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[どん
小さな衝撃の跡
驚くほどすんなり、ドアは開いた
ただ、そこに広がっていた光景は]
…――――!
[血飛沫舞い散った、理科準備室]
見るな、お前ら
[言葉に、力は入らなかったけれど]
[ヨシアキの呼び掛けを聞き、少し後ろに下がる。ヨシアキが突撃した事で、扉は開かれた。彼が室内を見るのに続けて、少女も室内を覗き込む。制止の声が落ちたのは、ほぼ同時だったか]
……セイジ……。
[呟き、立ち尽くす。
セイジの姿は其処から消えていた。室内には血の臭いと、床を彩る血の色のみが残されていた]
――言葉は契約、願いは呪力
祈りは糧にして、恐怖は甘味
理を知らぬ者に、亡者の手を――
[そう刻まれた赤い文字を、黙って見つめ]
…―――
[へなへな、腰をおろしてしまうほどに
部屋の赤は、インパクトが強かった
生々しかったと言うべきか]
どうしよ…―――
[背中が、重い]
どうしよって……
どうにかせんと、……
[声は力なく、半ば独り言のように。実際、どうすればいいか、どうするべきかなど、全く判らなかった。暫くの間、その場に佇んだままでいて]
……とにかく、動かんと。
此処にいたって……何もならん。
出られる場所、出る方法、探さんと。
[それから、振り返って言った。対抗出来ない。閉じ込められた。検証だけが。セイジの言葉の断片を、頭に過ぎらせながら]
どうしよ…―――
少なくとも二人、目の前でいなくなった
セイジは、体すら残ってない
理科準備室には、他に出入り口なんかない
[つまり、消失
七不思議に関わる場所で]
どうしたら、いい
動くって、何処へ
いなくなった奴等を、置いて行くんか
…――――
いや、ええ
マシロ、ナオ、タカハル
お前ら、出られる場所さがせや
俺は、居なくなった奴等、探すわ
[ふらり、立ち上がった]
トイレ、なんやろ?
アンと、一年のシンヤ
このままやったら……皆、消えるだけやろいね。
別に消えた皆を放っとけなんて言っとらんわ。
それやって、動かんと駄目なんは同じやろ。
[ヨシアキに向き直り、眉を寄せて]
……だら! 何言っとるん!
そんなんしたら、今度は……
[怒鳴り付けるように言ってから、語尾は霞ませ]
――大だら。
どっちも、一緒に探せばいい話やろいに……
皆で動くぞ。はぐれなさんな。
[ナオとタカハルにも向けて言い]
アンは、トイレに行ったって……
セイジは、言っとったけど。
シンヤはわからん。いないって……これも、セイジが、言っとってんけど。
なんなん
マシロ、俺はただ、お前が…―――
[心配なだけなのだけれど
でもどうせ、言葉にした所で何も変わらない
こいつは、行くと言ったら行く]
ちっ…――――
[だからこそ、守らなくては、今度こそ]
そうか、セイジが言ったか
なら、行ってみよ
[床にある、文字を読んでみる
言葉は契約…か]
嘘、嘘だ。学校の怪談なんてあるわけないんだみ。
よ、よーっし、つ、次、次こそありえないじぇって……――うふ、は、あ、はは。
[そうでも言わなければ、言葉にしなければ、崩れてしまいそうだ。
一部始終を目の当たりにして、しかも自分が被害者になる所だったと言う事実に、脚が大きくがくがくと震える。]
よ、よっし、さが、ささ、探すんにな。
トイレ、だっけかにゃ。
[恐怖で良く判らない笑いが、勝手に漏れる。
暑く重苦しい空気に乗って、鉄臭い匂いが流れてきて、自然にぺたん、と尻餅を。]
……あり?おっかしーな。立て、立てにーぞ?
…――――
ナオ、無理すんなや
[へたり込んでしまった、ナオ
抱き上げようと、手を伸ばしたけれど]
誰も、笑ったりせんから
無理、すんな
おいね、まずトイレから行くか。
[言いながら、七不思議の一つが思い出されたが]
この字。……多分、霊や何かが、残したんやろうな。
霊、……多分……七不思議とか、起こしとる奴が。
もしかしたら、セイジには……
……や。それは、今考えても仕方ないか。
[首を横に振ってから、改めて字の方を見]
……セイジが消える前。
連れて行ってくれって、セイジの声が聞こえたんよ。
中であったんが、どんながやったのかはわからんけど……言葉やら願いやらっていうのは、もしかしたら、それなのかもしれん。
後は……何やろうな。
「犯人」が、楽しんどるみたいな……私達を獲物にしとるみたいな。
よくわからんけど、嫌な感じや。
……ナオ。落ち着きまっし。
[へたり込むナオの姿に、其方を見て、眉を下げつつ声をかけた。錯乱しても仕方ない状況であるという事は、解り切っていたが]
じゃまないさけ。
[大丈夫だなどと断言出来ない状況でもあるという事も、解っていたが。とにかくそう言って]
…――――
そか、言葉にしたら、そうなるのか
[文字の意味を素直にとれば、そうなる
もしそうなら、言葉にすれば良いのか
想いを口にすれば、形になるのか]
マシロ、言葉にしたら、何かが形になるなら
言葉にしたら、ええんかな
願い事って奴を、さ
うに、大丈夫、大丈夫、大丈夫―――
……悪い、に。
[ヨシアキの手を借りて、やっとの事で立ち直るけれど、それでも机に手を突いてなければ同じ様になりそうで。**]
ん…――――
落ちつくまで、ここにおろうか
[ナオを立たせて、手を離す
背をさすってやるのが、本当は良いだろうが
年頃の男子は、女子の体に触る度胸がない]
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