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ウサギさんが正しいかどうか、か。
[俯いたままのバクの頭、一度躊躇ったが、繋いでいない反対の手で、そっと触れると撫でて]
ススムさん。
どこか行きたいところはありませんか。此処がどこかもわかりませんし、行きたいところに繋がっているかもわかりませんが。
[風が吹くと、曼珠沙華たちがざあと揺れた。ゆらりはためいた浴衣の裾から、色鮮やかな蜻蛉が一匹宙に飛び出して]
ほら、案内してくれそうですよ。
[撫でられる感覚と、色鮮やかな揺れる地面、様々なものに瞬いてから顔を上げた]
海で、花火をするって約束をしてたんだ。
ばあちゃんと。
[言って、指先はマシロの浴衣の裾を掴む]
花火、いいですね。
[浴衣を掴む様子、今度は、笑わない。気合いを入れるように片腕でガッツポーズして]
よし、『ススムさんのおばあさん』を目指しましょう。きっと会えますよ。
[うん、と頷いて歩き出す。蜻蛉は先導するように飛んでいく]
きっと、会えます。約束したんだから。
[マシロのガッツポーズに、顔をほころばせた]
約束を、破ったのは俺なんだ。
[それ以上説明することはなく、蜻蛉の後を追いかける*]
マシロ姉は、誰か会いたい人はいるのか?
どこか、いきたい所は?
約束破ったこと、後悔してますか。
[浮かべるのは、ほろ苦い笑み]
私も、あります。もう二度と、約束出来ないことも。
[バクの問いに、んーと思案げにして]
そうですね、それなら、姉さんに、かな。
それともうひとり、会って、言ってあげたいことがあるような……
[振り返ると。あの日、陽炎の向こうに立つ人が見えた気がした]
例えば。
[そんな呟きを漏らしたのはいつだったろう。
足下では曼珠沙華が揺れて。
視界の先には極楽蜻蛉が飛んでいる。
左手はバクの右手と繋がって。
ふと、本を持っていないことに気が付いた]
放っておいたままではいられないような後悔を。
[例えば。
もうこの世には居ない姉に告げなければ行けなかった言葉を]
今、昇華することができるなら。
[告げることができるなら]
それはあながち、「間違っていること」ではないかもしれません。
いずれにしてもそれなりに、代価を払う必要があるのでしょうが。
[それが話の落ちかもしれない。
岩場に置いてきてしまった本を、思う]
いずれにしてもこの場所で、ススムさんのおばあさんに会ったなら。
どうしてきたと怒られそうですね。
[ちゃんと迎え火焚かんと! と口うるさく言う姿を思い浮かべてくすりと笑う]
『ちゃんと迎え火焚かんと!』かあ。
[それはもしかすると、自分の祖母か、あるいは姉の、言葉だったかもしれない。
前を飛ぶ極楽蜻蛉が、羽根を休める。
気が付けば、見慣れた通りに、おがらと、お皿。
ぱち、と瞬きをしてから。
どうする? とバクを見る。ほんのりと口元に*笑みを点して*]
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