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[狼の遠吠えが聞こえる。耳を打つ。
あてもなく歩くときはいつもそうするように、瞳を伏せて雪に足の痕をつける。
片側には村の灯、もう片側には森の影。極光の下伸びた影が、揺らぐ]
信用、か。
疑いがかけられた時点で、信用も何も無いだろうと思ってしまうのは――流石に薄情だろうか。
[受け止められる先のない言葉は、静かに宵闇に溶けて]
…む。
[ざり、と雪をかき分ける音。振り返ると、杖をもった人影がそこに居た。
杖から音は聞こえない]
やあ、君か。
奇遇だな、こんな所で。
[眼帯の男。己の所在を伝えるべく、はっきりと声を出した]
…いや、邪魔ではない。
むしろ、いろいろと持て余していたところでな……気がついたらこんな所に来てしまった。
[首を傾げる彼に、頷いて答える]
君こそ、何かしている最中ではないのかね?
何を考えるべきかを考えている。
……答えになっていないな。
[肩をすくめて、笑う。
語尾を飲み込んだ相手の様子には、特に頓着する様子を見せずに]
三人、対抗するまじないを扱える者がいると、長老は言ったな。
力を、うまく動かし利用できなければ――狼を操る者も、つまりはまじないを扱うのだろう。
[自身に言い聞かせるように、呟き始める]
人間の腕だけでは、あの大群には勝てんよ。
[その言葉だけは、妙に確信じみていた]
…ああ、まあ。そんな所だろうな。
[信じるか疑うか。
男の言葉に、ようやく答えを得たとばかりに]
己が誰を信じ、誰を疑うか。
そして、どう――疑いを晴らすか。
[ふと思いついたように言葉を切り、すうと息を吸い込む]
『私は狼など呼んではいない。信じてくれ』
――言葉なぞ弱いものだ。皆、そう言うに決まっているのだから。
[ちらりと、口元を掠めるのは挑発的な笑み]
そうだ。
結局、我々人間には言葉を使うくらいの力しかない。
――まじないの心得があれば、また違う思索に耽ることもできるのだろうが……
[マティアスの言葉に、静かに同意する。
目を見ればわかる。
彼の眼帯に、半ば反射的に目を向けてしまう。目そのものが、見えない]
どうだかな。
だが、見えてしまう者も居るのかもしれない。
愉しい?
……さあ、それは……それはどうだろうか。
[曖昧に笑う。
否定も肯定も、なく]
もしも私が巻き込まれず、ただの傍観者であったのなら。
ひょっとしたら、愉しんでいたかもしれない。…傍観者で、あったなら、な。
生贄を、運ぶ列が。
あれは、湖の方だな……
[背後からの問いかけに、短く答える。
足を止めることはなく、しかしゆっくりと]
そう、ドロテアだ。
[眼帯の男に、小さくうなづいて。
足元の雪を音をたてて踏み分けながら、灯へ――行列へとゆっくりと近づいていく]
[光がはっきりと見えるようになった処で、足を止めた。
生贄の娘はどこにいるのだろうと考えながら、行列をじっと見つめている]
[灯が去れば、また足を動かして。
そっと、行列を追う。
供儀となる少女の貌を――生きている時の貌を、せめて目に焼き付けておきたい。たぶん、そういうことだ。
開けた場所に、行列はたどり着いただろうか。
あくまでも遠巻きにそれを眺めながら、視線が探すのは捧げられた少女のすがた**]
―湖の畔―
[松明の灯が見えなくとも、男は湖の畔まで足を延ばしていた。
取り囲む狼たちの気配が強くなる。あまり長居するわけにもいかぬだろう。
だが、この時期にのみ出来る雪原と、そしてそこに捧げられる娘を最後に一目見ておきたかった]
……感傷か。
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