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「逢魔時って知ってるかい?」
[悪路に足を取られつつ進む山道で、記憶の中の声が問いかける。
目指す小さな村への道のりは、初めてでは、ない。
過去に一度だけ通った事が有ると、幽かな記憶を手繰り寄せて確を得る。
ただし、それは親の手に曳かれ、転がり落ちるように降り去った記憶のみだ。]
きっと婆様が知ったらさぞかし怒るだろうね。
[綺麗に畳んだハンカチで額を拭い、呼吸を整える。
洩れた吐息は苦笑交じりに変わった。]
[廃校間際の校舎に、わざわざ取りに来るほどの早急必須なものなど無い。
ただ単に歳に似合わず持ち合わせた好奇心が、押さえられなかっただけだ。]
逢魔時が交わる辻が四つ。だから四辻村って捻ったものだね。
[祖母から枕許で聞いた言伝。
道の両脇に四つ、積み上げた小石が村の目印だという。]
ひい、ふう、みい…一つ減ってるじゃないか。
[油の切れ掛かった自転車の音と、掠れたラジオノイズ。
そして立ち去る村の青年を見送る。
彼の記憶では、この小石の数はどうやら正しいように伺えた。]
[ズイハラとは交番の前で別れ、
ひとり記憶のままに村内へと進む。]
赤い、水。
[そう、木々に囲まれた場所に、赤色の*小川は有る*]
「瞳を貸して?」
[赤い水。
懐かしい声に頷くと、視界は五十年前の音楽室]
かごめ かごめ
[古いピアノをこじ開け、歌うは二つの影*]
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