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ツキハナおねえさま。
あなたに身代わりは務まりませんわ。
だって、わたくし、女将さんを喰べる気はありませんもの。
女将さんと貴方の死は、意味が違うの…
貴方は、貴方ゆえに死ぬの。身代わりだなんて、傲慢よ。
ねえお医者さま?
死にたいと思う人に毒を差し上げるのが、お仕事なのかしら?
わたくし、そんな人を助けるのがお医者さまだと思ってましたわ。
ずいぶんと思い切りのよろしいこと…
[その口調は、糾弾ではない。嘲笑まじりの笑い声。]
…わかりますわ。
女将さんがあやかしさまなら、
その日は、貴方があやかしさまにならずに済みますものね…
ねえ。女将さんはあやかしだったのかしら。
お医者様…貴方、その白衣に賭けてそう断言できるのかしら?
[嘲笑を含んだ笑みは、いつになく鋭い眼光に取って代わり、
ユウキを射抜くように見つめていた。**]
人の世は好きよ。
でも…人間は嫌い。大嫌い。
[失望に打ちひしがれるような囁きが、誰にも届かぬ波長に乗る。]
女将さん、あなたも嫌い。死に急ぐなんて…
わたくし問いかけますわ。
そして…女将さんを死に追いやった方々にこそ問いかけますの…
女将さんはあやかしさまだったのかしら。そう断言できるのかしら。
断言できないなら、女将さんを殺めた貴方の隣人は、何者なの!
…あやかしさまは、あなた方の中に居ますわ。
[挑発するような台詞とは裏腹に、
少女は、表情を隠すように顔を伏せた。**]
小田原評定が始まるのかしらと思ってましたの…
でも評定が始まらないこともあるのね。…困るわ。
殿方って…いざ言うときはてんで使い物になりませんのね。
[失笑気味な囁きをこぼしながら、一人宿屋のなかを歩いている。
まるでウィンドウ・ショッピングでもするように、ぶらり獲物を探しながら。**]
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