[1] [2] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
あれ...?
[なんとなく動きたくねーなって、ぼーっと海を眺めてたら、また一瞬歌が途切れた]
また、か?
[兎のまくしたてた台詞が蘇る、狭間に落ちちゃった、誰か......
がさり、と胸元で手紙が音を立てた]
『見つけないで』
(探しに来て)
[歌声の途切れた隙間に、入り込む、こえと、コエ]
......やっぱ、人探すか。
[鍵と螺子を探す気は起きない。けど、巻き込まれた人間が知らないうちにどーにかなっちゃうとか、ちょっと笑えねえ。
笑えねえんだよ、ほんと]
[流木から立ち上がって、街の方へと引き返す。多分、あっちに人がいるって気がする。
勘だけど.........なんかこう、匂いみたいなのがすんだよ。
人に会ってどうするかなんて、まだ決めてねえけどな*]
[同じくらいの年かな、なんとなく、最初に会ったのが女性じゃなくて良かった、て気がするあたり情けねえ。]
兎に無茶振りされてるって意味なら、御同輩ですかね。
[なんとなく営業用スマイルで、近付こう、として、足が止まる]
『見つけないで』
(見つけたよ)
.........あんた、
[近付きたいような、逃げたしたいような、微妙な気分。
なんだこれ?]
[がさりと、また胸元で手紙が音を立てた。俺は息を整えるように吸い込んで、足を踏み出す]
俺は、我邑夏生...
ここで会ったのは、あんたが初めてなんだけど......
[とりあえず、自己紹介だろ、ここは、ああ、けど...]
.........あんた、鍵か螺子、持ってないか?
[いや、ストレートすぎるぞ、俺!*]
いや、その...
[そりゃそうだ、持ってるなら探す必要ねえよな...あれ?]
兎が、誰かが持ってるかもって言ってたんで、つい......
[ここは謝っとくとこだろ、なんか疑ってるみたいに聞こえたに決まってるし、て、思ったんだ、思ったんだけどよ]
.........俺は、良く判らないんだ。
[問い返されたら、ほんとに判らなくなった。あの歌と、こえと、コエ...
近過ぎて、遠すぎる...]
いや、すみません、わけわかんないですね。
[なんとか浮かべた笑みはぎこちなく見えただろうと、自分でも思う**]
......理由、知りたいなら、海に行くといいかも。
あそこに沈んでます、きっと...
[あの歌は、あの海の底から聞こえているから*]
[夏神という男と一緒に、海岸の方へと戻る道を歩き出す。
俺はもう、確信し始めていた。
「鍵」と「螺子」それが、人の中にあるのなら、それはきっと...]
[懐に手を入れた夏神の仕草に、自分の懐にある手紙を思って、俺は、なんとなく笑ってしまった。
ああ、多分そうなんだろう。
懐に隠したものは、捨てたくて捨てられなくて、忘れようとして、決して忘れられないもの]
俺はね、海と朝顔に思い出があるんだ。
[言葉は、隣の男に聞かせるためか、海の底に隠れる何かに向かって落とすのか、俺自身にも判らない]
好きな女に、初めて出会ったのが夏の海で......彼女の好きな花が朝顔だった。
[朝顔は、夜に見た夢を朝に咲かせる花のようだと言った彼女は、眩しいくらいに真っすぐに、自分の夢を追いかけていて......俺は]
俺は、意気地が無くて、彼女を攫って来れなかった。
[都会で、同じ専門学校に通って、彼女はデザイナーを、俺はメイクアップアーティストを目指して......でも、俺は自分の限界を見てしまった。
1人で田舎に帰る、と告げた時、彼女の見せた悲しげな顔は、今も忘れられない]
そらのあお うみのあお
あしたさくはな あおいはな
[俺は歌を口ずさむ、波間に聞こえる声に重ねて]
[絵描きで詩人だった男は、肖像を頼まれた資産家の娘と恋に落ちて、駆け落ちした後病に倒れて.........娘とは別れさせられたんだという。
けれど、それでも]
『それでもきっと、ずっと好きだったのよ。
逢いたいって、思ってたの』
[彼女は確信している顔で、俺に、そう言った。それはきっと命の消えた後までも、と*]
[1] [2] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ