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−朝・居室−
[再び目覚めると、すっかり日が高くなっていた]
私としたことが。もうこんな時間じゃないの。
ここに来てから、何故だか良く眠れるわねぇ。
[暢気に呟きながら、食堂へと向かう。そこにはいつもの和やかな雰囲気はなく、酷く寒々しかった。
ルリが一人で座っているのに気付いて]
ルリちゃん?おはよう。
他のみんなはどうしたの?
[――自室。
薄汚れた小瓶から、変色した手紙を取り出した]
素敵です。
僕もそう思った。
[昨日の会話を思い出しながら呟き、紙片を灰皿の上に置く。
横にあったマッチをすって、そっと火をつけた]
あら?ゼンジさん、どちらへ!?
[出かけるゼンジに気付いて声をかけるが、軽く手を上げて行ってしまう。その表情は、軽口とは裏腹にどこか緊迫していた]
ルリちゃん、ゼンジさんどこへ行ったのかしら?
[問うが、少女も行く先は知らない様子だ]
え?外には出るなって?
……そう。
じゃあ、待つことにしましょうか。
[いたずらに不安を煽るまいと、にっこりルリに笑いかけながら**]
[それとは別の、窓辺に置いてある真新しい小瓶。
懐かしげにそれを撫で、静かに告げる]
また、いずれ。
遠い昔に会いましょう。
[儚く笑んで、上着を羽織り、外へ出た。
灰皿の上、古い手紙が燃え尽きた]
[食堂へ向かう途中、入り口でゼンジの後姿を見かけた。
呼び止める暇もない。足を止めてそれを見送る]
どこへ?
[呟いてから、何かに気づいたように、あらぬ方向を見た。
虚空を見つめる猫の視線に似ている]
―車中―
[あの場に漂っていた臭いを思い出し、時折顔をしかめた。
カーラジオは陽気な歌謡曲を流している]
あ……?
[急ブレーキを踏み、身を乗り出してプレートに書かれた文字を読んだ]
ペンションまであと5km
[いつの間にか、出発したはずの地が行き先になっていた。
ここまでは山道とはいえ、一本道だったにも関わらず]
[車の音に気が付いて、玄関へと向かう。何となく一人にしてはいけない気がして、ルリの手を引っ張って]
ゼンジさんかしら?でも。
まださっき出て行ったばかりなのに……。
あら。セイジくん!おはよう!
[外へ出ようとする、見覚えのある後姿に、声をかける]
ゼンジさんも、おかえりなさい。
どこに行ってらしたの?
出て行ったと思ったら、すぐに戻って来たけれど?
[声をかけながら、何だかゼンジの様子がおかしいのに気付く]
おはようございます。ボタンさん。
僕は少し、ああ、どうでしょう。
[連れられたルリを見て、あからさまに逡巡して]
僕はこれからちょっとへぶ!
[ゼンジに右頬を叩かれる]
[ゼンジがセイジをたたくのをみて]
な、何するんですか!?ゼンジさんっ。
大丈夫?セイジくん?
[オロオロと、二人の顔を見比べている]
痛い……。
[殴った右手の平をじっと見つめる]
この道ずっと走ってたのに、ここに着いた。
[現れた人々に事の顛末を説明しようとしたが、出てきたのはそんな言葉だけだった]
えぇー!?そ、そりゃ痛いですよっ。
というより、セイジくんも痛いですけど!?
は?何を言っているの?ゼンジさん。
[『ずっと走ってたのに、ここに着いた』という言葉の意味を図りかねている]
何を言ってるんでしょうね。
ここまでの道、覚えてますか?
曲がり道ではあるけど、ずっと一本なんですよ。
[説明はやはりそれ以上のものにならなくて、苦笑を零した]
ああ、どうしようかな。
電話も繋がらないんです。
そんな確かめ方ー!?
[ゼンジに抗議。
更に言う前に耳打ちされて、誰もいない場所を見た]
……ああ。そう、ですか。
[辛うじてそれだけ呟いて、睫毛を少し震わせた]
えぇ、えぇ。覚えてますよ。
脇道なんてひとつもない、細い道ね。
それが、どうしたんでしょう?
[やはり意味がわからずに、聞き返す。電話が繋がらないという言葉には]
そんな……。
電話、故障しているんでしょうか?
困ったわ。ジロウちゃんたちも帰ってきていないようだし。
そういえば、アンちゃんと、ザクロさんの姿が見えないわね。
まだお部屋で眠っているのかしら?
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