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え、……ああ。
どういたしまして。
[己が少年の役に立ったという事実などは知る由もない。礼には惑いつつも応じて、微かに笑み]
鉱山の跡の温泉、か。
[少しの間を置いて返された答えに、小さく頷く。それにしても赤過ぎるのではないかとは思ったが、その感想までを口にする事はなく。少年に凝視されれば、何処となく居心地悪げに少々視線を泳がせつつ]
……神様が?
[赤い水。湯治する神。この村には確かに特有の信仰が存在するらしい。思考しつつ、少年の歓迎には笑って頷き]
ああ、有難う。
そうさせて貰うよ。
[ひらりと軽く手を振って、去る姿を見送った。変わった少年だった、と思う。あるいは――変わった村か]
……温泉。
行ってみたら、何かわかるかもしれないな。
[呟き、男は歩き出す。赤い水の元らしい場に、行けたならいいとは思いながらも、其処を目指してというわけでもなく――男にはその場所はわからなかったし、見るべき場はまだ幾らでもあった――村中を進み]
[男はそのうちに村の一端へ辿り着いた。傾斜した地に形成された小さな集落。其処此処に背の高い木々が生い茂り、薄暗く見通しが悪い。これまで見てきた村の様子とは違い、人気が少ないというよりは、本当に誰もいないようだった。恐らくは過疎が進んで住む者がいなくなったのだろう。古い家屋の間を歩いていき]
……あれは……火の見櫓か。
[高い位置に建てられた塔らしきもの――火の見櫓を遠く視認する。あれも今は使われていないのかもしれない。
それから、無人の家屋を*覗き込み*]
[一つ一つ、家屋を覗いていく。どれも変哲のない廃屋のようだった。集落が無人になってからは大分経つらしかった。家屋の一つに一歩踏み入れ、埃の舞う空気に少しだけ咳き込んで]
……?
これは……?
[辺りを見渡して、ある奇妙な点に気付く。奥の間――居間か寝室辺りだろうか――へと通じる襖が、大量に板を打ち付けて閉ざされていた。厳重に、何かを封じているかのように。中から物音などはせず]
……
[確かめてみると、他にも幾つも、そのように閉ざされた部屋がある廃屋があった。思案しながら、男は集落を歩く]
一体、何なんだ?
防犯や動物除けとも思えないが。……
[それから男は火の見櫓に向かい、梯子を昇ってみて]
[上部まで辿り着くと、其処にある半鐘を一瞥してから、眼下に広がる集落を見渡した。上から見た様に変わったところはなかった。少なくとも、男には見出せなかった]
……ん?
[ふと、足元を見て首を傾げた。何か小さいものが落ちていた。拾い上げてみると、それは一つの弾丸で]
……何故、こんなところに?
[胸中の疑問がいや増す。
男は探索を止め、集落の入口へ向かい*]
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