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…………
次は誰を…―――
[ビャルネのところで温まり始めていた身が冷え切るころ、掠れる声が零す呟き。キィ…―――膝の上に置く手は膝掛けの変わりに服を握っていたが、再び車椅子の音が響き*始めた*]
[キィキィキィキィ…―――明かりを持たず祭壇へ向かう途中、いきとかえりの足跡が交差する中。不吉な紅いカーテンが映し出すのは、踏む事を避けて通られた人のかたち。
獰猛な、残酷な、容赦のない、獣の晩餐が行われた祭壇から遠くないところで、見開いた眼差しは大地に抱かれた娘のかたちを見つめた。眼鏡の奥で、瞳が、揺れる]
…………っ
[供犠の娘が息絶えたのはここではなく、狼が取り囲み、踏み荒らし、食らい尽くした娘はない。眼鏡をはずさずも滲む視界―――冷え切った頬を伝う雫はやけに熱くて、項垂れるように俯いた]
………一言…、くらい…―――
[ぽつ、ぽつ―――温い雨を降らせど、押し殺した震える呟きの続きはない。キィ…―――車椅子は音を立てるも祭壇へは向かわず、住まう小屋へと引き返す跡だけが*残る*]
― 自宅 ―
[やがて崩れかけた小屋へ戻り、幾ばくかの暖と休息を取った頃には、報せを運ぶ紅いアルマウェルの姿もあったか。キィキィキィ…―――すぐに他の者へも報せに向かうであろう彼を、つかの間でもと火の傍へ招き入れた]
…………
[引き返した先の光景を語られ前髪の下で眉を顰めど、報せを運んでくれた使者を詰らぬよう瞬きには長い瞑目を置いた。アルマウェルにも出した茶が、カップを包む両手を温める]
………見てらしたんですか?
僕はこわくて引き返してしまいました。
[ぽつり、告白めく言葉も、彼がもし自ら祭壇へ向かったなら、雪に残る足跡に見るものはあったかも知れない。湯気に曇らぬ今は温かい眼鏡ごしにアルマウェルを見て、眼差しを細めた]
また集まるのでしょうか。
[彼を見送る折に零した言葉は語尾をあげきらず、問いになりきらない。供犠の娘がくれたわずかな時の過ごし方を確かめるともなく、また碌な労いの言葉も見つからぬままにアルマウェルを*見送った*]
― 自宅 ―
恥ずかしながら僕には見習えそうもありません。
………それを頂けませんか?
[交わる視線にアルマウェルの勇気をたたえるでも労うでもなく、靴に雪と共に付着した狼の毛を示し求めたもの。求めた気は手に入ったか否か。強要はされずも集まるのだろう言葉を聴いても、彼を見送って後はまた焔を見ていた]
…………
違うのに似てるのは―――…
………時間は少ないか…
[供犠の娘ひとりで村を囲む狼の腹が膨れるとも思えず、溜息に混じる呟き。キィ…―――支度を済ませるもすぐに外へは向かわず、触れた跡の残る埃をかぶった容器を見る]
…………
[重い溜息は人知れず、火を消し冷え始めた部屋の空気を揺らす。キィキィキィキィ…―――立てつけの悪い扉をくぐり、残る温もりと共に明けぬ夜へ]
― 外 ―
…………
[曇る眼鏡をはずしにつるに歯を立て、礼を籠めて頷きアルマウェルから受け取った狼の毛を、小屋の前で滲む紅いオーロラに透かし見る。暫くはそうしていたが、眼鏡のつるから口を離し、供犠の娘を喰らった獣の一部を舌に乗せ―――呑んだ。
キィキィキィキィ…―――溶けぬ雪と氷に、三度も長老のテントへ向かう二本の足跡は徐々に重なる。道の繋がる先にトナカイは向かう方向が同じらしいのに、車椅子を止めた追いついてくるのを待つ]
………長老に届け物ですか?
[寄り来る姿に荷を見ればトナカイ相手に声をかけ喉元をくすぐるも、中身を改めはしない―――開いたところで文盲では読む事も叶わないが。ただ獣のにおいに紛れて嗅ぎ取れる幽かな香りには覚えがあり、トナカイの腰周りを摩り労いながらヘイノの住まいの方を見た]
…お疲れ様です。
[彼がいつから自分を見ていたのかはわからずも、アルマウェルの姿に気づくと目礼。トントン、とトナカイを促すともなく最後に軽く首を叩き手を放して、かける言葉は彼だけでなくトナカイへも含む響き]
そうみたいです。
…………
[トナカイの喉が鳴るのにちらと視線を向けるも、荷を気にかけるらしきアルマウェルに向き直る。暫く彼を見ているも唆したところで荷をあらためはしないだろうと判断した様子で、悪びれもせずトナカイの荷に手を伸ばし、彼が止めるより早く中を見て差し出した]
………何か書いてあるみたいですね。
僕には読めませんけど。
[自らが文盲なのを添えるも、書かれた内容は問わない。彼が書かれたものを確認したであろう間を置いてから、荷をトナカイへ返した]
………そうですか…
[こんな折に運ばれる荷に薄らと感じるものはあれど、アルマウェルが内容を口にするとは思っていなかった上に、語られた内容もあり反応は少し遅れたか。彼がこの状況で冗談を言っているようにも見えずに、荷を持つトナカイを再び見る]
まじないの結果も貴方の話も嘘かも知れないけど。
…伏せておいた方が良と思います。
貴方の身が危険に晒されるかも知れない。
[疑念より可能性を口にしただけなのは、続けた言葉からもアルマウェルにも伝わるか。送り主の表記がないと聴けど嗅いだ香に関しては触れずに、いつもの癖で眼鏡をはずしつるに歯を立てる]
………報せに走られるなら…
まじないのあった事と潔白の者の存在でしょうか。
[アルマウェルの言葉を受け、語尾を上げずに訥々と零す。語られた内容には礼を籠めて頷き、また思索に沈むらしき沈黙を挟んだ]
…………見つかった時かと思ってました。
なので今は貴方の胸に留めて下さい。
[見つかるのが何とは言及せずも、狼を煽動する者とは知れよう。滲む視界に紅いアルマウェルを捉えて、視線をそらすことなく眼鏡をかけ直す―――輪郭の鮮明になる姿]
…………、…―――僕も呪いが出来ます。
死者の事が少しだけわかります。
もし僕に何かあった折に他の者が名乗ったら…
そう証言して下さると助かります。
[約束を守ってくれたアルマウェルだからこそ、向けるひとつの頼み。彼を信じるとも信じぬとも言わず、去るならば目礼を置き共には動かず、トナカイと揺らぐような紅い後姿を見送った]
………ヘイノ。
[さして個人的に話してはいない者の名を口の中に呟き、また彼の家の方を見る。キィ…―――車椅子は向かう先を変更して、テントへは*向かわず*]
…………
[キィ…―――聴こえるやんでいた筈の狼の遠吠えに、前髪に隠れる眉を顰め車椅子は止まる。声のした方へ顔を向けて、冷えた手が膝掛けのない足を摩る]
また…―――
見つけるまで待ってくれるはずもないか。
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