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……うん。
[堅実な道を選んでから、幾年月。
写真は趣味として続けては来たが、本気で目指そうとしていた夢は、あの日以来口にすることなく過ごして来た。
夢の破片が風に乗り碧海の波間に紛れるのを見送って、「良かった」という声に首肯した。]
知ってのとおり、こうして平凡な会社員になっているわけ ですけど。でも、後悔はしてないんです。
「刻」に――省吾さんに、出会えましたから。
個展の誘いを貰った時に、夢が またほんの少し動き出したの。
切欠をくれた省吾さんに一緒に来て欲しかった。
聞いて欲しいって思ったのは、わたし なんです。
[最初に画廊に赴いた日と同じように、省吾は自分の一人語りも厭うことなく話を聞いてくれた。知り合ってから長い年月は経っていなくとも、「刻」も省吾と話す時間も、今の自分にとってはほっと出来る場所なのだと。
小さな声で紡ぐそれは、自分で良かったのかという言葉への返答にもなるだろうか。]
[頬を叩く音に瞬きして、それから省吾の言葉を聞く。
省吾が向き合う事を恐れたものを自分は知らない。
それでも、真摯な感謝の言葉を向けられたなら、話に聞き入る真剣な眼差しがほんの少し和らいだ。心がほわりと温かくなる。]
…そっ、 か。
少しでもお役に立てたのなら、嬉しいな。…嬉しい。
[時計の針が進む音。
自分の手元に時計は無いのに、どこかで何かが動く音。]
…―――、
[差し出された手を見詰め、
それからふわりと微笑んだ。]
はい。
[合図のような右手に、自分の小さな手を重ねて。
遠慮がちに、ごく軽く握った。
何となく顔が上げ難くて、灯台の階段に目を向けてしまったけれど。]
[六花の語る夢。叶わなくても輝いている夢。
目の前しか見てこなかった自分には眩しくて、けれど綺麗だと思った。それを語る六花自身も]
そうか。
勇気出して良かったな。
[怪しい人と思われないか、何度も躊躇ってから声を掛けたあの日。それが六花のためになったのなら、自分も嬉しい。
同時に何やら気恥ずかしくて、視線を合わせられなかったが。
もう一度勇気を奮い起こし、真っ直ぐに見て]
……戻ろうか。
[そろりと重ねられ、握られた手>>112を包み込む。
ありがとう、これからもよろしく。無言に託して。
六花の視線が階段に向いているのに気がつくと、ゆっくり放して身体の向きを変えた]
そうだ、嫌じゃなかったら。
向こうに戻った後も付き合ってもらえるかな。
[戻る途中でもう一度]
夕飯でも食べながらもう少し話したい。
奢るからさ。
[母の下から届いた手紙。そこに何が書かれているのかは分からない。向き合う覚悟は決めたけれど、相談に乗ってくれる相手がいたら心強い。
薄灰色の灯台の階段を降りながら、そんなお願いをしていた*]
― 駅前公園 ―
[ベンチに腰掛けたまま、ワスレモノを探しに散っていく人々を見送った職人の隣で、懐中時計が歌い出す]
『ウサギ、ウサギ、ダレミテハネル?』
[探索に出かけて行った若者達を追いかけるように、光は楽し気に宙を駆け]
『ウシロノショウメン、ダアレ?』
[何かの力の欠片を感じたのか、それとも「時計」に引き寄せられたのか、今度はズイハラの頭上で弾けて消えた]
『オニサンドチラ?ドコニモイナイ』
[けれど今度は懐中時計は元には戻らず、光を纏ったまま駄々捏ねるように歌い続ける]
オヤオヤ、オニごっこのオニを探していたのカイ?
[職人が手を差し伸べると、懐中時計から離れた光はくるくると回転しながら、その手の平に]
『ダッテ、オニサンガ、カギヲモッテイタンダヨ』
[くるくるくるり、光が回る]
ダイジョウブ、ココからいなくなったなラ、オニサンも鍵を見つけたに違いないからネ。
[目を細め、職人がくるくると回転する光を、両の手に包み込むのと同時、ベンチの隣に腰掛けていた妻が、日傘を手に立ち上がり、微笑んで振り向いた]
[それは、生まれてこなかった子供の名……名を考えていた事も、妻には告げず、忘れることにした名だけれど、]
キミは、この子ニ、会えたのかナ?
[過去の時間を映した妻の笑顔に問いかけても、答えは返らない。けれど、優しい微笑みを浮かべたまま消えて行く姿に、職人は小さく頷いた]
サテ、ウサギさん。時計を修理しようかねえ?
[入れ替わるように目の前に現れた兎の姿に、動じる事も無く、声をかける職人の手には、くるくる回転していた光の代わりに、金色の螺子がひとつ、光っている*]
……あ
[省吾からのお願いに、ぱちりと瞬く。]
はい、勿論。
あ、だったらこの間紹介したお店、どうですか。青海亭。
わたしこそ、お世話になってるんだから奢らせて下さい。
[とん、とん、と、上ってきた時よりも少し遅めの音を響かせながら、承諾を返した。
戻ることが出来たなら、話すことは幾らでもある。そんな気がした。*]
[呼ばれた兎はこてり、と首傾げ。
その手に懐中時計はなく、代わりに銀色に光る鍵一つ]
『ワスレモノは見つかった?』
[こてり、と首を傾げた兎が笑う。
けれど、答えを求める風ではなく。
金色の螺子に手を伸ばし、それを受け取ったなら、くるり、とその場で回転し]
『……ねぇ、時間屋さん』
『なんで、この『時計』は想い出で動くと思うー?』
[言葉と共に、ふわり、その場に現れるのは黒い柱時計。
投げた言葉は、問いの形を取ってはいるけれど。
けれどやっぱり、兎は答えを求めない。
鍵を使って硝子の戸を開け、かちり、きりきりと音を立てて螺子を巻く]
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