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………悪ィけど、
[暫く、静観していた後。
ぽつりと口を開く。]
俺はこいつに、恩がある。
こいつがナッキかそうでないかなんて分かんねぇが、
手を下すような真似はしたくない。
[更に言えば、トゥーリッキを疑う事もしたくない。
ナッキではないという確信が持てない以上、
強く言えないのが現状ではあるが。]
[布団を、きつく、きつく握る。
もし自分が、あの靄の話をしたならば。
――気が違っていると思われてしまうのだろう。
この場で一番心を許しているミハイルにさえ、
口にすることが出来ない、秘密。]
[自分は間違っているのだろうか。
あの黒が、ナッキの証であるというのか。
自らの瞳が映すそれが、とても重く、感じられた。]
…お前は旅人じゃない男が気になるのか?
[>>214クレストの視線の先を追い、首を傾げて。
その瞳の移す先には、正論を携えた学者>>213。
両耳を隠しているサイドの金糸が咳き込む事で揺れる度、
似た髪色を持つ、身体の弱かった7歳の弟を思い浮かべる。
背を撫でてやろうかと思い立つが、
また良からぬ勘違いを招きそうなので手は出さずに。]
罪のある首だけを落とせと、役所で言われてるんだがな。
[>>218愉しげな学者の声には、肩を竦めさせるも、
呪念を孕んだ腹を煮やしながらも顔に出さない
狸よりは、彼の態度は幾分可愛いものか。
実際に首を落とした事もあるサーベルを撫でる。]
其処の旅人には罪があると、断定できるか?
いやな空気ね。
[ただ一つの異質を葬ろうとする人の心が。
それに加担をするような事を言っている…が
言えた台詞ではないが。]
人を殺すなんてとんでもないわ。
だって、それじゃ幸せになれないじゃない。
[…は、直接手を下すことまでは考えていなかった]
[トゥーリッキに罪があると断定できるのか。そうミハイルに問われれば>>222]
…罪など、有ろうが無かろうが関係ない。
ドロテアの手記は見たか?
残された僕達は確実に殺さねばならない。雪が止むまで、毎日、誰かを。
[最後はゆっくりと、強調するように。これが彼女が遺した言葉なのだから]
それでも罪を理由に殺したいのなら、その理由が分かる者が居ればいいんだがね。
例えば…真相は分からないが、マティアスのように死者の声が聴こえるような者だとか。
[そう言って盲目の男に目をやれば、ドロテアの件が起きる前の彼の様子を思い出す。無視をしていたが、彼は確かに話していた。誰もいない場に向かい、ドロテアと]
あたたかいところに行きたいのなら、
連れて行っても良いのだけど……
………彼女は、いや。
[トゥーリッキの傍らにあるあの入れ物。
…は何があるのか──蛇が入っているのかを知らない。
ただ、よくないものが入っている気がして
あまり近寄りたくはなかった。]
[ミハイルが、村人たちに逃がすだけで良いのかと問いかける。>>217
ニルスがそれならば殺せばいい、と冷酷に言い放った。>>218
彼の相棒に接する態度を見て、悪い人物ではないと思っていたが、人間相手ではそうでもないのかもしれない。
そしてイェンニの主張。>>219
軽くため息をつき、]
あなた方は、どうしても私を殺したいようですね。
ええ…他の場所のことを言ってもむだでしたね。
それは失礼。
確かに雪が降り出したのは私が来た直後だ。
しかし、あの日ここに来たのは私だけではないでしょう?
祭りがあったから人が集まった。
来た直後に雪が降りだした人なんて、大勢いるはずなのに…
なぜ「私が」来たせいで雪が降ったことにされているのか、全く理解できない。
その手記とやらは伝聞でしか聞いたこたぁねえな。
[>>223学者のゆったりとした口ぶりに耳を傾けながら。
実際にそう。目も向けていない。
相棒が思念で教えてくれたので、目を通すまでも無い。
気になるのは、ドロテアの声が聞けるとかいうマティアス。
誰に誘われたかまで打ち明けるようであれば、
能力者の懸念のある盲の男を、即刻『取り込む』べきで。]
…悪霊だのなんだのはよう分からんが、
昔、似たような騒動に遭った事がある。
そん時に、異能を持った連中が存在した。
『占い師』だとか、『霊能者』だとか…
『守護者』だとか。
占い師は、異形かそうでないかを識る者、
霊能者は、魂の色を見分ける者。
守護者は、誰か一人を死から護る者。
この中に居るかどうかまではわからねえけどな
[マティアスを『取り込む』決心が現段階でつかないのは、
守護者が居た場合に阻まれる可能性が高い事。
守護者が自らの力を知覚せず、
只の気狂いの盲とでも思ってくれていれば良いが、
さて、―――どうなのだろう。
ミハイルが難を逃れた騒動の内には守護者は存在したが、
今回、それが居るか否かも経験則では測れぬ事であり。
実際は此処に存在しないという事実も、識れず。]
[ミハイルが自分に何を重ねているのかなど、
司書が知る事はない。
ただ、時折見せる彼の優しさの混じった視線が、
とてもむず痒く感じることはあった。]
[くしゅん。]
[時折、閉じてしまいそうになる瞼を、
必死でこじ開けながら。
話の行く末を見続ける司書の脳裏に過ぎるは、
どろり、どす黒い色。]
[トゥーリッキもまだ諦めていないのか、主張を繰り返す>>225。彼とはユラノフのように衝突する事などなかったが、恩もなければ情もない。その主張に対し、冷たく言い放つ]
所詮、みな泥の塗り合いだ。
理由なんてこじ付けでいい。自分が、友が、殺されなければ誰だっていいんだよ。
多くを語る人間はそんなものだろう。
[これだから嫌いなのだ、人間は。馴れ合って、傷の舐め合いをして、絶壁へと立たされば醜い面を表に出し始める。その逆も然り。それが人間らしさなのだろうと言われたら頷くしかないのだが、たとえそれが事実だろうとニルスはそれを知るのが早過ぎた。彼がこうも皮肉屋で、冷酷な人間となったのはそのせいなのかもしれない]
[そんな中、クレストは自分に手を下したくはないと言う。>>220]
ありがとうございます。クレストさん。
>>222
ミハイルさん、罪のある首だけを落とせ、と言われているなら、
私を殺せば、あなたもまた、罪に問われることになりますよ。
誓って言いましょう。私はナッキなどではない。
…まあ、何を言っても、無駄なのでしょうけどね。
[ニルスの言葉>>230は、冷酷なようで最も真理に近いように思えた。]
同じ存在を殺すのは、
仕方がねぇ事かもしんねえなあ。
俺とあんたはどっちが長生きかね?
元は人間だったが、その頃は随分殺したなあ。
[彼女の独り言も脳へと浸透し、懐かしむような言葉を。]
[手記は見ていないというミハイル。マティアスのような人間はいないものかと聞けば、どうやら彼は過去に似たような経験をしたようで>>226]
その話が真実だというのなら、マティアスはさしずめ霊能者と云われる類いか。
…死んでからでは遅い。役に立たんな。
[そう言って冷たい目でマティアスを一瞥すれば、視線をミハイルに戻し]
まぁいい。その異能者は誰であろうと構わない。
問題はトゥーリッキの処置、だろう?
[話を元に戻す。その異能者が居ないのであればそれで別に構わなかった。はっきりとトゥーリッキを如何するか決めようとしない者たちに溜め息を吐き、腕を組んでミハイルを見つめた]
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