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―回想―
[椎名の背をただ何も言わず見ていると小鳥遊がその後を追っていく。
しかしまるで興味が無いかのように正体を見極めようと櫻木の方を向き直ったとき…
―――視界の端で黒い塊が揺れるのが見えた。
何気なしにそちらに視線を送れば近藤が頽れる所であった。
ゴトリと鈍い音を立てて地に伏せた近藤に一人の少女が駆け寄る。
暫く様子を見ていたがやがて笑みを浮かべるかのように口元を歪ませ小さく言葉を零す。]
意外と、呆気無いものでしたね。
[口にしてから自身が実は近藤に様々な念を抱いていたことを思い知る。
憧れ、羨望、期待…何という事はない。
自身が出来ないことを軽々とやってのける彼が羨ましくて、眩しかったのだ。
いっそ憐れんだような目で少女の腕の中の近藤を見て]
残念でならないでしょうね?
ミイラ取りがミイラになる、と言ったところかな?
あーあ、三枝さんも可哀想に…
[今や中身のない抜け殻の彼は反論は愚か、自身を抱え苦しげ喘ぐ彼女を慰める術すら持たない。
そんな彼に向け小さく呟かれた、何処か他人事めいた言葉は誰かに届いただろうか。]
[須藤が近藤の死を改めて確認すれば少し近藤のそばへと歩み寄り
先程とは打って変わって皆にも聞こえるような声で、近藤の亡骸に向け]
近藤さん、お疲れ様でした。
何も力になれず申し訳ありません。
でも、おかげで良い教訓になりましたね。
これは…ゲームでも誰かの戯れでもなく―――現実だって事。
皆、理解できたと思います。
[皆の顔をぐるりと見渡し、この状況には全くもって不釣り合いなほどにこやかな笑みを浮かべ]
自分が助かるためには、誰かを殺さないといけない。
[自身の発言への反論など聞く気もないのかさっさと櫻木の方へと歩み寄れば長澤が彼女に何かした後のようで]
続け様にごめんね、櫻木さん。
手を、貸して貰えるかな?
[首元からネックレスを外し掌に乗せて彼女に差し出す。
その上に彼女の手が重ねられるともう片方の手で彼女の手を包み込んだ。]
天の秤は公平を意味し、人の魂の正邪を区別する。
キミが鬼だとするなれば悪しき心が燃え上がる…
と言っても、本当に燃えるわけじゃなくてこのネックレスが少し熱を帯びるだけなんだけれどね?
ふむ、別に変化はないか。
[氷のように冷えた自身の手に彼女の手の温もりが伝わる。
しかしそれ以外に感じる熱はなく何処かほっとした様子で彼女の手を離し]
…ありがとう。
櫻木さんはは鬼じゃないみたいだね。
[皆に聞こえるようにそう告げるとネックレスを首にかけなおす。
そしてボイスレコーダーに歩み寄り呆然としていた間の録音を聴き始めた。
一通り聴き終わり一息つけば対抗だという長澤に目が留まる。
彼の空気感が苦手なのか少し苦笑いを浮かべながら言葉を投げ]
それにしても…キミが対抗だったんだね。
手強そうだな。
キミの正体が何かは判らないけれど、お手柔らかに。
[この状況にそぐわぬ様子で彼に握手を求めようとしたところに須藤から声がかかる。]
ああ、僕が櫻木さんを見た理由も言っておいた方がいいですよね。
根本の考えは単純に多数決の結果ですね。
自身の意見は押し通さないと言ったはずですし。
それと、投票前の様子が少し引っかかったのもあります。
須藤先生も言っていたけれど自身への疑いに対する反応が過剰かなと感じた。
投票数が次点ではあったけれどそこまで過剰に反応するほどの疑いは掛けられてなかったように思ったからね。
彼女の性格なのか、疑われたくないのかの判別がつかなかったから見させてもらいました。
そんな感じですね。
だから、希望を変えたというよりは皆の意見に沿ったつもりだったんだけど…
納得してくれた?
[発言の後、自身の意見の推移が疑わしく思うのか小鳥遊に返答をする彼女に問いかけ反応を窺い]
村瀬さんが聞こえる人、ね…
俄かには信じ難いんだけど、村瀬さんなら在り得るかなって思うな。
それに自己申告は村瀬さんだけみたいだし、暫定的に纏め役をお願いしてもいいかな?
完全に信じれなくて、ごめんね。
[彼女に向け申し訳なさそうに笑みを零す。
近藤が倒れていた傍から彼の使っていたスケッチブックを彼女に手渡し]
近藤さんが殺された理由だったね。
殆ど小鳥遊先生と同じ意見だけど…
纏め役の消失によって場の混乱を招くのが主たる理由だと思う。
ただ先生と少し違うのは、近藤さんが何かの力を持っている可能性を考えたってところかな。
今までの話でも少し出たけれど力を持つ人が目立つのは好ましくない。
近藤さんが力を持っていたなら流石に鬼の目につきすぎる。
他に理由を上げるとするなれば…
この状況を詳しく知る者を消しておきたかったんじゃないかと考える。
鬼にとって自身が何者でありこの場にいる人間にどんな厄災が降りかかるかを知る人間は邪魔だろう?
少しでも情報が漏れる前にって感じかな。
[自身の手帳に現状を書き込みながら]
それと、僕が全員に出てきてほしいって言った理由だっけ?
すぐに狙われるって危機感はなかったね。
僕は鬼に連なる者は鬼と連絡が出来ないと考えていたから、偽物は補佐役の方だと思った。
つまり鬼にはどちらが本物かわからないから狙わないと思ったよ。
聞こえる人に関しては存在自体が不明瞭だったから…
出てきてもらっても信じれるかどうかは別として今みたいに申告が一人なら状況は少し変わるかなと考えた。
表に出てきた力のあるものが最低2人、最大でも4人…かな。
それだけいればどこを狙うかの目くらましにもなるし
その、鬼火の言う守る…者?の存在もあったしね。
鬼火の狂言の可能性もあるけど、もしいるとするなれば鬼の狙いを眩ませられると思ったんだ。
…あくまでも鬼と補佐役が連絡が取れないと仮定したときの話だけれどね?
だけど取れたとしてもむざむざ仲間を殺すとは思えなかった。
思考の整理が出来てなくてすまない。
鬼火の言う言葉がすべて真実とは限らない…簡単に信用はしたくないんだ。
[本人を目の前にして言うのは憚られるが事実であることは仕方がないと、彼女の目をしっかりと見据える。]
怖がられてるみたいだから余り反論とかはしたくないんだけどね…弁明はさせてくれるかな?
確かに投票前に出たのは申し訳ないと思う。
けれどあの状況で悠長に投票だの出るだので話している場合だったかな?
それこそ早くこの状況から脱出するために話し合うべきだと僕は思った。
皆の視界がクリアになるのなら鬼に狙われるのも致し方ないとも思ったしね。
それと櫻木さんの件だけど…僕には彼女の反応は不安から来るものには見えなかった。
個人の捉え方だと思うよ。不安なのは、皆一緒だと思うしね。
そこを疑う理由に加えられるのは少し困るかな。
まあ、これも個人の捉え方だから仕方がないんだけれどね?
っと、これぐらいにしておくよ。
後輩に詰め寄るとか本当にしたくないんだ…
[自身の語気が強くなっているのを自覚し成瀬から距離を取る。
何時も自身を落ち着かせてくれる星を見ようにも空には絵具をぶちまけた様な漆黒が広がり
慣れないことをしているせいか震える息を吐き出し扉に凭れ掛かる。**]
喋りすぎて疲れた…少し、黙るよ。
―回想―
[須藤への返答が終わり櫻木の様子を窺っていると寺崎から声がかかる。]
どういう所?
皆が感じている事そのものだと思うよ。
…僕は彼と違って口達者ではないし自己主張も苦手だ。
彼も僕なら論破できると思って出てきたんじゃないかって思うよ。
ただ、手強いからって何もせずに負けるわけにはいかない。
僕は皆を導いてみせる、きっと。
[苦笑いを浮かべながら答える。
しかしすぐに自戒するように首を振ると胸元をぎゅうと握りしめ寺崎を真っ直ぐに見つめ言葉を継ぐ。]
あとは、見る先についてだよね。
どちらでもいいけど…もし結果が鬼だったとして皆はその結果を信じれるのかな?
こちらとしては信じてもらうしかないのだけれどね。
その判断を皆がすぐに下せるのならバラバラでもいいんじゃないかな。
[そこまで話した時に鷹野の質問が聞こえ]
うーん…?僕も鷹野さんの考えと一緒だよ?
嘘をつくために出る隙を与えたと思ったからそう発言した。
すぐに出てくれば混乱はしないだろうけど、皆が希望を出した後に自分は実は見れるんだって出てこられたら混乱しないかな?
きっと混乱したと思う。
そのタイミングを狙われるのは嫌だったし、近藤さんの発言はその隙を作るためのものかと思ったからそういったんだけど…
あと、その、ごめんね?
おいしいってどの状況の事かな?
長澤君が出てきたこと?近藤さんが襲われたこと?それとも別の何か、なのかな?
それと、質問返しで申し訳ないのだけれど…
鷹野さんは僕が名乗り出た段階で長澤君が出て来ていたら襲われたのは僕だったって考えてるってことでいいんだよね。
それは、鬼たちが自ら偽物として名乗り出たってことなのかな?
でも鬼たちはそんなにわかりやすいことをするかな。
2人いる見る者が1人死ねば、もう一人が偽者だって言っているようなものなんだよ?
そんな…自分の仲間を差し出すようなまね、するのかな?
[彼女の言葉の指す状況がわからず困ったように彼女を見る。]
[再び深く息を吐き顔を俯かせたとき櫻木の声が聞こえ顔を上げる。
その顔には疲労が強く滲んでおり]
…ありがとう、櫻木さん。
僕の隣なんかで良かったらどうぞ?
でも座って休んでおいた方がいいと思うよ。
[扉のすぐ横のシートを見やり、力なく笑った。]
―回想終了―
[少し意識を飛ばしていたようで、伏せていた目を上げる。
調度長澤が村瀬に占い先はどうするのかと問うているところで]
ごめん、村瀬さん。
見る先については了解したよ。
[次いだ村瀬の発言に]
ああ、そういう事か…
いるかもわからない人に守られてるなんて思えなかったよ。
正直な話、考えもしなかった。
もしそういう力の人がいるんだとしても自分の大切な人を守ったんじゃないかな?
ちょっと今までの話を聞いてくるよ。
[申し訳なさそうにボイスレコーダーへと歩み寄り暫し聴き入ることにした。**]
[レコーダーを聞いていればそこに問いかけと共に村瀬が飛び込んでくる。
この状況で彼女の纏う空気は柔らかで思わず笑みが浮かび]
ああ、別に構わないよ。
さっきは長澤君からだったしね。
ただ僕の力は少し時間を空けないと使えないみたいでね…
少し遅くなってしまうかも知れないけれど、それでもいいかな?
[村瀬に向かい返答をしつつ、星型の金平糖を数粒取りあげそっとその場から離れる。
渇いた咳を幾度か零れ少し苦しげに喉を押さえる。]
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