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[かつん、と。
見覚えのある革靴が、夢見堂の床を鳴らした]
――……やあ。
[笑いもせず、人形のように。
いつのまにか、青年が部屋の入口に立っている。]
今日は、とても怖い顔をしてるのですね。
[どうかしましたか、と。
店主の顔を覗き込むように、かくりと首を傾げ]
――おいで。あいぼう。
[いつかと同じように笑って、
長靴の少女に手を差し伸べた]
行き帰る。
[ぽつ、と呟き。面倒くさそうに青年が続ける]
――こんな話をご存知ですか。
古来、骨にはその力があると思われていたそうです。
骨が残る限り、人は蘇ると。
あるいは、その人の力は、そこに宿ると。
そんな事を、なぜか思ったんだそうです。
――やあ、判りやすくて助かります。
[大体の事情を察知して、鞄に手を入れる]
理解はできませんが、大切だったのでしょうね。
どうしても、取り返したいのでしょう。
そのためだけに生きているのでしょう。
[落ち着いた声音で、訥々と続け、]
[鞄から、ぬるりと手を出して――]
そこで、これを用意しました。
[差し出された火かき棒に物怖じもせず、
タオルに巻かれた何かを取り出す。
隙間から垣間見えるそれは、土で汚れた骨だった]
僕は、荒事が、苦手なのですよ。
[心配そうに見上げる相棒に目をやらず、
視線はゼンジの瞳にあわせたまま、
次は鞄から金槌を出して、鞄を相棒に渡す。]
……。何の骨だと思う?
[言いながら、自分の足元に“骨”を転がす]
ねえ。僕は、これから、どうすると思う?
……おや。お話ができそうで良かった。
[無邪気な顔で、にっこりと]
いや、実際それは犬が齧る牛骨かもしれませんけれど、僕としてはどちらでも良いのです。
貴方が気にせず、“それ”が潰れても尚、僕とやりあうのも。
それを守ろうとして、金槌を持った汚い男に殴られるのも、どちらでもいいのです。
僕はその骨に大切な意味を感じておりませんし、どちらにしても貴方の大切なものはここで死ぬのですから。
[長々と、生き飽きたような声で喋り終わり。
ゆるゆると息を吸って、どろどろと、それを吐く]
――では、良いように。選んでください。
どちらにでも、僕はお応えしましょう。
貴方の選んだ方の信念と。
[そう言って、彼は口を閉じた。
眼前の男が、答えを示すまで。ずっと。]
[店主の言葉に、少し笑った]
――良いですね。
思ったより、真っ直ぐだ。
[羨ましそうな声で、そう言って]
実際、僕は正義の味方になるつもりはないのです。
僕は、僕の手が届くものだけ守れれば良い。
故に、条件があります。
一つ目は、うちの土地に手を出さないこと。
二つ目は、僕の知己に手を出さないこと。
三つ目は、失踪者を家へ返すこと。
、
彼女たちが生きており、納得するのなら僕が口を出す事はありません。
僕の仕事的には、単なる「いたずら」ってことで落ち着くといいな、と思っています。
[どこかで、誰かが言ったような言葉を言って]
それ以外は、僕にとって、貴方と警察の話です。
ですが、この約束が守られなかったときは、
僕は貴方の大切なものを穢すことを、約束します。
――僕は、約束を違えたことがありません。
[ゆめゆめ、お忘れなきよう。
そう付け足して、その口を閉じた]
[こくり、と頷いて]
気にしないよ。
寿命なんて、彼らが自分で決める。
[ゆるゆると、足元の骨を拾いあげ]
僕は世界中を救おうとは思わない。
[何も言わず、何も言えず、
否定もせず、肯定もせず、
少女から差し出されたものを、全て受取る。
どこか寂しそうに目を細めながら、
少女と男を見ている]
[二人を見る。
ずっと遠くを見るようだった]
……。
[いつも通りの無愛想さで、
近場の棚にねるねるねるねを置いた]
いや、こんなものしかないんだが。
食えば。
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