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―自室―
[横たわるコールドスリープ用カプセル。こつり、失人はそれを蹴る。カプセル以外には何もないその部屋で、自分を呼ぶ何かを探していた。こつり、こつり、カプセルを蹴る。しばらく続けると、何かをしまう部分がある事を知る。自分が眠っていた時の、枕の位置。その真下にあったそれを引き出して、中に入っていた物を出してみる。入っていたのは、アルバムと、一枚の紙。それには文字が書いてあり。]
Don't forget
[もちろん、彼には文字など読めない。それでも]
……何か、大切な言葉だった気がする*
…死?
[聞こえてきた言葉を、ぽつりとつぶやき返す。]
ここは、安らかに眠るための場所?
…目覚める事の無い、眠り…
[空を見上げる]
確かに、快適そうだ。
[…ふ、と小さく微笑む。]
テンマは、影みたいです。
眠ったひとは…こんなふうになるですか。
[ついでレンへ視線を移した]
見えるもの、聞こえるものがあるかないかの、ちがい…。
眠ると…
レンたちに声が、とどかなくなるですか?
それ、は――
[瞳が見開かれる]
[誰にともなく尋ねたのは――こんな事だった]
[つと俯く。
前髪が表情を隠した]
いえ…。
テンマは。眠れるひと、ではない。
少しずつしか眠れない、彷徨うひと、なんですね。
[ポケットの鍵に触れる。
鍵穴は…ここなのだろうか。
瞬間。恐れたみたいに、一二歩後ずさる足のわけが、ルリ自身でもわからない。
かわいた白を、握りしめる]
[やがてライデンの後を追うようにして墓碑を去った*]
-2階-
[つと窓から外を見る
墓碑群に人が集まっているのが見えた]
儀式みたいね。
[複雑な機構のカメラを構え
ファインダーを覗き
慣れたしぐさでシャッターを押す]
[しばらくして、
もうひとつののっぺりとしたカメラを構える]
[背面のディスプレイを覗きながら、数枚の写真を撮る]
デジタルは、結果を撮ってるみたいで、味気ないわね。
[撮れた写真を確認しながらぽつり]
[カメラの底面には"caname"と彫りこまれている]
みつかっちゃったみたいよダーリン。
[カメラを手にしてから、初めて笑顔になり、小さく舌を出す。
そしてユウキに手を振り返した]
瞬間を切り取って集める。
詩的な言葉ね。
[質問にしばし考え込む]
──あいいろに、見えたわ。
綺麗に写ったかは、現像してみないと分からないけれど。
[複雑な機構の──古い機械式カメラに触れた]
あいいろ、か。
できあがったらみんなでみるといい。
そこにしかないはずの瞬間が取っておけるなんてすてきなことだよ。
[そう言って、屋内へ]
そうね。
焼きあがったら、見せるわね。
[またねという風に手を振り、ユウキを見送った]
夕陽だから、なのかしらね。
[ガラスに反射する夕陽を見つめながら]
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