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親父、これ出目金。
[抱えていた段ボールからビニール袋を取り出すと、すでに水が張ってあった角型のプールに浸す]
普通、金魚屋が金魚すくい屋もやるもんかね。
[父親の隣の地べたに腰かけると、ポイに紙をはめ*はじめた*]
─うさぎ売り─
[最初は怯えていたうさぎたちが、ハナをひくひくとさせ、徐々に干草やペレットを口にしてゆく。
男は白い板を取り出すと、黒マジックの下手な字で『ウサギありマス 大特価1羽2000円!』と書いた]
どうっすかねー。
え? 高い……?
[綿菓子屋に指摘され、ぐるりと辺りを見回し、うさぎの単価が他の店の価格と大きく隔たりがあることにがっかりする]
絶対売れないっすよねぇ……え? ああそりゃいいっすね!
[嬉しそうに、下に小さく『うさちゃんと触れ愛 餌やり1回200円』と書き足した]
エビコねーさん。ニンジン下さい。キャベツの切れ端でもいいから。
[ものすごい嬉しそうな顔で、お好み焼き屋台の主人に野菜を貰い、うさぎの柵の前に戻る]
いらっしゃいいらっしゃーい。
ウサギがいまならたったの1羽2000円! 1万円でおつりがきますよ!
かわいいウサギちゃんに餌もやれます。それならなんと200円!
抱っこもしほうだい!
[迎え火の煙が立ち上り、日が暮れる頃、男はハンテンを着て陽気な顔で呼び込みを*始めた*]
盆踊り……今日だった?
[キクコの声に本から目を上げて。呆れた、と声が返るのを、澄ました顔でやりすごす]
忘れてた。すっかり。
浴衣着るの? ええと、面倒くさいなあ。
[読んでいた本に栞を挟むと、口に出す文句はまんざらでもない響き]
[自宅の縁側にいると、玄関の方からおがらを焚く香り]
迎え火、か。
……。
そういえば。
[物思いにふけりそうになると、キクコの急かす声。苦笑して一息つくと、浴衣に着替え、下駄を鳴らして会場へ向かう、からころ*]
毎度。
[くくと喉の奥で笑って、小銭を受け取るとポイを差し出す]
アンはやんね?あー、手伝いがね。
[手を振って去っていくアンを見送るとムカイと金魚の格闘を面白がって観戦*]
チョコバナナ、焼きイカ、金魚すくい。
[焼き物の香りが香ばしい。並ぶ屋台の間を歩いていると]
ウサギ?
[生まれて初めて見る屋台の看板に、思わず足を止めた]
釣るの?
[思わずひとり漏らすのはそんな*呟き*]
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