです。
森に行ったんです。そこで。
でも、私、覚えてなくて…。
まさか、アンが…殺されるなんて…。
[思い出されるのは、笑顔ばかり**]
[つぶやくように]
そうですね、ちゃんと食べてあげないと。
……でも、よかった。
[腐る前に発見できて、と口に出すことはしなかった]
[髪を撫でられて、少しだけ目元が柔らかくなる。頭を下げて]
ありがとうございます、ホズミさん。
お願いします。
[出て行くホズミを見送りながら、外の日差しを見て]
この気温では、あまり持ちそうにない…。
急がないと。
[独りごちた]
[ンガムラの言葉を耳に挟み]
アンは若いから殺された…?
じゃ、栂村さんよりずっと年取ってるばーちゃんは無事かな…。
ねえ、栂村さんは村で人が殺される話は知ってる?
こういうときって、犯人って誰なのかな。
[昔、いくつも話をせがんだ時のように、軽い調子で声を掛けた]
[帰ってきたホズミに微笑むと]
ありがとうございます。
本当に、助かります。
[零れた言葉が一部耳に届き、首をかしげた]
………。
[座り込んで顔を覆って]
…わたし、もうだめだと思ってた。
だから腐る前に探し出して食べなきゃって。早くしなきゃって。
ずっと、そんなことばかり考えてた。
…そっか、そうだよね。無事かもしれない…。
[顔をあげて、ンガムラとダンケの目を見て微笑んだ]
栂村さん…ダンケさんも、ありがとう。
[ンガムラの話を真剣に聞いていたが、ホズミが帰ってきて話が途切れると]
じゃ、また続きを聞かせてくださいね。
…私、ちょっと探しに行ってみます。
[集会所を出て行った**]
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