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――廃屋――
これでおしまい、っと。
ああ、やっとバカンスを楽しめる。
[たん、と端末のキーを弾くと画面に文字が走り始める。
猫みたいな背伸びをして、眼を細めた]
[床には<42>-<62>個の[カギ]が散乱している]
[プラスチックのおもちゃや、通常では複製不可能なものまで、様々な鍵が散らばっている。
細い腰にはじゃらじゃらと、やはり雑多な鍵束を下げている]
結構疲れちゃった。
いつもの秘書さん来るまで寝てよっと。
ふあ、あ。
[その場に突っ伏して眠る。
端末は閉じられぬまま、ずっと何かの文字を流し続けた**]
――廃屋――
[beep!]
[beep!]
……ん。
[端末から警告音が響いた。ディスプレイから文字列が消え、10分のカウントダウンが表示される。
ぱちりと眼をさますと、手早く退出の準備を始めた。ディスプレイには目もくれない。
やがて、メモを見つけると]
ククさん来てたの?
相変わらずどこにでも入ってくるなー。
[彼女すら閉め出せる錠をいつか作ってやろうと、にやりと笑う]
[口紅も眼に入ると、あ、と驚いて]
わー、ちょうどこの色切れてたんだよね。
ボス大好き! 大事に使うよ!
[満面の笑みを見せて、大切そうに口紅を懐にしまう。
続くメモの言葉には、首をかしげて>>61]
豆腐? ロロさんが? 何かの暗号?
んー、『漢なら大豆<5>個くらい生でいけ!』ってのはどうかな。
[別の小型端末から、ウルスラ宛にメールを送信する。
最後に『鼠取り設置完了』と付け加えて。]
じゃ、そろそろでよっか。
[メモと、腰の鍵束をすべて外して床に放る。
任務用に複製した鍵から、データチップを内包した玩具のものまで、他の趣味で作った鍵の中に埋もれた]
――廃屋外――
[扉を出て、小走りに近くの茂みに身を低くする。
唯一右手だけを銃の形にして、廃屋へと高く伸ばす]
ばーん。
[緊張感のない声が響いた直後、爆音と衝撃が周囲を襲った。
身体を伏せて第一波を耐えると、ふたたび顔を上げた]
たっまやー!
[悪戯っ子のような無邪気な笑みを浮かべると、そっとその場を立ち去った]
[サル・カイーダを擁護する民間企業のサーバに押し込み強盗を仕掛けた端末と、各種物証は炎の中。
やがて分かりやすく残した通信記録から、この場所がばれ、テロ組織の作業員や諜報員が押しかけてくるだろう]
[それをどうこうするのは、自分の仕事ではないけれど。**]
[埃と羽虫が飛び交う屋敷を、無駄に膨らませたスカートで闊歩している。唇には、先刻のルージュをつけて。
朽ちた[星の間]で、[コルト・ガバメントモデル45口径]や鍵などを見つけると顔を輝かせては、回収している]
やっぱり廃墟巡りって落ち着くなー。
仕事と違ってスリルがないけど、これはこれで違った愉しみがあるよね。
[独りごちて、床に座る。フリルが汚れても気にしない]
[割れかけた天窓からは、無数の星空が見える。
わ、と声を出して、子供みたいに目を輝かせた]
いい掘り出し物もあったし、こんなものも見られたし。
これぞバカンス。って感じだよね。
今度ここに器具運んで、鍵作れないかなー。
あ、今度は柔らかい鍵なんてどうだろう?
仕事で使うような流し込む奴じゃなくって、例えば軟骨みたいな。
[趣味のアイディアを呟いてはメモして、時間を潰していた]
あ、ボス!
[0026から渡された腕時計は、チェーン部分だけ華美なものに変えてあった。
そこから流れ出したいつもの声に、じっと耳を澄ませる]
えっと……A{4},B{4},C{4},D{5}、ね。
北京に単独で、会社員として潜伏ね。
アジアもたまにはいいよね。
名前は……、
[渡されたパスポートを見た]
ケ藍野、と。
休暇が終わっちゃうのは寂しいけど、テロリスト退治も愉しそうだね。
目立てないってのが残念だけど。
この時計も元に戻さないとなあ。
[名残惜しそうに、いじくった腕時計を見た後、ふたたびウルスラに視線を戻し]
そういえば、結局ボスって豆腐好きなのかな?
あっちでいいもの見つけたら、差し入れしてあげようかなって。
[冗談とも本気ともつかない軽さで問いかけた]
むー。いろいろお礼したいのにな。
……ナンバが上がればいいのかな?
[色々と思案しつつ、パスポートを受け取った]
じゃ、ククさんまたね!
あ、これ使わないからあげる!
[屋敷で見つけたコルトを渡した後、現地へと向かった*]
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