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……と。
[手伝いの駄賃にと差し出された飴細工にいくらか目を見開いて]
ふふ。お駄賃を頂けるような歳ではありませんが、有り難うございます。
[良くできた出目金の形に微笑むと、盆踊り会場を、ぶらり*]
[今年は少し早めに、祭り会場へと足を運んだ。出店の様子を眺めていると、一年前のことを思い出す]
あれは、何だったのかなぁ。
[ちらちら揺らめいていた焔のようなそれは、人混みの中を見え隠れしながら動いていって。そして、一人の少年の肩口にそっと止まると、淡く白く光って消えていった]
ひ……ヒトダマとか、だったりして。
でも。綺麗だった、すごく。
[会場をぐるりと見渡すと、今年もその少年が来ていた]
あの子だ。金魚屋の。
……えーと、誰だっけ。名前、名前。
あれくらいの年の子とは、あまり話さないからなぁ。
女の子なら別だけど。
[浴衣だけではなくて、洋服やら鞄やら、仕立ててくれと頼まれることは多い]
あ。マシロちゃんだ?
[飴細工を手にした少女の姿を見つけ、小さく手を振ってみた]
[今年は誰からも浴衣を頼まれなかった。祭りだというのに、何となく村全体が沈んでいるように見えた。原因は、多分]
アンちゃん……。
……ヒトダマが居るなら、神隠しもあるかもしれないよね。
[呟いて、はっと*口を噤む*]
―山中―
[その頃、去年より一回り大きくなった少年は、裏山にウサギ狩りに来ていた]
中学生にもなって迷うとは。
畜生。
父さんどこだー…………
[視界に見えるは迎えの煙のみ]
─辻─
[あぜ道を跳びはねながら進むと、大きな通りが見えてくる。相変わらず人気はない。
大通りの手前の古びた地蔵に気付くと、足を止めた。地蔵は濃紺のよだれかけを掛けている]
(辻地蔵……)
[白い毛に覆われているので表情はわからない。
立ち止まっていたのはわずかな間。
ぴょこりと跳ねながら方向を換え、来た道を戻っていく]
(煙突だ……)
[村の方に進めば、大きな精錬所の煙突が見える]
(ドウ? 銅。
石炭をたくさん燃やして熱くして精錬してる。
燃やすから煙が出るんだって……マシロマンが言ってた)
[いつの間にか足を止め、煙突から上る煙を見上げていた。
しばらくしてはっと我に返り、地蔵のある背後を気にするそぶりを見せるが、振り返らずに、再び跳ね始める。先ほどよりも速い速度で。
そうして、煙突とは違う方向に進んでいく]
[暫くふらふらと歩いていれば、道の傍らにお地蔵さんが座っている。通りがかりに頭を下げて、再び村の方へ戻る事にした。
視野の片隅に、精錬所の煙突が見える。相変わらずのようにぷかぷかと煙を吐いているのを、少し苦々しげに見て、一言なにやら呟いて。
程なくして、再び広場に戻るだろう。そして再び準備の人ごみに紛れ込んだ]
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