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……いや、だから、お前な。
[ふと気が付けば、目の前にはトケイソウの蔦に雁字搦めにされた兎。
何が起きたのかは何となくわかった、のだが]
いきなり力押し付けた挙句、いきなり引っ張り込むんじゃねぇぇぇぇっ!!!!
[自分が媒介になって送り込むのとは違う、明らかに呼ばれた、という感触に、突っ込みが先んじたのは赦されろ。
怒鳴られた兎は耳をぴくぴくと動かした後てへー、という感じで笑った]
『だってー、ようやく呼べるだけの力がたまったんだものー』
たまったんだものー、じゃねぇよ、ったく……。
『とりあえず、こっち側の想いの欠片に力注いで、時流を均すからー。
そしたら、あっち側の欠片で、『界』を整えられるんだよー』
何言ってんのかぜんっぜんわかんね……。
『とりあえず、そこに立っててー。
あと、集めた欠片、見えるようにしてー』
[最後の要請は、先に送った面々にも向いたもの。
ほんとこいつ説明しねぇな、なんて思いつつ、ポケットに入れておいた綿毛を掴み出す]
『想いの欠片、記憶の欠片。
刻の流れ故に生じ、刻の流れに呑まれるもの。
集い揺らめき、時流を正せ。
全き時の流れを今、ここに……!』
[珍しく真面目な口調と声音で兎が紡ぐ。
それに応じて、こちら側の綿毛がほわほわと光を放ち始めた。
緑に光るそれは、やがて集めた者の手を離れて空中へ浮かび。
ふわふわと舞いながら、空間へと溶けていく。
それに合わせて未だ蕾だったトケイソウが次々と開いて行く。
やがて、空に虹色の光がカーテンのように広がって。
広がった、と思った直後に砕け散った]
……へ?
[何が起きてんの、これ、と。
突っ込む余裕もないまま、ひらひらと舞い落ちてくる虹色の光の粒子を見上げる。
それが地面に舞い落ちた直後、あちら側の想いの欠片に異変が生じた。
唐突に灯るのは、紫色の光。
綿毛はこちらと同じようにふわふわと空中へ舞い上がり、そして。
かしゃん、と何かが砕け散るような音が響く。
それは、あちらとこちらの境界が砕けた音。
鈍色の花咲くトケイソウが色を一気に取り戻し、そして。]
ほい、預かりもの。
向こう戻ったら、なんかお返しするわ。
和菓子なら、美味いとこの宛あるんでねー。
[軽い口調で言いながら。
にぱ、と笑って袋を差し出した。*]
……ってと。
[周りとのやり取りが一段落した後。
潰れた兎の所へ歩み寄ってしゃがみ込む]
ぉーぃ、おま、いつまでも伸びてんなよ。
……てか、俺らどーやって帰ればいいんだよー?
[つんつんとつつきながら問うと、ぴく、とへしょれていた耳が揺れた]
『帰り道は』
帰り道は?
『帰る刻が廻って来たら開くよー』
……は?
『かえりたいときが、帰る刻』
『その時がくれば、開くのよ』
…………つまり、帰ろうと思えば帰れる、と?
[確かめるような問いに、兎はぴこ、と耳を揺らす。
それで一応、必要な事は聞けた、けれど]
……なー。
結局今回のこれって……なんだったん?
[もう一つ、聞きたい事があったから、それを問いとして向ける]
『…………ぁー…………』
いや、ぁー、じゃなくて。
『……おもいが、あふれすぎたんだよー』
は?
『不安、迷い、漠然とした恐怖。
そういう気持ちが高まり過ぎて。
穏やかな頃に戻りたい気持ちが高まり過ぎて。
全部飲み込む時流の津波が起きちゃった。
それを鎮めるには、特に強い想いの力を持つ人……具体的には、『時計に惹かれるくらい、強いナニカを持ってる人』の触れた『想いの欠片』が必要でねー』
……で、あれか。
お前に巻き込まれた被害者ばっか集めて、ってわけか。
『……ひがいしゃってなんだよー』
いや、実際被害者だろ。
……ったく。
お前、もう少しあれだぞ、説明しろよ。
説明足りねぇから、訳がわかんなくなるんだからな?
[なんて釘刺した所で聞くようには思えないが、そこは主張して。
わし、とふわふわの頭を乱暴に撫でてから、立ち上がった]
……やれ、やれ。
戻ったら、挨拶周り行かねぇとなあ。
[呑気な口調で呟いた後。
ふと、思いついて鞄を開ける。
引っ張り出すのは小さなスケブと色鉛筆]
…………んー…………。
[海と灯台、トケイソウ。
それが上手く納まる位置取り。
それを見つけると手早く手を動かして。
不可解だけど幻想的な世界の一部を切り取り始める]
……また兎手伝わされたー、なんて言ったら。
どんな顔すっかねぇ……。
[く、と笑いながら手を動かす。
写し取られる花弁の色彩は、どれも鮮やかに映えていた。**]
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