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[摂りこまれたら、食べられない。
当然のように、心配するのはそちらの方]
…カレー味……、かな?
[思考が何処かずれているのに気付いて、ひっそりと心の裡だけで笑う。
飢えている。そのために意識は逸れる]
人狼に食べられた人も、窯に放り込まれた人も、行き先は同じなのだろうか?
……わからないけど。
一人で彷徨ってるのは寂しいので、同じ場所に行き着くことにしようかな。……とか言って。
[痛む額を押さえます。]
あいたぁ。
……ね、出して?
ここから、出して。
[壁をどんどんと両手で叩きます。
堅く温かな感触が手から伝わってきました。]
[『知りたかったことは何でしたか?』という、静かな声を聞いた気がした。目を開ければ、既に「ここ」にいた]
何……、ここ。どうして?
[結局何もわからなくて。生きていた時と同じ疑問の言葉を口にする]
うむ。ビセちゃんは、窯の中にいるっぽいな。
どうしよう。どうしよう。
自分の死体を発見するという、シュールな展開にしてみるか。うむぅ。悩むぅ。
[目の前には、歪んだ世界。煉瓦作りの建物の内部は、確かに昨日まで自分がいた場所だったのに]
わからない。
[この違和感の正体がなんなのか。どうして世界がいびつに見えるのか]
え?
[その時、視界に飛び込んできたのは]
オ……オレだ?
[無残に引き裂かれた、自分の、死体、が。すぐそこに横たわっていた]
どうして……。
[口をついて出るのは、愚かしくも、また同じ言葉だった]
[ぱち、ぱちと何かの爆ぜる音が聞こえてきます。]
……やだ、何か熱い。
[額を流れる汗が、ぽた、ぽたと地面へと落ちて行きます。
落ちた汗がじゅう、と嫌な音と臭いを発します。]
[炎はなく、ただ蒸し暑い。布の焦げる臭いが充満します。]
やっ、助けて。
……神様っ――
[喉がからからに渇き、流れる涙は頬を伝う前に干上がります。]
死んでる……よな。これは、完全に、死んでる。
[自分の死体を見つめながらそう呟く自分に、一種の滑稽さを覚えたけれど]
いや。笑えないよ、これ。
[呟く顔に表情は浮かばない]
[部屋に誰かが入ってきた様子だけれど、自分の居る世界と、その誰かの居る世界は、完全に隔たれていて]
……届かない。
[伸ばした手と、その人との距離は、永遠]
[ポルテに触れられなかった手を、じっと見つめて]
誰が、こんなことを……って。
それは、多分、ヒトならざるもの。
[自分を引き裂いたあの人は、確かに人間ではなかった……と、記憶を辿るけれど。死の直前の記憶は曖昧模糊として]
オレ、寝てたんだよな。そういえばさ。
[その瞬間の恐怖を免れたことは、ほんの少しの幸いだったのかもしれなかった]
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