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[深夜――
人魚がまたあたたかい夢をみるあいだ。
こぽり 泡沫のぼる水音の奥で話し声]
それにしても ケンは――
[こぽり]
かあさんが …したのかい?
[こぽり]
[『…
私がしっかりしてれば、』
想うだけで余分にいのちを「抜く」ことも
凍える人魚を危険から遠ざけておくことも]
できるの かな
[泡が視界を埋め尽くす。
大小さまざまな球体は、身体を撫ぜて一様に水面を目指していった]
ころしちゃったの。
[寝言のような呟きが鼓膜を震わせる]
探さないと。
(ああ)
(もう
『 壊しちゃったの 』でもないんだ)
[ひとときの瞑目。
泡沫の浮かぶ水面に、雨粒。
乱れる波紋の淡相へ、ひとつの光景が映る。
天を刺す樹は、校庭の紅葉。
黒い大樹のしたへ横たわるナオは蒼白い。]
…探さないとね。
ただいまのあいさつを しようにも
永の いとまごいを しようにも
割符が無ければ、
吊り橋を渡って *かえれない*
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