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[かけられた声に振り返ると同時、驚いて息をのむ。平静を取り繕おうとしたが、隠しきれなかった]
…………っ!!
[知り合いにこんな格好見られるなんて、一番避けたい事態だったのに。よりによって、0011と出会うなんて]
あぁ、ええと。
何のことでしょう。お兄さん?
[ふわりと曖昧に笑んだまま、見つめ返した]
[違う体型、違う声。
ちょっとずつ近寄りながら耳の形を確かめようと。]
悪ィ、違うんか。そやな、あいつは女と違うし。
――どこかの路地裏・NY――
まいったな。また、汚れちゃった。
こっちは、お気に入りなのに。な。
[ぜ、と肩で息をつく。脚がふらつき、壁にもたれ込んだ。
鉄錆の臭いが鼻につく。先刻と異なり、自分の血のそれも混じっているのが不快だった。]
[幹部Bの情報を捜して'[魚市場]'へと、捨て身で潜り込み、脱出したところだった]
――私は、東京のアジトで新たな指令を受け取った。{3}{5}(昨日のガセの分)
心ならずも、最初の4文字で事件の重要性を知った。
私のコードは0031、組織と契約する際の条件として私が要望したものだ。
そう、掛布が阪神に入団して以来の私のラッキーナンバーだ。
こんな仕事をしていれば、いつ美人の死神が訪ねてくるか分からない。
げんを担ぐのはごく当たり前の話だ。
だが、>>#10だった。
掛布と同じ時期で33番といえば、暗黒仲間のダイエーにトレードされた大野久が思い浮かぶ。
……ふっ、ヤバい仕事になりそうだぜ。
[近づかれれば後ずさる。けれど次第に、距離は縮まる]
そう、きっと人違いですよ。
だから、こ、来ないで………。
[困ったような消え入りそうな声で呟いて、俯いた。揺れる髪からは耳が覗いている]
[壁際に追い詰め、両手を壁につけて退路を経った。
髪から覗いた耳に唇をつけて囁く。]
エートゥ、やろ。
生きとったんやな。・・・良かった。
[安堵の吐息を吐く。]
最期かもしれへんから、えっち、したい。
・・・縁起でもあらへんな。最期かもしれへんなんて、いつもやのに。
["魚"とは魚雷の意。
例の暗号>>#5を同業種の不仲と読んで、軍関係の研究所の一端にクラッキングをかけた後潜入した。
突入した先で入手した資料はデータチップに入れて、本部に繋がる貸し金庫に預けた。誰が敵か分からぬ今、誰にも連絡を取る気はなかった]
っ……。
[汚れていない肌着の一部を引きちぎり、左腕の止血に使う。
充分な攪乱後とはいえ、一介の施設に単独で潜入するのは無理があった。
は、と自嘲混じりに口角を吊り上げて、無理矢理気力を保たせる。
まだ、死ぬ気はない]
[今回もまた物乞いのふりをしろなどといわれたらどうしようかと思ったが、今度は官僚だそうで。ほっと胸をなでおろす。]
……あれはもう勘弁願いたいですね……
[ふう、と一つため息をつき。空を見上げた]
いやあ、良い天気です。
[耳に触れる唇にびくりと身を竦めて]
……な、何でばれちゃうかなぁ。あは。
[相手の言葉に瞬いた後、ちらりと目を伏せた]
んっ。でもねぇ。
僕、女の子ではやったこと無いんだけど。
[腕を伸ばすと指先に0011の髪を絡めて、彼の肩に頭を預ける]
優しくしてくれないと、泣いちゃうかもしれないよ?
[冗談みたいに、くすくす笑った]
[ふいに、脳裏に浮かぶのはラウリのこと。
仲が良かった彼なら、あるいは]
…………、
[しばし考えて、首を振る。巻き込むのは避けたい。唇を噛んで、前を向く]
一人で。やれる。
寂しくもない。心細くもない。ナンバだけ小さくて弱い奴らとは違う。
そんなことじゃ、成果を出せない。
ボスに会えない。
[呟いて、路地を進む]
耳の形。人によって違うんや。耳たぷも、耳の穴も。
[耳たぷを口に含み、舌で舐めた。いつもより小さな身体を抱き寄せる。
触れる感触が覚えてるのと違う。]
俺は優しかったやろ、エートゥと初めてシた時も。
それに、無理そうなら後ろを使えばいいし?
[髪に触れる手を捉え、近くの空き部屋へ─────]
[───事後。]
エートゥ、お前が裏切り者なら、俺が始末してやるから。
死ぬな。
[汗で額に張り付いた髪を指で払ってやり、耳たぷを軽く噛んでから置き去りにして部屋を出た。
今度こそ、ニューヨークへ。]
[いつまでも現れない0011に業を煮やして単独行動に出る]
まあ、スパイは単独行動が基本だからいいか…。
[そう呟く]
[ニューヨークに着けば、まずはきょぬーのねーちゃんに連絡を取った。]
0020の居場所は探知できているか。0026の時計に発信機とか盗聴器とかついていないのか。
[まだ時計を身につけているかわからないが。]
――私はタシュケントへ向かう機内にいた。
ちょうど海外旅行シーズンとかぶったのが幸いとなり、紛れるには充分な乗客がいた。
今が幸運だからこそ、不幸は目の前で待っている――そんな危機感は私のシャツを汚すことだろう。
そう、その不幸はすぐに訪れた。
油断していたらいつのまにか隣の乗客に肘掛けを奪われてしまったのだ。
私は身を隠すためにエコノミーを選んだことを激しく後悔した。
フライトは、長い――
>>55 0011
ちょっと!遅かったわね…。
[携帯で通話。まるで待ち合わせのカップルが話すかのように]
いつものとこで待ってる。早く来てね。
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