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― 挿話・屋上庭園/崩壊間近の楽園 ―
[憎悪に彩られた瞳で覚悟を口にした翼人は、
空を捨てず自ら軽業師のもとへ歩を寄せた。
煤吐く男が、迎えるに熱い手を差し伸べる。
…彼女がにべもなくそれを無視出来るように]
横になって
うつ伏せ 上体だけでいいから
…そう
[庭園に生える芝は、まだ幾らか青さが残る。
芝刈る庭師もいないからにはふかりと沈む。
奇形に縒れた姿さえ、褥の柔らかさを増し]
…よく
ここまで飛んでこれたもんだ
[漏れる感慨は、風切羽に見える損傷具合を
よく見る鳥の大きさと単純に比較した結果。
彼女の身体の横へ片手をつくと屈みこみ…]
失礼
[短く声をかけぐらつく羽の根元を銜えた。]
[身を固くする翼人から声は上がったろうか。
少し間を置き、熱い手が背をほとほと叩く。]
…ん
[羽根の元を含む口唇から、じわりと沁む熱。
コールタールより濃く、黒い黒い黒い――
ピッチと呼ばれる瀝青(れきせい)に近い物。]
[八年にたったひとしずく滴下する其れとは
いかずとも、限りなく固体に近い"流動体"。
周囲に無事な羽と共に固め支えてしまえば、
痛みは幾らか残れど動作に支障ないはずで]
… ふ ゥ、
[時折の息継ぎは、煤広げるを憚る息遣い。
其の人の背を掠める吐息に苦情が出たなら、
返事の代りにまた銜え――ひと時が過ぎる。]
そう言えばさ
お嬢ちゃん、なまえ
…なんて言うんだっけ
[双方が身を起こした際に、爛れた胸を
押さえる軽業師が空惚けた態で尋ねる。
――全うな応えがあれば、
呼ばず己の名も*告げて*]
― 挿話・屋上庭園/崩壊間近の楽園 了 ―
痛いよう痛いよう
[痛みは消える事なく、むしろ増幅して身体中に広がっていく。
それでも、目の前の鳥に向けて当てずっぼうに腕を振り回し、辺りを歩き回る。]
んあーーー
[床にできた穴。そこに足を踏み込んでしまい、バランスを崩してしまう。
追い討ちをかける様に放たれる矢が足に刺さり、そのまま下層階へ落下した。**]
[…――――月はなく、翳るだけ。
濃い闇の気配、法嫌う者>>2:32の気配。
ぐるり首を廻らせて、ぎゅうと酒瓶を更に抱きしめる。]
[自らの身体の輪郭を内側からなぞり、意識を四方八方へ向ける。チリ…、耳飾りが乾いた音を立てた。]
――デカブツめ。
[腕は無茶苦茶に振り回されていたが、長過ぎるそれが届いていたのだろう、残心の左手に浅く血が滲む。
相手はといえば床の穴で足を踏み外し、矢を受けて下層へ落下していった。
それ以上の追撃はしない。
殺したい相手は別にいるし、己が不利となる建物内部へ自ら入ろうとも思わない]
しかし、あの男――レーメフトと言ったかしら。
腕は確かだったようね……。
[もし翼が満足に動かせなかったなら、投げ飛ばされた床をかわし切れず今以上の重傷を負っていただろう。
感謝の言葉を口に出すことこそなかったが――
彼の去った方を一瞥すると、翼はためかせ崩れゆく庭園を離れる]
―挿話 崩壊前の庭園にて―
[地上人の男に身を委ねる決意。
それを経ても、芝生の上に伏せる姿勢は羞恥を感じさせるもので。
緊張に動作を固くさせつつも、ふかりと沈むそれは天上の寝台を思い出し心地よい]
……――ぁ
[翼の付け根に感じた唇の熱に、震える声が漏れ。
慌てて唇を噛み堪える。
痛みにもそれ以外にも、その部分は敏感であった]
[熱い手が背を叩く。
安堵を得るには高過ぎる温度。
それを意識し、緊張の糸を解かぬよう意識し続ける。
既に最重要器官を相手に差し出している矛盾には、その瞬間には気付いていない]
あ――ちょ……っと……
[ぐらついていた付け根が固まりつつあるのを感じながらも、その合間には違うものが羽根を擽る]
余計な事を……するんじゃないわよ……
[相手の息遣いが煤を広げぬためのそれだと思いもよらず。
身勝手に抗議する声は、羽根を銜える感触に封じられた。
清純なる天人は、その感覚を表す言葉を知らない]
[やがてその一時も終わり、芝生から身を起こした。
黒く固められた片翼。
目にした瞬間は硬直するも、両手を固く握るのみで、相手に感情をぶつけはしない]
あたしは――
あたしの名は、アイノ。
[地上に来てから一度も口にしていないそれを名乗ったは、礼の代わりか。
それに応えるかの如く、相手の名も返り――
少年の足音が聞こえたは、その一瞬後*]
―挿話 了―
[幾許か、また時は流れる。
――崩れた煉瓦階の落ちた先、
意識のないベルンハードが大の字に横たわる傍。
片鎖の切れた馬銜を深く噛む男の姿は、其処に。
俯いた肩へ、はら はら
淡くない紅の合歓の花が降ってくる*]
―現在 四辻上空―
[右翼を半ばまで夜の色に溶け込ませ、宙を翔ける。
鳥目とは言わずとも、闇に紛れた事などない天人には、高空から敵を探すだけの視力がない。
故に、通常より低い位置を、探り探り飛ぶしかない]
――いた……。
[敵は思っていた以上に接近していた。
異形の少年と行動を共にしていたのだから当然か。
怒りと憎悪に歪み掛ける顔を、必死に冷静へと保ちつつ、一本の矢を抜いた]
ここまでしたんだもの――絶対に仕留めてやる。
[右手の甲から指先を伝い、矢へ、そして弓全体へ。
眩い金色は、夜闇の中では余りにも目立ち、振り向かれたなら一瞬でそれと気付かれるだろう。
だが、それと引き換えに一撃は威力を増し、ある程度の指向性すら持つ。
手を離したならそれは、緩い螺旋を描き実験体の心臓を狙う]
[遠くから近づく羽ばたきの音。
ゆらり落とした手を、人差し指と中指が糸で吊られたかのように持ち上げれば、緩い渦巻き、硝子片と金属片、そして砂塵が、ぎちぎちと隙間なく組み合わさる音を立てながら、弓のような槍を形作る。弧を描く部分が片刃となる形状だ。]
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