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[斧の男の要求>>3:16を、
相手――エリッキはどう解釈したろうか。
鳥葬の僧は瀕死ながらまだ生きている。
直ぐには差し出されない要求品を待つように、
男は狂喜する男や学者らのほうへ歩き出す。]
…それは随分、
退屈に倦んでいたと見える。
[長柄の先から血は滴るが、斧は下がる侭。]
欲か。
[魂腐れ落ちるほど、絶えきらぬ渇望。
学者と物狂いに見る根源は明解な其れ。]
… 彼は、何が欲しいのだろうね。
[自堕落に過ごす日々を送る男エリッキ。
助勢の依頼を即諾して懐へ手を入れた――]
[轡の隙間から漏る耳触り悪い声は、
陶酔に上擦り幾らか聞き取れもして。
そう口を挟む折、
物狂いの哄笑が響き渡る折に、
――離れた背後で異変は起こる。]
[無為に日々過ごす男・エリッキが、
突然 総身をがくりとのけぞらせた。
声はない。
震える爪先立ち。
片足が頻りと砂を蹴りつける。
腕は天へ差し上げられ空しく宙を掻く。]
[不意に、若者が吐き出す大量の水。
浜辺にあって香る、濃い潮の匂い。
苦しげに開閉する口元からは続いて、
破れていない内臓がもろもろとせり上がり…
攣れて身悶える彼の腹部は
深海魚の如くに潰れ、平たくなっていく。
壮年の男は斜に振り向き、光景を見つめていて*]
[若者――
エリッキの意識は既に、深海に在る。
魔に堕ちて命落としたヘイノも見るだろう。
淡いましろの珊瑚の胞子が、
こぽり害意の泡とすれ違う。
降り注ぐ。
透ける羽虫のような死骸が、
こぽり悪意の泡に巻かれる。
砕け散る。
紺青のさらに深み、いろのない静寂の世界。]
[誰も助けには来ない。
光はない。音もない。
呼気を留めることも拒まれる。
身体のかたちを留めることも。
圧殺する意志。何も許さない。
―――ここに居てはならない。]
[逃れるすべなく、ひとり。
藻掻く者に気付きもせず顔前を横切る、
眼窩に膜のみを張った目のない深海魚。
波打つ長髪の如き海草に足を引かれて、
海
絶望したウミの魔性に触れて、
膿
人は『邪悪なドラウグ』を幻視する*]
貴方の仮説をうかがいたくもあるな、
学者殿…
裏おもては ないほうだ。
[悪霊と呼ばれることに拒否感は示さない。
解き露わにされる重石の全貌に目を細めると
余計な世話を申し出なくてよかったと呟いた]
面白味のないことで、すまんね。
…
迷惑だ、で斟酌もなかろうが…
[ふと額締めに片手かけ、胸元まで引き下ろす。
目開きの覆面姿も束の間に帽子を戻すと
男は細い茶褐色の 薬瓶 を咥えていた。
軽業見せる仮面男と学者を双方見遣り、
海霧巻く勢いで鋭く斧の天地を入替える。]
ひとり、儘に連れゆくことは
できると言っておこうか?
[小瓶を手の中へ落としながら、
軽くなった帽子の房を揺らし*疾駆した*]
…
何故なぜと、
知に長けたやつばらほど、搾りたがる。
[分け与えるは、何もかも惜しまず隔てなく。
海の指先は言葉を得てさえ、気泡に混ぜるのみ]
美しい行為なものかね。
[配られたものは…*]
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