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―― 駐在所 ――
無事に産まれましたか、お子さん。
[ノギ巡査部長、帰着早々、電話を受ける。
受話器の向こう側からはノギ巡査の涙声。]
待望の女の子で?
それはそれは…おめでとうございます。
[ほぎゃあ。ほぎゃあ。
会話の背後、遠く聞こえるいたいけな産声。]
そうですかそうですか。
…いえいえ、ふふふ。
男の子用のおもちゃを ですよ。
本署の連中、7人目も
きっと男の子だろうって噂してましたから。
[「最終日」の業務日誌を書きながらわらう。]
ともあれ、おめでとうございます。
早速ご復帰だなんて、因果な商売ですね。
いえいえ、とんでもない…本官は何にも。
[一頻り交わされる、同姓の警官同士の挨拶。
業務日誌を閉じると、
机上に描かれた可愛い熊の落書きが表れた。
ノギ巡査部長、少ない私物を鞄に*詰める*]
―― 駐在所 ――
ノギ巡査は、次のバスで到着するそうです。
――…では警部殿、本官はこれで失礼を。
[ノギ巡査部長、鞄を手に立ち上がる。
白髪頭の警部と交わすのは、別れの敬礼。]
そちらの件も、
早くケリがつくことを祈っておりますよ。
ふくろう雑学を披露してくれたという、
お弁当屋さんの女性に差し上げてください。
そう
誕生日プレゼント とでも言って。
[不可解げな白髪頭の警部が、
頷きと共に何か口にして…]
…はいはい。
[本日付けで警察を退職する男は、
聴こえずともわらって生真面目な生返事をした。]
では ご機嫌よう。
[そのあとは、バス停でノギ巡査と落ちあって。
彼が乗ってきたバスへと男が乗り込む―――
深く腰掛けたバスの座席はすこし硬く、
男はぐりぐり、と指先で蟀谷を押す。]
… 機会があれば、また。
[薬包を取り出しながら思い出してぽつり。
飲み下したゼンジの薬がよく効いて…
左道使いノギ、終点まで*乗り過ごす*。]
―― 駐在所 ――
[ノギ巡査、いつもの駐在所で新聞を捲る。]
いなくなったって記事は載ったのに
…見つかった って記事は載らないんだな。
[ぱらり 目を通す、地方欄の 裏おもて。
骨に纏わる怪異の真相は公にはならない。
興味本位の憶測を、新聞や雑誌が書き立て
なかったことにノギ巡査はすこし驚いた。]
[何か…やさしくてまるいものが、
この事件を呑み込んだかのよう。]
しかられるべきひとが、
しかるべきひとにしかられるなら。
おまわりさんは それでいいよ。
[尾石荘で見つけたデンゴに、
そしてクルミにかけた台詞を、
「いつもの駐在さん」は口の中で繰り返す。]
[ぱらり ノギ巡査、いつもの新聞を捲る。
何気なく吹く口笛は
旋律も無くぴうぴうと鳴る。
かわいいくまの落書きがされた机の
抽斗の奥には――ノギ巡査部長の業務日誌。
報告書に綴るべき、辻褄合わせの虚構は
白髪頭の警部殿がたぶんなんとか*捻り出す*]
―― 駐在所 ――
お届け有難うございます、グリタさん。
でも空き地は立ち入り禁止ですよ。
[ノギ巡査、大人にも子供にも分け隔てない男。]
ェヘヘ、そうなんですよ。
娘です。
生まれてすぐに此方へ戻ったんですが、
とりあえず娘のファーストキスは
奪ってきたので強く生きていけます。
ごまかされませんよ。
グリタさん、
ちょっとそこに座りましょうか。
[ノギ巡査、拾得物届出の書類を出しながら
説教モードの笑顔でグリタの腕を掴んだ*。]
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