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[中庭のベンチに座り込み、
人形に話しかける行為は続く]
あたしゃ婆になっちまったから、もういいんだけどね。
ああ、そうそう。
今日は看護士さんでも先生でもお話して……
それから、お許しが出たら海に行きたいねェ――
子供誘って貝殻拾うのさァ、貝殻やら……わかめやら……
そんで拾ったらァ……また……、……
[途切れ途切れていく会話を拾う相手は、今はまだ、セルロイド**]
院内
[診察室に戻り、幾許かの書類作成を終えてから、検査室へ篭って数人の患者の検査立会いを行った。
長い期間当直医が続いていた。当直室に入ってすぐ、緊急搬送の一報を受けて救急救命室へと急いだ。
顔など、確認する猶予はなかった。『救わねば』その使命で頭は一杯だった。
ただ、看護師が繰り返す『音羽沙良さん、わかりますか、オトハさん』というその名に驚愕する。
患者は元歌手のオトハで、この病院からの帰りに事故に遭ったのだとの説明は、右から左へ流れていった。
先程、ほんの数時間前に見た、あの姿――]
――オトハさん、……頑張ってください、
……っ!
[聴覚が弱い事は知っていた。故に、頬を擦って触覚を与える。
救急医療は忙しなく続いていた。けれど、医療機器は無常な結果を音として伝うだけ。
彼女は遂に一度も、意識を取り戻すこと無く還らぬ人となった。]
――ご臨終、…です。
[形式的に瞳孔を確認し、死亡時刻を音と成す。
紡いだ響きは僅かばかり、震えを帯びていた。
全ての処置を終えて当直室に戻る刹那、あの澄んだ美しい歌声が鼓膜を掠める。
激しくかぶりを振り、聴き馴染んだ歌声から耳を塞いだ。
父の形見の腕時計を、それを付けた左手首を、必死な形相で握り締めて]
僕の、せいじゃない……、
壊れたら治せばいいだけじゃないか……、
ねえ、そうでしょう、父さん……
[壊れた時計を掴みながら、虚ろな瞳を泳がせた。
漂う死のかおりに、息が詰まりそうだった。]
[そのままぼうっとしていたところ、再び何となく歌が聞こえてきたような気がしてふと我に帰る]
…あれ。気のせいかな?
…確かに、あの声だったのだと思ったのだけど…
[取り敢えず、ずっと此処に居ても仕方ないかと思い、…は一旦自分の病室へ。]
303号室
[自分の病室へと戻ってきた。
前に入院した時はまだ相方となる人が居たから良かったのだけど。
今回はこの部屋には自分一人しかいない。]
話せる相手が居ないってだけでも、結構暇になっちまうな…
[自分と同年代で入院している様な人もこの病院にはそう多くは無い。
見舞いに行こうか、なんて考えが頭を過ぎるものの、自己満足になるだけだろうと思い直し、ベットに潜り込んだ]
朝:603号室の前
[仮眠は全く取れなかったけれど、朝は静かにやってくる。
朝食も録に喉を通りはしなかったけれど、ビタミン剤と栄養剤の注射を打った。
それから、父の形見の腕時計を一番近くの時計屋へ修理に出した。
古い舶来品故に部品が上手く噛み合わないかもしれないとの返答に眉根を寄せたが、夕刻までに結果が解るとの反応に、ほっと安堵の息をつく。
院に戻ると書類作成や引継ぎを終え、回診へ。
603号室の担当医は公休の為代理だ。
昨日、様子を見に来れなかった事もあり、自ら進んでこの部屋を訪れた。]
黒枝さーん、入るよー。
[思春期の少女の病室は、特に注意して扉を開くことにしている。
返答が無ければ最後にしようと、今はその手前で*佇んで*]
[冬のはじめ、午前6時。風は今日も強い。
ガタゴトと鳴る窓の外には低い雲が垂れ込め、海の色はわずかに深く。
カーテンの中、千夏乃は夢うつつでどこかから聞こえる歌を聞いていた。透き通った、どこか懐かしい歌声。あれは誰の声であったか。思い出せない。
不意にがたん、と一際大きく窓が鳴って、千夏乃の意識は急速に微睡みから引き戻される。
辺りは白、白、白。
ここはどこだっけ、と、一瞬*考えて*]
…そっか、わたし、入院したんだっけ。
朝
[眠りに落ちる刹那、ああ、オトハの声だ、と気づいた。病院で聞いたよりも、CDで聞いたよりも。ずっと美しい妙なる調べ―――]
ん、………ふぁああ
おあようございます…
[朝。大きな口をあけて看護師に挨拶をした。何度目でも、入院最初の朝は慣れない。家にいる時の生活リズムが抜けきらない。
熱を測って、血を調べて。今日の検査予定をぼんやりと聞いて。朝食までの空いた時間、ベッドに横になってうとうとしていた、が]
………ん?
結城せんせ…、ちょぉぉっと待って!!
[飛び上がるようにして靴を履き、ベッドを適当に誤魔化した。髪を撫で付けて、入室を促す。さっきは寝ぼけ眼で顔を洗ったから、後ろ髪がハネているが気づいていない]
3階・314号室→談話室へ
[なんだか喉がかわく。辺りはもう、冬の空気だ。
千夏乃はそっとベッドを抜けて、羊を抱えて忙しそうなナースステーションを横目に見ながら談話室へと向かう。見咎めた看護師には、お水飲むだけ、と答え。]
3階・談話室
[誰もいない談話室。誰かが消し忘れたのか、薄暗い部屋の中、テレビだけがチカチカ光っていた。
千夏乃は明かりを点けてマグカップに湯を注ぎ、いつもの窓際の席に座る。]
[ミュートされたテレビの音量を少し上げる。
流れていたのは全国チェーンのスーパーのコマーシャル。もうずっと前に亡くなった歌手の、オーボエの音色のような耳に残る歌声。
夢の中で聞いた歌を思い出そうとしてみたが、なんだか頭にもやがかかったようで、思い出せなかった。冬の朝の空気のような透明度だけが記憶に残っている。]
"ききたいな あなたのうたを"
"冷え切った心 あたためるミルク"
[口ずさむのは、母の大好きな歌の一節。
そうしながら、羊の縫いぐるみを抱きしめて、顔を*うずめた*。]
[午前の院内は人々の活気を肌で感じ取れる。
カルテを手にした左手の手首を一度軽く握り、603号室へノックと挨拶を送った。
聞こえてきた元気な少女の声、慌てふためいた様子は扉を開く前から目に浮かぶようで、沈んだ心に生気を与えてくれるようだった。]
もういいかな、入るよ。
[促され、静かに扉を開いて「おはよう」と微笑んだ。少女の顔色は悪くない、後ろ髪がはねているなんて、患者ならば常の事、寧ろかわいいアクセントに映った。
もしかすると少女は出迎えてくれたのだろうか。寝台近くに佇んでいるのなら、そっと肩へ触れて寝台を示し]
横になってて良いんだよ?
それとも、寝てるのももう、飽きたのかな?
―朝―
[気が付けば朝だ。外から歌が聞こえてきた気がした。
一人の部屋は寂しい。無菌室という場所だから、仕方がないのだけど。]
誰かお見舞いとか来てくれるといいんだけどなあ
[窓の外の海を見ながら、そう呟いた。5階の窓から見える景色はなかなか綺麗なのだけど。]
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