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[本文に指定の文章を入力し。]
宛て先不明で…送れるわけ…、
[無機質な音と共に、送信完了を告げる画面。]
は…?
これで送れたっていうの…?
まさか…本当に…?
[テストとして送った文章。
けれど、彼がもし死者でなかったとしたら。
何が起こるのだろうか。
窓から外を見遣れば、雪が天から舞い散り始めていた。]
[再び舞い落ちる雪。
町はまた色を白へと染め上げていく。]
あの美夏って子…国本と一緒にいるのかしら…。
メール…すべき…?
でも、もし…。
[死者はこれで天に還る。
じゃあ、生者は?
天に間違えて連れられるなんてこと――――。]
あ…あるわけ…、ととと、とりあえず…。
[私服に着替えて、町へと飛び出していく。
携帯だけは忘れずに。]
―回想終了―
―道―
[街中を走り回った。
途中で少し休憩もはさんだけれど。
誰とも会うことはなかった。
道ですれ違った少年とも会わない。
"もう誰もいない―――――?"
そんな不安が脳裏を掠める。
息を吐けば白いもやが昇っていく。
走って息が切れ、顔も上げられない。
ただただ苦しい呼吸を繰り返して。
息が整うまでその場でそうしていた。
ジーパンに履き替えて正解だった。]
[兄がいなくなった日も雪だった。
不良生の兄。
優等生の妹。
両親の期待は自然と自分に向き。
兄は家にいなくなることが多くなった。
双子という特別な関係だったからだろか。
そうなってからの兄とも、己は仲は良かった。
兄にとっての家族としての居場所は己だけであり、過度の期待で押し潰されそうになっていた己にとっても兄は唯一の家族であった。]
――――ハァ、ハァ――……ハァハァ…。
[塾が終わってから外に出ると銀世界が広がっていた。
溜息をつき、兄に迎えにきてもらおうとメールを。
それの了承のメールの後、空を見上げながら待っていた。
突然鳴った携帯は兄の事故を告げるもの。]
[兄はなかなか来なかった。
こんな雪の日に迎えを頼むのはやめればよかったのか。
そんなことを思い始めたとき。
突然鳴った、その携帯の音は。]
―――――、ハァ、ハァ…。
[また息が切れて空を見上げる。
雪が顔にあたり、そこだけやけに熱く感じる。]
………………………。
[走って、走って、走って。
辿り付いた病院には変わり果てた兄の姿。
車との正面衝突。
白いビー玉のついた携帯が視界に入る。
ディスプレイはひび割れており、外側は血に塗れている。
真っ黒な画面は、何も映し出すことはなかった。
ただ、ビー玉だけが照明を反射し光って。
キレイに、キレイに、その存在を主張していた。]
[兄の命を奪ったのは他ならぬ家族なのだろう。
自分たちはその十字架を背負ったまま生きねばならない。
それは罰でも何でもなく、義務なのだ。]
…………………っ。
[携帯をぐっと握り締める。
その先に光漏れる1つの店。
通りの向こうから中を見れば人影が見える。
2人いるだろうか。]
―――――――ハァ、ハァッ…………。
[兄の声が聞こえる気がした。]
[切れる息は空へと昇る。
兄は今、何を思っているだろうか。
そもそも死者は何かを思っている、なんてこと考えること自体が生者の思い違いかもしれない。]
…………………。
[携帯にぶら下がる2つのビー玉。
顔の前に持ってこれば、それが揺れた。
1つを覗けば青い世界。
これは、きっと息苦しく生きる己の世界。
もう1つを覗けば。
澄み渡った、けれど不明瞭な世界。
これは、兄の世界なのだろう。]
[透明なビー玉の中の世界。
そこにいる人間は、ただ1人きり。]
見つけた…、やっぱりね…。
[ビー玉の中にいるのは。
学生服の少女ただ1人きり。]
…………………。
[あとは無、ただ。]
…………………。
[深く吐いた息は白となり*空へ昇った。*]
[デンゴが眠ると言ったなら、押入れから布団を探し出し、敷いて寝かせるだろう。
少年が寝ている間、眠る事もできずジュンタの携帯を握りしめたままで。
ふと思い出す。雪が天へと戻っていく中、彼が自慢できるかもと言ってムービーを撮っていたのを。]
勝手に見てごめんね。
[もうそこにはいない彼にぽつり謝罪の言葉を呟き、フォルダを開いていく。
一番上にあるムービーを再生すれば、変わらぬ彼の声が聞こえて]
元の世界に戻ったら自慢するって言ったくせに…ばか…。
[ぽつり呟く。]
死者の想いを還せば…戻ってくるんだよね?
[そこにはいない彼にそう問い掛けた。]
-回想・コンビニ-
[何故、どうして。]
――っ、
[繰り返し、溢れる思いは温もりを
感じられない彼の体に触れ、凍る。]
――、
[何故、彼で在ったのか。
何故、温もりを、感じ無いのか。
何故、彼はそんな言葉を紡ぐのか。]
[思いを堪えきればせず、涙となって流れ。
其れを隠すように俯き、黙り込む。]
[ズイハラは何か言葉を紡いだろうか。
其れに対し、答える余裕を持ちはしなかった。
塞ぎ込むように、両膝の間に顔を埋め。]
――。
[黙り込む。]
――。
[彼は自分に危害を加えたりするだろうか。
……それなりであれば、彼を恐れもするのだろうか。
…しかし、危害を加え、果てに殺されるとしても。
一度に抱えすぎ、麻痺気味の心は黙り込むだけ。]
……。
[その体勢のまま。時折、鼻を啜る音が響くか。
数時間の時を、コンビニの其の場所で過ごした。]
-回想・了-
…もっと早く、逢えてたらな。
[長い沈黙のあとに、こぼれたのはそんな言葉。]
[長くは居られない。
けれど、連れて行くなんて出来なくて。]
なんで…だろうね。
[目を伏せる。
聞こえるざわめき、遠く救急車のサイレン。
アスファルトの固い感触と、肩へと舞い降りる冷たい雪。]
[手の中の携帯は、赤い飛沫に汚れている。]
[彼の微かな謝罪が聞こえた、か]
――、っ
[聞けば、
なんとか整理をつけられそうだった気持ちが
再び、揺れ、涙となり降り積もりそうになる。]
ズイハラ、さん、は…
[それでも、尚、言葉を紡ごうとする]
っ、
[問いかけようとして、言葉に詰まる。
手の甲で、ぐいっと瞳を拭い]
ズイハラ、さんは…
もう頭、の痛み、取れ…ましたか?
[一生懸命に下手糞な笑顔を作り]
御腹、すい、て……ませんか?
[ついで、たどたどしくも、問いを続け]
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